第48話 絶望と希望
わらわらと湧き出るオーガの大軍を、僕たちは倒しまくった。ブラックオーガがレベル270、レッドオーガがレベル205、ブルーオーガは124、イエローオーガは80、そしてグリーンオーガは43と、個体によるレベル差がある中で、最弱のグリーンオーガが多数を占めていたのが幸いした。これでブラックオーガの数が多ければ、全滅していたのは僕たちかもしれない。
全体をヒマリのライトニングボウガンと理央の魔法で範囲攻撃し、撃ちもらした中の強敵であるブラックオーガやレッドオーガは恵麻のスリープタクトで狙い撃ちして倒した。それでも残ったブルーオーガやイエローオーガを朝陽と碧が撃破していく。僕は金剛炸裂玉や落雷石を使ってみんなのサポートに回った。
その連携で敵はなんとか全滅させることができた。しかし、やはりそのまま良い終わりとはならなかった。壊された石戸の先、そこは広い空間だったのだけど、そこにはぼろきれのようにズタボロにされた死体がたくさん転がっていた。その中の一つにお婆ちゃんが近づき、震えながらこうつぶやく。
「おっ……おっ……いやじゃ、またじゃ、またこの場面じゃ、ワシは何度この地獄を見ればいいんじゃ!! ワシは、ワシは……うおぉお……」
おそらくその死体の人物がお孫さんかお子さん夫婦の誰かなんだろう。なぜ、お婆ちゃんがこの展開を何度も経験しているかわからないけど、人生で最悪の出来事を繰り返すのは想像以上の地獄だと、僕でも感じる。
「うわ~ん、こんな終わり方、嫌!」
「ちっ、なんて後味わりいんだよ」
僕たちも最悪の結果に落ち込んでいた。みんな何もできなかった自分を責め、どうしたらよかったのかと考え後悔していた。だけど、そんななか、恵麻だけは悲しみを見せつつも、行動をやめなかった。
「この中にヨセフさんはいませんか」
恵麻が死体の山を指さして、その場にいた集落の人間に聞いた。その人は死体を見渡し、指をさして教えてくれる。
「あいつがヨセフだよ、いい奴だったのに残念だ」
何を思ったのか恵麻はヨセフと呼ばれた人の死体を調べ始めた。そして一つの丸い石のような物を死体の懐に見つける。
「やっぱりここにあったんだ」
「恵麻、それは何?」
「これがクエストアイテムの石戸の鍵石よ。鍵を使って入りたい場所の中にあるんじゃ、誰も見つけることはできないよね」
「そっか……だけど、今見つかっても、もう意味ないね」
「……それなんだけど、もしかしたら意味ないことはないかもしれないの」
「どういうことだ?」
その言葉に僕じゃなく一番に朝陽が反応した。
「もちろん、絶対じゃないんだけど、メルティライナーのサブクエストはクリアしても再受注が可能だったから、もしかしたら、クエスト自体をもう一度、最初からやり直せる可能性があるんじゃないかと思うのよ」
「なっ、ゲームの話かよ。やり直せるとしてどうやるんだ? ゲームと違って、そんな便利なボタンはどこにもねえんだぞ」
「再受注のボタンはないけど、クエストのフラグを踏みなおせばもしかしたら最初からやり直せるかもしれないの」
「クエストのフラグ? なんだよそれ」
「思い出して、このクエストが始まった瞬間を」
「それなら、お婆ちゃんの家に泊まった時からだよね。急に集落に人が現れて」
「あっ、確かに、急に変化したし、あのタイミングかあやしいね」
「じゃあ、もう一度、婆さんの家に泊まるって言うのか?」
「それじゃ、弱いかも、一度、この階層から出てリセットした方がいいと思う」
「面倒くせえが、そうするしかないなら一度上へ戻ろうぜ。まあ、ダメ元だ、それで無理だったらあきらめよう」
みんな悲しい結末が嫌だったようで、もう一度クエストをやるのに反対する者はいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます