第53話 また迷宮
下の階層への階段はかなり長かった。ループして永遠に下り続けるんじゃないかと心配になった頃合いに、ようやく終着する。
「24階層は普通の迷宮みたいね」
「上の階層が特別だったんだろうよ、ありゃバグか何かかもしれん」
この階層は雰囲気こそ変であったけど、見た目は普通の迷宮だった。青白い壁に、全体がうっすらと明るく、人工的に作られた回廊が伸びていた。
「しかし、見た目普通だが、なんだか妙な雰囲気だな」
「そうね、暑苦しいといか、なんかプレッシャー感じない?」
「空気も薄く感じるし、ちょっと長くいたくない場所だな」
そこは重い空気だけではなかった。すぐに目に見える危険が現れる。地面から、もこもこと何かが這い出てくるように現れた。
「スケルトンとゾンビだな」
「アンデッド?」
「恵麻、こいつら強いのか?」
「アンデッドの強さのほとんどは生前の人間のレベルに依存しているんです。だから個体差が大きいのが特徴ですけど、ほとんどの場合はレベル30未満の低級モンスターです」
「なるほどな、だったらこんなに数はいるけど、怖くわねえな」
「油断するなよ、個体差があるってことは強い可能性もあるぞ」
碧の言うとおりだった。ゾンビは大したことなかったのだけど、剣を持つスケルトンは普通に強かった。レベルアップなどで強くなった碧も、数体に囲まれると防戦一方になる。
「アンデッドには火が有効じゃなかったけ?」
「よし、碧、理央、お前らの出番だ!」
「簡単に言うな、こいつら剣術が普通じゃない」
「それじゃ、理央は!」
「どうも火の魔法は得意じゃないみたいなのよね、詠唱も長くなるし、狙いにくい」
聖なる魔法とか神聖系の魔法も有効だったと思うけど、うちにはプリーストやビショップなどのジョブはいない。
「ヒマリに任せて!」
そう言いヒマリがライトニングボウガンで攻撃する。やはりライトニングボウガンは多数への殲滅力は高く、雷撃や連鎖するチェインライトニングのダメージで多くのゾンビやスケルトンを倒していった。
しかし、アンデッドの恐ろしさはここからだった。ライトニングボウガンで倒したゾンビやスケルトンは、すぐに復活して蘇ってきたのだ。さらに朝陽が蘇ってくるスケルトンとゾンビを攻撃して倒すが、またすぐに復活する。
「嘘だろ……」
「私のスリープタクトも効果無いし、もしかしたら、火で燃やすか神聖魔法で倒さないとダメなのかも」
「なんだと!」
「メルティライナーではそんなことなかったんだけどな……」
こうなると、アンデッドへの有効打となるのは碧の炎の剣と理央の不得意な炎魔法だけとなるが、なにしろ数が多い。朝陽と理央、碧の連携でなんとか倒せはするが、新たに湧き出てくることもあって、収拾がつかなくなっていた。
「ダメだこりゃ」
「とにかく、一度逃げて体制を整えよう」
「だな、碧と俺で殿をするから、みんなあっちに逃げてくれ」
アンデッドの沸きの少ない方向は一方しかなかった。そちらに向かって逃亡する。
「はぁはぁ……ふぅ、でも逃げるって言っても、どこまで行けばいいのかな」
「ふぅ── とにかく安全そうなとこまで行こう」
「あそこに扉あるよ、あの中なら安全じゃない」
ヒマリの言うように通路の先の右側に扉が見える。中に入って扉を閉めれば安全を確保できる可能性はあった。その扉に到達したヒマリが躊躇なく開けようとした。
「いや、ちょっと待って、ヒマリ、まだ開けちゃダメだ!」
ヒマリが扉を開けた瞬間、目の前の空間が歪んだ。そして、一瞬、視界が完全に遮断される。そして視界が回復して次に見えたのは誰もいない見知らぬ部屋の室内だった。
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