第72話 猛戦

前衛の朝陽と碧に群がるモンスターたちに対して、恵麻のスリープタクトが死の眠りを与える。さらに僕も負けじと神撃の数珠を使用した。


「滅せよ!」


神撃の数珠を開放した瞬間、朝陽を脇から攻撃しようとした大きなトカゲのモンスターの頭部が吹き飛んだ。ダメージ表示は八万を表示する。


「すげっ、それってあの無制限の攻撃アイテムか!?」

「うん、思ったより威力あるね……」

「クールタイムはどうなの?」

「それが一秒くらいなんだ」

「よし、十分な火力要員だ。健太、どんどん攻撃しろ」

「うん、わかった」


全員の火力が上がったこともあり、次々に襲い掛かってくるモンスターを倒していけた。このまま楽にレベル上げれるなと、みんな思い出してきた頃合い。そいつは現れた。


「ちょっと、私の魔法が効かない!」

「わっわっ、ヒマリのライトニングボウガンも弾かれてるよ!」


黒い巨人、赤いオーラを纏った、10mほどはある巨大な二足歩行のモンスターが迫ってくる。黒い巨人は、手に持った棍棒のような武器を振り回しながら、周りのモンスターもなぎ倒して、こちらに向かってきた。


「任せろ!」


碧が黒い巨人の前に出る。そして盾を構えてその突進を止めた。だけど、あまりの威力に、碧は吹き飛ばされる。


「ぐあっ!」

「碧!」


倒れた碧を守るために、追撃しようとした黒い巨人に向かって僕たちは一斉に攻撃する。


「眠れ!」

「滅せよ!」

「ライトニングボウガン!」

「アイシクルノヴァ!」

「八手連撃!」


だが、そんな一斉攻撃を受けても、黒い巨人は怯むことなく動きを止めない。そのまま振り上げた棍棒を叩き下ろした。碧は辛うじて盾でその攻撃を受け止めた。だけど、かなりの衝撃だったようで、苦痛の表情を浮かべた。


黒い巨人はすぐに碧に向けて二撃目を放つために棍棒を振り上げる。ターゲットになっている碧はまだ苦痛の表情で倒れていた。それを見て朝陽が動く。


「ちっ! デカいの! お前の獲物はこっちだ!」 


高く跳躍して、わざと注意を引くために顔に向かって攻撃を繰り出した。みんなの一斉攻撃を受けても平気な顔をしていたほどの鉄壁の防御力を誇る黒い巨人には、それは微々たるダメージだったけど、注意を引くには十分だった。黒い巨人のターゲットは朝陽に移る。


「うぉっ、この!」


大きさの割には、黒い巨人の攻撃は素早かった。朝陽はなんとか避けるが、いつ攻撃が命中してもおかしくないくらいギリギリで、あぶなかしかった。


朝陽が黒い巨人の注意を引いている隙に、碧が立ち上がる。そして側面から黒い巨人の足を斬りつけた。斬り口から炎が噴き出す。どうやら延焼の効果は有効のようで、延焼のスリップダメージが表示されていく。


「よし、ダメージは通るぞ! ただ耐久力が異常に高いだけみたいだ!」

黒い巨人はダメージを無効にしているわけでも、激減しているわけでもない。ただ単純に耐久力が異常に高く、ちょっとやそっとのダメージは無視できるほどの強大なHPを保有できるだけだった。しかし、それだけに厄介ではあった。この敵を倒すには高いダメージを叩き出す必要がある。


「健太! ケンタワンドだ!」

「任せて! 鉄槌を!」


上から叩きつけるような衝撃が、黒い巨人を襲う。ダメージは300万を超え、ボス級も瞬殺できるほどのダメージだったけど、黒い巨人にはまだ足りなかった。平気な感じで暴れまくり始めた。

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