第47話 時間経過
僕たちは、ヨセフさんの家の中をこれでもかというくらい探し回った。しかし、岩戸の鍵岩は見つからない。
「ダメだな、ここにはねえのかもしれない」
「どうする、もうだいぶ時間も経過しているし、そろそろヤバいんじゃない?」
「くそっ、どこにあんだよ」
「もう一度、情報収集からやり直すしかないな」
やはりクエスト自体がなかったことにされたこともあり、とにかく情報が少なすぎる。ここにないとなると、どこにあるのか想像もできなかった。
しかし、集落でもう一度情報を収集しようとした時、その異変は起こった。集落の人たちが、あの洞窟に向かって歩き始めたのだ。みんな無表情で操られているようにまっすぐ洞窟に向かって歩いていた。
「どうした、何が起こってるんだ」
「ダメ、時間が来たみたい」
「間に合わなかったのか?」
朝陽の問いに、恵麻は悲しい表情をするだけで、それ以上何も言わなかった。
「とにかく洞窟に行こう。何か別の方法があるかもしれない」
「そうね、ゲームのクエストが元になってるって言っても、ここが現実世界なのも間違いなし、何か手があるかもしれないわ」
「うん、あきらめないでいこうー!」
僕たちは一縷の望みに賭けてあの洞窟へと急いで向かった。
洞窟の中では、なぜか村人が岩戸の前に集まっていた。どういう理由なのかはわからないけど、異様な雰囲気で、岩戸を見つめている。その中にあの、お婆ちゃんの姿もあった。僕はお婆ちゃんに声をかける。
「お婆ちゃん、どうしたんですか、どうしてここに?」
「もう時間切れじゃ、もう何度もワシはこれを見てきたんじゃ……」
「えっ!? どういうことですか」
そう聞き返した時、恵麻が状況の変化を知らせる。
「きます! みんな警戒してください!」
岩戸から大きな音が聞こえてきた。それは巨大なモンスターが岩戸を殴りつけている音だった。やがて岩戸を塞いでいた大きな岩は崩れ落ち、中から多数のモンスターが飛び出してきた。
まずはヒマリのライトニングボウガンが放たれる。飛び出てきたグリーンオーガの数体が雷撃で黒焦げになり転がる。さらにそんなヒマリの攻撃に理央の雷撃魔法が追随する。
「ライトニングレールガン!」
それはレベルアップで覚えた理央の新魔法であった。強烈な雷撃が直線状に放たれ、巨大な一本の稲妻の光が、並んだモンスターを串刺しにして貫く。
一体辺りのダメージ表示は10万を超え、貫かれたモンスターたちは一溜りもなく絶命して消滅した。
「でかいのがくるぞ、朝陽、俺たちで止めるぞ!」
直接、岩を破壊した、黒く巨大なオーガがこちらに迫ってくる。こいつはヤバい奴だと感覚で感じるが、それを恵麻が数値で教えてくれた。
「気を付けて! ブラックオーガはレベル270の強敵です!」
ブラックオーガ以外にも赤とか青とかのオーガもどんどん湧き出てくる。それを倒しながら、碧と朝陽はブラックオーガに接近した。
「眠れ!」
近づいた赤いオーガを恵麻が眠らす。しかし、そんな恵麻を、横から走ってきた黄色いオーガが襲う。その攻撃を僕がケンタワンドで受け止める。レベルアップや装備によるステータスの上昇がいきているのか、なんとかその攻撃は受け止めきることができた。
「眠れ!」
その黄色いオーガも、恵麻のスリープタクトで眠りにつく。やっぱり、スリープタクトのクールタイムは0になっているようで、連続使用が可能になっているようだった。
その間に、なんとあのブラックオーガを、碧と朝陽の二人だけで倒していた。二人が強烈にパワーアップしているのがそれで証明された。
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