第78話 西洋甲冑
奥に向かった朝陽は、すぐに一体のモンスターを連れて戻ってきた。連れてきたのは三本首の恐竜型モンスターで、逃げる朝陽を必死の形相で追いかけていた。
「お前たち、戦闘準備しろ~」
朝陽は走りながら大声でそう言う。僕たちはそれに従い、理央は魔法の詠唱に入り、碧は剣と盾を構え、ヒマリはライトニングボウガンで狙いを定めた。僕と恵麻も神撃の数珠とスリープタクトを構えていつでも攻撃できる体制を取った。
朝陽は僕たちの前までくると、くるっと周り、三本首の恐竜の方へと向いた。
「今だ、一斉攻撃!」
その声と同時にそれぞれの攻撃が三本首の恐竜に放たれる。見た目的にそれほどレベルの低いモンスターでもないと思うけど、僕たちPTの一斉攻撃で、三本首の恐竜は瞬殺した。
「よし! 楽勝!」
「一匹づつだと楽だね」
「見た目よりレベルが低かったなんてないよな」
「いいえ、さっきのはたぶんゴジュラスだと思う、レベル150オーバーだから全然弱くないよ」
レベル150オーバーを瞬殺とは、僕たちも随分と強くなったなと実感した。
「さて、ほんじゃ、次、連れてくるわ」
朝陽はそう言うと、すぐにひょいひょいとまた奥へと向かった。
「意外に朝陽って、勤勉だよね」
「あいつは真面目なのか不真面目なのかよくわからん」
僕も碧に同意見なんだよね、朝陽って二面性があるのか、場面によって大きくそのキャラクター性が変わるような気がする。
しらばくして、朝陽が二匹目を連れてきた。しかし、朝陽の様子がさっきと大分違った。
「みんな気をつけろ! ちょっとヤバいのに絡まれた!」
そう言う朝陽の後ろにいるのは、西洋甲冑姿の人型のモンスターで、背格好もちょっと背の高い人くらいの大きさだった。朝陽が厄介って言うのはおそらくその敏捷力の高さで、驚異的なスピードの今の朝陽にぴったりとついてきてることからもわかる。
「碧、すまん代わってくれ!」
「任せろ!」
碧は西洋甲冑に向かって剣を振るう。西洋甲冑は盾でそれを防いだ。それから剣の打ち合いが始まった。お互いが剣を振り、それを盾で防ぐ、それを何回か繰り返した。
厄介なのは西洋甲冑が人と変わらないサイズで大きくないのと、その動きか多彩で早いことであった。狙いにくいし、常に碧と位置が入れ替わる状況では、僕たち後衛は掩護するのも難しい。
しかし、もう一人の前衛、朝陽は戦闘参加が可能だった。撃ち合う西洋甲冑と碧の戦闘中に、そっと西洋甲冑の後ろに回り込み、後方からショートソードで襲い掛かった。
朝陽の素早い攻撃を後ろから受けては西洋甲冑も防ぎようがない、ガツンと後頭部に強い一撃を受けて、前のめりに倒れる。その隙を碧も逃さない、救い上げるように下段から剣を振り上げ、西洋甲冑を攻撃した。
だけど、その連携攻撃が、西洋甲冑を本気にさせたようだ。甲冑の隙間に赤い光る眼が現れると、ぼわっと、西洋甲冑の周りに赤いオーラが現れた。すると動きも変わる。荒々しく、より速く、そして力強くなった。
「ブースト? モンスターがスキル使った!」
「やべー!」
「ぐっ!」
それでも碧と朝陽は強化された西洋甲冑を必死で抑え込む。しかし、押されている状況は変わらず、二人のうちどちらかが倒れたら一気に叩き潰されるのは目に見えていた。
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