第79話 負傷

朝陽と碧の二人が必死に戦っている中、僕たち後衛の四人はどうすることもなく、見守るしかなかった。こんな時でも役に立てる何かがあればいいんだけど……。


「タク、マルデナッテナイナ、アアシテ、コウスレバイイダロウニ」


ブツブツ言うゴンを見てハッと気が付いた。あっ、そうか僕たちには前衛がもう一人いた!

「ゴン、マスター命令だ、朝陽と碧を助けてあの西洋甲冑を倒してくれ!」


「フンッ、シカタナイ、テヲカシテヤロウ」


そう言うと、ゴンは低空飛行するようにダッシュする。そして西洋甲冑に正面からぶち当たる。強烈なダッシュタックルに、丈夫そうな西洋甲冑もぶっ飛んだ。


その隙を碧と朝陽は逃さない。二人はすぐに西洋甲冑を追撃する。碧は必殺の渾身切り、朝陽は多段ヒットの八手連撃で一気に畳み掛けた。


しかし、西洋甲冑は小さい割に耐久力が高い。二人の攻撃はちゃんとダメージがとおっていたけど、まだまだ倒れるようには見えなかった。


ゴン、碧、朝陽の攻撃で吹き飛ばされて倒れたのを見て、理央が叫ぶ。


「少し離れて!」


それを聞いて、朝陽たちは西洋甲冑から少し離れて間を置いた。その隙に理央の魔法が西洋甲冑に向かって放たれる。理央が使ったのは雷撃の魔法、攻撃範囲の狭い、ライトニングボルトであった。雷撃の一撃は西洋甲冑に命中して、スパークする。ダメージ表示は80万を超えて、必殺の一撃を与えた。


さらに僕たち後衛組はこの隙を逃さなかった。僕と恵麻、そしてヒマリも追撃の攻撃を放つ。恵麻のスリープタクトは西洋甲冑に睡眠耐性があるのか、効果がなかった。しかし、ヒマリのライトニングボウガンと僕の神撃の数珠は効果的で、大きなダメージを生んだ。


だけど、それでも西洋甲冑は倒れない。サイズでスピードタイプで低耐久と思い込んでいたけど、この西洋甲冑、信じられないほどタフだ。下手すると、昨日の黒い巨人よりしぶといかもしれない。


西洋甲冑は全ての攻撃に耐えて起き上がると、とんでもない速さで跳躍して、僕たち後衛の方に飛んできた。いきなりの接近に心臓が止まるほど驚き体が硬直する。


そんな動きの止まった僕を西洋甲冑はターゲットにする。気持ち悪いくらい奇妙で素早い動きで僕の前に来ると、剣を振り上げ僕の頭に向かって振り下ろした。


「健太!」


なんとか咄嗟に避けようとしたが、頭を避けるのがやっとだった。西洋甲冑の剣は右肩にざっくりと斬り埋まる。


「ぐわっ!!」


そのまま右手が切断されるくらいの勢いだったけど、それを駆けつけた碧が防いでくれた。碧は剣で西洋甲冑の剣を弾き返し、さらに盾でタックルして押し返す。そして朝陽とゴンも加わり、西洋甲冑に猛攻で動きを封じた。


「健太、これを!」


その間に、恵麻が即効性のあるポーションを持って近づいた。すぐに深い傷口にポーションをかけてくれる。シュワシュワと酸をかけたような反応を見せるが、見た目とは裏腹に、どんどん痛みが癒えてくる。


「ごめん……油断した……」

「戦闘中にケガするなんて当たり前、気にしないでいいよ」


確かにそうだけど、やっぱり、今のは驚いて硬直してなければ、対応できたかもしれないと考えると、反省しか頭に浮かばなかった。

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