第76話 裸の付き合い

屋敷のお風呂場は、洗い場だけで高円寺の僕の部屋くらいあり、かなりゆったりしている。浴槽も一度に五人くらいは入れる広さがあり、足を延ばして入れそうだ。


恵麻たちが入った後なので、浴槽にはすでにお湯が張っており、まだ十分に温かそうだった。だけど熱いお風呂が好みの僕は、体を洗っている間にお湯を足すことにする。


蛇口の近くに温度調整なのか、パネルのようなものがあった。温度調整どうやるんだろうと、表示されていたカラフルなグラフのようなラインを指で触れるた。グラフが指の動きに合わせて伸びたり縮んだりした。おそらくこれで温度調整するんだろうなと最初の設定より少し高くして、お湯を出した。


お湯を出しながら体を洗っていると、お風呂場の外から声をかけられる。


「健太、俺たちも入っていいか~」


声は朝陽だった。お風呂場は広いし、特に問題なかったので、すぐにそう返事した。

「いいよ」


返事をすると、すぐに朝陽と碧が入ってきた。


「おっ、広いじゃんか、これなら大丈夫そうだな」

「えっ? 何が大丈夫なの?」

「おい、理央、平気そうだぞ」

「理央!?」


驚いたことに、理央まで入ってきてしまった。さすがに大きなタオルで体を隠してはいるけど、十分、僕には刺激が強い。しかも僕は無防備な状態で……──


「わっわっわっ~~」


慌てて湯船の中に逃げ込んだ。


「ハハハッ、何慌ててんだよ健太!」

「何って、恥ずかしいからに決まってるだろ! 理央もいるならいるって、最初に言ってよ!」

「そんの最初に言ったら面白くねえじゃん、ひひひっ」


朝陽にはこういう子供っぽいところもあることを学んだ。今後は油断しないようにしないと。


それから、四人でお風呂に入ったのだけど……


「あんたたち、どうしてそんなに離れてるのよ」


広い湯舟、男性陣三人は理央と逆の方にかたまっていた。その不自然さに理央が指摘してきた。


「だって、お前、今、素っ裸だろうに」

「当然でしょ、タオル巻いて湯船に浸かるなんてマナー違反じゃない」


理央は最初こそタオルで全身を隠してくれていたけど、湯船に入る時にタオルを外して素っ裸になった。これは朝陽や碧にとっても計算外だったようで、露骨に狼狽えていた。


「ほら、健太、こっちにきなさいよ」

「えええっ! ちょっと無理だよ」


理央は完全に僕をからかってるようだ。ケラケラ一人で嬉しそうに笑っている。お酒も入ってるし、ちょっと酔っぱらっているから、変になってるのかな。


「それにしても、今日は危なかったな、一歩間違ってたら、全滅もありえたぞ」

碧が理央の存在を忘れる為か話を大きく変える。


「だな、明日は慎重に戦うようにしないとダメだな」

「それなんだけど、あまりあのエリアには入らないで、誰かがモンスターを入口まで引っ張ってくるとかどうかな? 敵の不意な増援の可能性も低くなるし、比較的安全に狩ができそうな感じがしない?」

「おっ、健太、それだ! みんな入り口で待機して、俺が狩るモンスターを引っ張ってくればいいわけだな」

「なるほど、それは名案だな」


「ちょっと、三人だけ楽しそうに話しないで私も話に入れてよ」


そう言って理央がスススッと近づいてきた。


「うわっ、馬鹿! 理央、近づくな! 見えるだろうが!」

「見たくなきゃ、見なければいいでしょ」

「見たくなくても見えちゃうんだよ!」

「知らないわよそんなの」


理央の主張はともかく、僕たち三人は理央が近づくことによって大きく動揺することは共通していた。碧は迷走するように目をつむり、朝陽は手で視界を遮り、僕は明後日の方向を向いて回避した。

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