第71話 モンスターの巣

屋敷のある階層から一つ下の階層、ダンジョンボスが待ち構えるその階層は、まさにラストステージといった趣で、どんよりと地獄の迷宮といった雰囲気であった。


「怖い場所ね、ちょっと一人じゃ歩きたくないかも」

「雰囲気があっていいじゃねえか、ラストて感じで盛り上がるよな」

「いや、怖いだけで盛り上がらないよ、できれば明るい雰囲気の方がやりやすいかな」

「ピクニックじゃねえんだから、そんな陽気な感じでボスと戦えるかよ」


そんなラストステージの感想を言っている間に、目的のエリアへと到着した。そこは重々しい雰囲気のこの階層の中でも、特に異様な雰囲気を醸し出していた。


「ココカラサキハ、ランダムスポーンエリアダ、タマニ、スゲーツエーノモデルカラ、キヲツケロ」

「ランダムスポーン! 嘘でしょ、何がいるかわからないってこと?」

「ソウダ、サイアク、ダンジョンボスニヒッテキスルノモ、デルカラ、ソノトキハニゲロ」


ゴンの話を聞いてるだけで、とんでもないエリアだってことがよくわかる。ダンジョンボス級のがいるかもしれないような危険なエリアでレベルを上げるなら、もうボスに挑戦する方がましなんじゃないだろうか……。


「おい、ただの危ねえだけのエリアじゃねえだろうな」

「ココハトクベツエリアダ、ツウジョウノ、ジュウバイノ、ケイケンチガエラレル」

「十倍! ほんとかよそれ!」

「シカシ、ソノカワリ、アイテムドロップナドハシナイカラ、モウケハナイゾ」

「なっ! なるほどな、まあそれはしゃーねか」


経験値は十倍だけど、アイテムドロップは無し、レベル上げに特化したエリアのようだ。僕らにとってはドロップも大事な強化要素なので、ちょっとジレンマはあるかもしれない。


「よし、行くぞ! しかし、安全第一だから、危ねえ時は逃げるからな」


あまり奥にはいかない、一度に多くの敵を相手にしないなど、決めごとをして、僕らはレベル上げ特化ゾーンへと足を踏み入れた。


入ってすぐに、モンスターがワラワラと現れる。現れたモンスターは多種多彩で、強そうなものもいれば、低レベルそうなモンスターも混じっていた。僕たちはそんな多数のモンスターに囲まれないように、入口側に陣取り、まずは理央の魔法とヒマリのライトニングボウガンで先制攻撃をかけた。


理央の魔法は相変わらず強力だったけど、それよりさらに凄かったのが、指輪で強化されたヒマリのライトニングボウガンの威力だった。ただでさえ連続ダメージや、ショック効果の連鎖が起こるライトニングボウガンの攻撃に、攻撃やショックの度に入る火属性ダメージが無数に表示される。一発一発は数百のダメージなんだけど、それがもの凄い勢いで連続で入り、モンスターにダメージを蓄積させていく。


「よし、碧、敵を受け止めるぞ!」

「おう!」


理央とヒマリの攻撃に耐えた強力なモンスターが迫ってくる。それをいつもの如く、朝陽と碧が食い止めに前に出た。


この前までなら敵の猛攻を受け止めるだけだった碧と朝陽だったけど、今は強力な攻撃方法を持っていた。碧の強化された渾身切りが、迫る人型の鬼のようなモンスターを一刀両断にする。さらに朝陽の新スキル、八手連撃のダメージが、素早く近づいてくる巨大な蟻のモンスターを切り刻み葬り去った。


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