第77話 起きてから

疲れていたこともあり、昨晩はかなり熟睡した。起きると疲れも取れていて、スッキリしていた。あんな緊張感のあるお風呂でも、癒しの効果は十分にあったのかもしれない。寝起きにそんなことを考えていると、ヒマリが元気よく起こしに来た。


「健太、目玉焼きと卵焼きどっちがいい?」

「えっ!? あっ、卵焼きかな」

「わかった。朝ご飯もうできるから、早くおいでよ」

「うん、ありがとう」


久しぶりのベッドで寝たからか、朝からヒマリも元気がいい。僕はベッドから起き上がり、みんなのいる応接間へと向かった。


「やっぱり、日本人の朝飯はこれだよな」

「あっ、納豆もあったの?」

「意外だよな、屋敷はこんな洋風の内装だけど、結構、日本食も充実してるってよ」


そう言えばゴンのマスターの国籍ってどこなんだろうか、いや、そもそも地球人なのだろうか……考えてみると、東京がこんな風になる前はこのダンジョンだって無かったわけだし、どういう存在なのかもわからない。


今日の朝ご飯は納豆にナスの味噌汁、卵焼きと純和風のラインナップで、どこかほっとするメニューだ。


「この卵焼きは誰が作ったんだ」

碧が何か驚いたようにそう聞く。


「恵麻だよ、美味しいよね」

「18でこのレベルの卵焼きを作れるのは脅威だな……」

「確かにそうだな、うちの母ちゃんのより、確実に美味いもんな」

「料理下手な私が言うのもあれだけど、普段から作ってないとこのレベルは作れないわね」

「前から思ってたけど、恵麻って器用だよね、何かと色々できるし」


みんなから絶賛の嵐で、恵麻は顔を真っ赤にして無言で照れていた。


「よし、飯食ったらすぐにレベル上げに向かうぞ」

「今日、レベル100になるんだよね、早くランクアップしたいな~」

「それは私も楽しみ、どんなジョブに変わるのかしら」

「俺もチャンバラナイトからチャンバラが取れたら嬉しい」

「ナイトはいいよね。前衛の人気ジョブだし、碧がそうなったら余り者PTじゃなくてまっとうに見られるかも」

「俺のbも取ってほしいぞ」

「そもそもbの意味わかんないわよ」

「まあ、いいじゃないか、わからなくても害はない」

「害はなくても気持ち悪りいよ」


兎にも角にも今日でレベル上げを終えたいとみんな思っていた。早くレベル100になって、クラスアップしたいと考えているのはわかるけど、しかし、実は問題はそこにはなくて、クラスアップしたことでダンジョンボスを倒せるかどうかが重要なんだけど、みんなそれを覚えてるのかな……。



食事も終わり、僕らはすぐに準備をして、レベル上げに出発した。昨日と同じルートを使って移動する。ゴンの索敵能力もあり、余計な遭遇を避けて向かったので今日も早く到着した。


「黒い巨人はもういないようね」

「あれがいたら、今日はここでの狩を中止にしようと思ったけど、大丈夫みたいだな」


「この辺りなら沸きポイントもないようだし、いいんじゃない?」

「そうだな」


特殊エリアに入ってすぐ、少し広いスペースで、予定通り朝陽以外のメンバーは待つことになった。ここが戦闘場所となり、朝陽がここまでモンスターを引っ張ってくる。


「準備だけはしておけよ」


そう言うと朝陽は左手を軽く上げて、エリアの奥へとヒョイヒョイ走っていった。


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