第62話 階層ボス
かなりウロウロしていたけど、ようやくゴンがそれらしい気配を捉えた。
「ウゴイテイルシ、タブン、コノハンノウダ」
「ポンコツ、今度は大丈夫なんだろうな」
「シタヒッコヌクゾ、コノヤロウ」
また朝陽とゴンの言い合いが始まりそうになったので、僕が話をそらす。
「そっ、それでその反応はどっちなんだゴン」
「アッチダ、ソンナニトオクナイ」
「よし、急いで行ってみよう」
僕たちは急ぎ足でそのボスの反応に向かった。
「キヲツケロ、ソノサキダ」
ゴンの注意に、僕たちは戦闘態勢のままゆっくりと近づいた。そして、ボスがいるだろう通路を、ひょいとのぞき込んだ。しかし、それらしきものは見当たらない。
「また、ガセかよ、ポンコツ！」
「イヤ、ケハイハスル」
それを聞いて、もう一度よく見る。すると小さなスライムのようなモンスターがぽつりといるのを見つけた。
「ゴン、あれの反応じゃないのかい」
「うんだよ、スライムかよ、ボスとスライムを間違うなんてやっぱ、ポンコツだな」
「ヌヌヌ……」
「ちょっと待って、あのスライムちょっと変よ」
理央がスライムの様子を見ていて、そう指摘する。その言葉に、全員、あらためてスライムに注視始めた。
「そういや、妙な気配があるな」
「アイツマリョクリョウモ、ソウトウアル、フツウジャナイ」
「ゴン、君は相手の魔力量もわかるのかい！？」
「エッヘン、ワカルトモ」
そうゴンが言った瞬間、一瞬、グオンと空気が動いたような気がした。そして、この階層に来た時、あの時の嫌な雰囲気の空気感に一瞬で周りが変化する。
「死臭だ、みんな気をつけろ、来るぞ」
周りの地面から這い出るようにゾンビやスケルトンが登場する。
朝陽と碧はすぐに前に出てアンデッドたちと戦闘する。ヒマリと理央も後方から援護しながらアンデッドに攻撃をし始めた。
僕も攻撃に加わりたいけど、ケンタワンドを使うには敵が多すぎるし、攻撃アイテムも残り少ない。なんとかみんなに貢献できないか考えるけど、消費アイテムやクールタイムの長いスキルでは、多数相手では無力だということを再認識するだけだった。
「マスターメイレイスレバ、タタカッテヤルゾ」
あっ、そうか、今の僕にはゴンがいった。ちょっとこれで貢献ってのもずるい感じがするけど、今できることくをやるしかなかった。
「ゴン、すまないけど、あのアンデッドたちを倒してくれ！」
「マカセロ」
ゴンはそう言うと凄いスピードでダッシュしてアンデッドが大量にいる場所へとジャンプして飛び込む。そして拳でアンデッドを駆逐し始めた。
戦闘モードになったゴンは相当に強かった。一撃でゾンビを粉砕し、スケルトンを蹴りで粉々に砕く。小さく、デフォルメ体系とは思えないほどのリアルバウトに、驚きと素直に感心した。
「やるじゃねえか、ポンコツ！」
「ポンコツイウナ、ドサクサニマギレテ、シバクゾ」
「バカ、褒めてんだよ、ポンコツ」
「……ソウナノカ？」
みんなの働きで、不死軍団を圧倒していた。しかし、無限に沸いてくるアンデッドたちとの戦闘に終わりが見えない。
「このままじゃ、きりがねえな」
「あのスライムを倒さないとダメじゃないか」
「確かにそうだな。しかし、これだけ次々にアンデッドが湧いてくるんじゃ、あのスライムに近づくのも難しいぞ」
「健太のケンタワンドに託しましょう」
「そうか、一人くらいならスライムの近くへ突破させられるか」
「えっ僕！？」
まさかの一人突破作戦を提案される。貢献したいとは思っているけど、力量以上の役割に困惑してしまった。
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