第54話 一人ぼっち
「えっ!? ヒマリ! 恵麻、理央、どこにいるんだ?」
部屋には僕以外誰もいなかった。一人ぼっちという現実にどんどん不安になってくる。
しかし、不安で何もできないのでは状況はよくならない。不安な気持ちを抑えながら、今いる部屋を調べることにした。
部屋の広さは八畳ほど、所狭しとアンティークな西洋家具が置かれ、かなり狭く感じる。机と椅子が置かれていて書斎として使っているじゃないかと想像でき、棚には専門書なのか古い本が並べられていた。
適当に本の一つをとって内容を見る。だけど、よくわからない文字で書かれていてまったく内容はわからなかった。
「オイ、オマエ、ナニシテル」
不意に妙に感情の無い声で話しかけられた。声の方を見ると、ドアが開かれ、そこには『ほうき』と『ちりとり』を持っている、何か無機質な人形のような変なのが立ってた。声がした時はとっさにケンタワンドを構えてしまったけど、害がなさそうなので構えをすぐに解いた。
「あの、僕はいつの間にかここに飛ばされていて」
「トバサレタ、ソウカ、オマエハ、オキャクサンカ、ダッタラ、コッチコイ、モテナシテヤル」
状況はわからないし、ここがどこかもわからないけど、とにかく人形についていった。案内されたのはさっきの部屋を出て、廊下を少し進んだ先にあった少し大きな部屋だった。おそらく見た目から応接室だと思われる。
「ココニイロ、テイチョウニ、モテナシテヤル」
「あっ、ありがとう」
人形はトコトコと独特の歩き方でどこかへ向かった。
それにしても、あの人形はなんだろうか、そしてここはどこだろうか、みんなの事も心配だし、早く合流しないと……とりあえず、モテナシとやらを受けたら、この階層の情報を聞いてなんとかみんなを探そう。
少しすると、人形は戻ってきた。そして手に持っていた湯呑を乱暴に僕の前に置いた。
「ホラ、ウマイオチャダ、アリガタクノメ」
「ありがとう……」
飲んで大丈夫だろうかと少し心配したけど、この人形の機嫌を損ねるのも得策ではないと思ったので、恐る恐る口にする。しかし、不安に対して、お茶は本当に美味しかった。
「ウマイダロ、ホメテモイイゾ」
「本当に美味しいよ、君、お茶を入れるのが上手いんだね」
「フフフッ、ダロ、マスターニ、キタエラレタカラナ」
「マスター? 君には主人がいるのかい?」
「アタリマエダ、オレハゴーレムダゾ、マスター二、ツクラレタンダ」
この人形君より、そのマスターと話た方がいいな、そう思って僕はマスターがどこにいるか聞いた。
「マスターハ、イマネテイル」
「そっか、起きたら会わせてくれないかな」
「イイゾ、オキャクサマダカラナ、マスターモ、ヨロコブ」
「それで、どれくらいで起きるのかな、できれば早い方がいいんだけど」
「ソンナノシラネエ、イソギナラ、オコシテキテヤロウカ」
「あっ、そんなことして怒られないかい?」
「ダイジョウブ、マスターハ、オレニ、ヤサシインダ」
寝ている人間を起こすは気が引けたけど、いつまでも待っているわけにもいかないから、ここは人形君の提案に甘えることにした。
「ツイテコイ、マスターハ、コッチダ」
言われるままに付いていくと、一つの部屋の前とやってきた。ドアを開けると、そこは寝室のようで、ベッドには誰かが寝ているようだった。
「オイ、マスター、オキロ、イツマデネテルンダ、オキャクサマガキテイルゾ」
ゴーレムがそう起こすが、ベッドの上は微動だにしない。どうしたんだろうと、少し部屋に入って、のぞき込んだ。その時、全てを理解した。そこに寝ているのは干からびた死体だった。
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