第75話 お風呂

プチ宴会はしばらく続いたが、盛り上がってるのはお酒を飲んでいる大人組ばっかりだった。そこで僕たちお子様たちは、先にお風呂を頂くことになった。


「先にヒマリと恵麻で入るから、健太は次ね」

「えっ、僕も早く入りたいから、じゃんけんで決めようよ」

「レディーファーストって言葉しらないの、そんなんじゃ、もてないよ健太」

「……わかったよ、じゃあ、待ってるから早くしてくれよな」


幸いなことに、恵麻とヒマリは一緒に入ってくれるようなのでそんなに待たなくていいかもしれないのが救いではある。風呂が十分広いのに感謝しながら、大人たちの宴会に戻った。


「ヒマリと恵麻はどうしたの?」

「お風呂に入ってるよ」

その返答に対して、理央が凄いことを言う。


「なんだ、三人で入ればよかったのに」

「えっ! いや、そんなことできるわけないよ。恵麻とヒマリがいいって言うわけないし」

「時間効率とかなんとか言い訳すればいいのよ。PTメンバーなんて家族みたいなもんでしょ、裸の付き合いも大事じゃない」


いや、さすがにそんなの恥ずかしすぎて僕が無理だ。


「さすが普段から裸みたいな格好してるだけあって、言うことが違うな」

朝陽が感心したようにそういう。

「露出だって立派なファッションでしょ? 別に隠すようなもんじゃないしね」


「普通は隠すようなもんだ。 初心な健太をからかうなよ」

理央のあまりな奔放な考えに、真面目な碧がちょっと怒ったように注意した。


「あら、からかってなんかないわよ。全部本音なんですけど」

「本音だったらなお悪い!」

「どこが悪いのよ、いいことじゃない」

「い・い・ことではない! 理央はちょっと恥じらいを持った方がいい」

「恥じらってるわよ、ちゃんと隠す素振りくらいはしてあげるし、男の人ってチラッと見えるくらいがいいんでしょ?」

「そういうことじゃないだろ!」


真面目と奔放のなんとも不毛な争いがしばらく続く、こっちが恥ずかしくなり聞くに堪えなくなってきた。それは朝陽も同じだったようで、うんざりしたように止める。


「たくっ、どうでもいいだろ、そんなこと。見せたきゃせりゃいいし、ほっとけ」

「俺はPTの仲間としてだな」

「その仲間がしたいようにさせてやればいいって話だ」


今度は朝陽と碧の言い合いに発展しそうになったけど、恵麻とヒマリが風呂から上がってきたのをきっかけに中断した。

「健太、早く上がってあげたよ」

「ありがとう、どうだったお風呂は」

「もう最高だよ、恵麻と洗いっこしたんだよ」


洗いっこという言葉になんともいえない感情はこみあげたけど、首を横に振ってこみあげた感情を振り払った。


「それじゃ、僕も頂いてくるね」

「あっ、健太、石鹸とかシャンプー持ってないよね? これ貸してあげる」

そう言って恵麻がシャンプーとかボディーソープなどのトラベルセットを渡してくれた。渡してくれる時、近づいた恵麻から何とも言えない風呂上がりの良い香りがしてきて、ちょっとドキッとしてしまった。


「うわっ、ほんとうに助かるよ! ありがとう恵麻」


女の子はこういう準備がいいなと感心する。僕は久しぶりの入浴に心躍りながらお風呂場へと向かった。

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