第46話 解決策
NPCと決めつけてクエストを無視して進むと提案する朝陽に、思わず気持ちが高ぶってこう言った。
「ここはゲームの世界じゃなくて、現実の東京だよ、おばあちゅんはそこに存在したし、僕たちに美味しい朝食も作ってくれた。おばあちゃんが存在するならお孫さんもその両親も存在するよ、NPCなんかじゃない」
僕の考えにちょっと驚いた顔をした朝陽だったけど、すぐにあきらめたようにこう返してくる。
「ふんっ、わあったよ、確かにあんな婆さんをそんな辛い目に合わせちゃ目覚めが悪りいしな、やるだけやってやるよ」
この返しには僕の言葉が朝陽に届いたようでうれしかった。
「しかし、進行不能なんだろ、どうするんだ?」
「進行不能なのはプログラムが全てのゲームの世界の話です。ここは半分現実の世界、もしかしたら何か解決策があるかもしれないです」
「よし、俺たちで見つけてやろうじゃねえかその解決策ってやつをよ」
みんなやる気がでてきていた。それほど朝食が美味しかったっていうことかもしれない。
「解決策を見つけるならゲームの展開を知っていた方がいいかもね、この後、どんな風にバッドエンドになるの?」
「時間が経過すると、そこの岩戸は中からモンスターが湧き出てくることで開かれるんです。しかし、その時には手遅れで、中にはお孫さんと両親の死体が転がっています」
「じゃあ、そのタイミングより先に、中に入って助けられればいいわけだな」
「そうなりますね」
「本来ならこの窪みに何かアイテムを入れて開くようになってるんだろ?」
「はい、しかし、そのクエストアイテムがバグで手に入らなくなっていたんですよ」
「バグで手に入らなかっただけだろ? どこかにねえかな」
「確かに……アイテム自体は存在していましたので、どこかにあるかもしれません」
「よし、それを探そう!」
クエストアイテムの名前は岩戸の鍵石ってアイテムらしく、本来、村の祭事で使われる設定だそうだ。これを探して岩戸を開ければ、クエストクリアの希望が見える。
僕たちは集落に戻り、村の人たちに話を聞いて、岩戸の鍵岩を探した。、あずは情報と片っ端から話を聞いて回った。
「岩戸の鍵岩? 確か祭事長のヨセフさんが管理しているはずだが」
すぐにヨセフさんという岩戸の鍵岩を管理している人の名前を知ることができたけど、この人、どこを探しても見つからない。集落の人の話だと畑仕事をしているというけど、集落近くに畑などまったくなく、話のつじつまが合わなかった。
「もう、そのヨセフって人の家の場所を聞いて、直接、家探しでもして調べてみない」
理央の過激な提案に朝陽はすぐに乗る。
「それがいいな、そもそもゲームのクエストか現実なのかよくわからん状況だ、変にモラルを守る必要もねえだろ」
「いや、それはどうかと思うよ、せめて集落の誰かに話をして許可を取ろうよ」
「なんて言うんだよ、クエストアイテム探させてくれとでも言うのか?」
「理由は適当でもいいと思うけど、僕はやっぱり形だけでも倫理を重視したい」
意見が分かれたので、ここで多数決の決まりが発動する。無理くり家探しに賛成は朝陽、理央、ヒマリの三人、僕と碧と、恵麻が反対した。票が割れたので、じゃんけんで行動を決める。
結果── レトロRPGの勇者ばりに、強制家探しでアイテムを探すことが決まった。嫌ではあったけど、ルールはルールだ。ここはモラルある考えは心の奥にしまって、横暴な行動に賛成した。
まずはヨセフさんの家を特定する。聞くとすぐに家を教えてくれた。そこは集落から少し離れた場所にある一軒家で、一晩お世話になったおばあさんの家より少し大きい建物だった。まずは中にヨセフさんがいる可能性もあるので、戸を叩き尋ねる。しかし、やはりと言うべきか留守のようで反応はない。僕たちは少し罪悪感を感じながらも戸を壊して中に侵入した。
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