第49話 クエスト再受注

僕たちは、クエストをリセットする為に上の階層へと戻っていた。あの長い階段を上りながら、朝陽が不安を口にする。


「このままボス部屋に戻るんだよな、ボスが復活してたらどうするんだ」

「あのボスがどれくらいの周期で復活するかわからないですけど、ボスの平均的な周期は三日くらいですから、まだ大丈夫じゃないでしょうか」

「いや、あのボス戦の時よりみんなパワーアップしてるし、俺はもう一戦してもいいと思う」

「確かにそうね、今ならもっと楽に倒せそう。それにまた報酬貰えるんでしょう?」


「ボスの討伐報酬はPTで一度だけなので手に入らないと思うけど、ボスからのドロップ品はまた期待できるんじゃないかな、オーガ戦でのドロップが渋かったから少しくらいの寄り道はいいかも」

「まあ、ボスが復活してたらしてたでありってことだな」


恵麻の言うように、さっきのオーガとの戦いでは、レベルは少し上がったけど、アイテムのドロップは渋かった。落ちたのはいくつかの素材だけで、装備はゼロという結果だった。


そんな話をしていて、再度のボス戦を期待していたけど、ボス部屋に復活の兆しはなかった。ちょっと戦う気になっていただけに、少し拍子抜けした。


「よし、集落に戻ろう」

「うはっ、ちょっと休憩しねえか」

「いや、どうせ集落に戻ったらお婆さんの家で休むんだ。ここは先を急ごう」


碧の提案に反対する者もいなかったので、僕たちはすぐに折り返して集落へと引き返した。するとどうだろう、集落は最初に訪れた時のように静けさに包まれ、誰もいない元の状況に戻っていた。


「よし、どうやらリセットは成功のようだな」

「だけど、再受注が成功するとは限らないから喜ぶのはまだ早いわよ」

「あっ、そういや、あのクエストアイテムはどうなんだ、クエストのリセットと同時に消えたりしてないだろうな」

「それは大丈夫です。さっき、インベントリを確認しましたがちゃんとありました」


クエストアイテムを確認し、僕たちは、また、あのお婆ちゃんの家で一休みすることになった。まずはあの時と同じように食事を作り、夕食をとる。今夜のメニューは念のため昨晩と同じ、キノコと山菜の鍋にした。というか、食材が乏しく、これくらいしか作れなかっただけなのだけど、まあ、美味しいから良しとした。


「飽きねえな、これ」

「確かに美味しいわね。でも、肉も食べたい……」

「肉はもう無いんだっけ?」

「私、ソーセージを二本持ってるよ」

「コーンビーフなら一缶あるぞ」


「うーん、そういや、外の森で動物の気配がしたよな」

「狩る気? 勇気あるな」

「この森のキノコや山菜が食えるんだ、動物もいけるんじゃねえか」

「やだ、そんなの可哀そうだよ」

「何言ってんだ、ヒマリ、普段、お前、牛や豚の肉を食べてるだろうが、そいつは可哀そうじゃねえのか」

「それとこれは別でしょ」

「別じゃねえ、リアルで自分で狩猟して取って食べようが、流通した食肉を食べようが、命を食しているのに違いなんてどこでにもねえぞ」

「そうだな、重要なのは頂く命に感謝するってことだと俺も思う」

朝陽と碧の言葉にヒマリは納得したように小さくうなずいた。



食事を終えると、就寝となるが、見張りをどうするかについては意見が分かれた。いくら安全な可能性が高いといってもダンジョン内では見張りをおくべきだと主張する碧と恵麻に対して、朝陽や理央はここはクエスト上の絶対アンチだと全員での就寝を主張する。


それで多数決となったのだけどヒマリは軽く考えた後、全員での就寝に一票をいれた。たぶん、見張りをするのが面倒くさいと思ったのだろう。


「健太はどっちにいれるんだ」


僕はどちらかというと慎重派だと思われているようで、碧や恵麻が票を期待しているようだった。だけど、今回は僕もここは安全地帯だと思っていたこともあり、全員での就寝に票をいれることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る