第69話 会議

朝ご飯はおにぎりと、もやしの味噌汁となった。おにぎりの具には、キノコの残りを佃煮にした物を入れる。


すべて出来上がった頃合いに、朝陽とヒマリもようやく起きてきた。

「おっ、おにぎりと味噌汁か、美味そうだな」


理央が、呑気な朝陽たちに嫌味の口調でこう言う。


「匂いにつられて起きてきたの、朝寝坊さん」

「違げえよ、十分な睡眠による自然な起床だ」

「ヒマリは美味しそうな匂いで起きたよ!」


決して自慢になるようなことじゃないけど、なぜかヒマリはどこか誇らしげだ。


「それじゃ、食事にしましょう。食べ終わったらダンジョンボス攻略の話をしましょう」

「そうだな、そうしよう」


おにぎりは理央の作ったキノコの佃煮の味の良さもあり、凄く美味しかった。味噌汁も具がもやしだけではあったけど、ちゃんと美味しく頂けた。


「美味しい! ヒマリ、こんな美味しいおにぎり初めて食べたよ」

「確かにうめえな、何個でも食えそうだ」

「一人、二つだからね」

「えっ、ひとつふたつ……それだどあまんねえか?」

「残りはランチで残しておくの」

「なるほどな、それはそれでありだな」


おにぎりを堪能した後、すぐにお茶しながら会議が始まった。議題はダンジョンボスの攻略、すぐに僕が意見する。


「ゴンが百体でも倒せないような強敵だから、今の僕たちには勝てないかもしれないよね」

「確かにそうね、このままじゃ厳しいかも」

「うんなこたねえだろ、そのポンコツが大袈裟に言ってるだけじゃねえのか? 今の俺たちは十分強い! 勝てると思うけどな」

「その考えは危険だ。上には上がいる。常に冷静に相手の戦力を分析して、最善を尽くさないと足元救われるぞ」

「そんなこと言うけどよ、最善を尽くすってどうするんだ、レベルでもあげるのか? 俺たちには悠長にレベル上げするような食料もないんだぞ」

「だけどそれでも全滅なんてしたら、もともこもないじゃない」


「あのさ、アレを使えるまでレベルを上げて見ない?」

「あっ、神託の宝玉!」

「そう、レベル100になればあれが使えるよね。そうすれば格段に強くなると思うんだけど」

「そうだけどよ、100は遠くねえか? 繰り返すが、何日もかけてレベル上げできるほどの食料はないんだぞ」


朝陽の言うように、今の僕らはまだレベル70台、100はまだまだ先だし、近々の戦闘の感じで言うとかなりレベルが上がりにくくなっているので、気の遠くなるほど遠く感じる。


「確かに100は遠いけど、俺はいい案のようには思う」

「私も安全に生きたいと思うわね」

「ヒマリもレベル上げたい!」

「まだ強くなる要素があるなら、僕も最善を尽くすのがいいと思う」


「たくっ、わかった。安全策なのは間違いないし、その方向でいくならそれでいいだろ。だったら食料問題を解決しないとな」

「そうだね、どうすればいいんだろ」


「ヒトノタベルモノダッタラ、マスターノヤシキニアルゾ」


「あっ、確かにあそこにならあるかもしれない」

「屋敷ってどこだよ、そこ」

「この階層にある隠しエリアだよ、ゴンと出会った場所なんだ」

「ほほう、じゃあ、とりあえずそこに行ってみようぜ」


マスターは人だったみたいだし、食料の備蓄があるのは不思議じゃない。だけど一つ気がかりなのは、随分時間が経過している可能性があるので、食料が傷んでないか心配ではあった。

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