第50話 新たな展開

僕は味噌汁と焼き魚の良い匂いで目が覚めた。起き上がってキョロキョロ周りを見渡し、みんないることを確認した。


「あんたたち、いつまで寝てんだい。さっさっと起きて、ちゃちゃっと食べな」


お婆さんの声が響く。前回と違って、お婆さんは僕らの存在自体には驚いてないようで、さっさと受け入れているようだった。やっぱり、お婆さんには前のクエストの記憶があるんだと、なんとなくこの時、思ってしまう。


みんなもお婆さんの声に起きて、当たり前のように朝食への席に座る。


「いただきます!」


なんとも二度目だからか、みんな遠慮することもなく朝食を頂く。いや、そうじゃないな、美味しいのを知っているから我慢できないだけかもしれない。一口食べて、そう考えを改めた。


「やっぱり美味しいな」

「ちょっと、朝陽、私の漬物取らないでよ」

「いいじゃねえか、食ってねえだろ」

「後でご飯と一緒に食べるから残してるだけでしょ」


そんな感じで食事を終えてすぐ、前のクエストと同じようなタイミングで、集落の人間が急を知らせて入ってくる。


「セツばあさん! 大変だ! おめえんとこの孫が洞窟の魔物につれてかれちまったぞ!」


その声に、お婆さんは慌てることなく、僕たちを見てこう言った。


「もういかんでもええぞ、どうせたすかりゃせん」


諦めたようにそう言うお婆さんの表情は悲しそうだった。もう数えきれないほどの悲しい結果を見てきて、そう思うのは仕方ないことだろう。だけど、今回の僕たちには勝算がある。僕はにっこりと笑ってこう返事を返した。


「いや、僕たちに任せてください」

「婆さん、一宿一飯の恩義、返させてもらうわ」

「正確には二泊二食の恩義でしょ、まあ、まとめて返します」

「ご飯美味しかったよ、お婆ちゃん」

「お婆さん、朝食ごちそうさまです。後は俺たちに任せてください」

「ありがとう、お婆ちゃん、本当に美味しかったです」


僕たちがそう声をかけると、何か抑え込んでたものが抑えきれなくなったのか、お婆ちゃんはボロボロと泣き出した。


「うおっ……色んな者たちが孫を助けに行ったが、みんな結果は同じじゃった。だけど、二度現れたのははあんたたちが初めてじゃ、期待していいのかの、今度こそはと思っていいのかの……うっ……」


「期待していいし、今度こそと思っていいぜ、婆さん」

「そう、私たちに任せて」

「ヒマリ、がんばるから!」


お婆さんはそんなみんなの言葉に涙で反応している。


「そろそろ行こう。時間との勝負だ」

「そうだね、油断しちゃダメだね」

「それじゃ、行ってきます」


僕たちは、クエストリセットの選択が間違ってなかったと、この時、確信していた。急ぎ、あの洞窟へと向かう。



洞窟の中間地点のオーガを軽く一掃すると、岩戸の場所まで進む、そしてクエストアイテムである岩戸の鍵石を窪みに入れた。


岩戸はズズズ……と重い音を響かせて開いた。中を見ると、前のクエスト時にあれほどいたオーガの大群の面影もない。代わりに奥にいくつかの人影を見つける。


「よし、まだ生きてるぞ」

「間に合ったみたいね」


人影に近づくと、ゴゴゴ── と凄い地響きがして、何かの気配を感じる。嫌な予感がして、みんなに警告の声をかけた。


「気を付けて! 何かいる!」


前回のクエストの時には感じなかった強力な気配に、少し鼓動が早くなる。みんなも気配を感じてるのか真剣な表情で出てくる何かに備えて身構えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る