第45話 進行不能
洞窟は、おばあちゃんの言うように、村のすぐ裏に存在した。薄暗く入るのに躊躇したけど、勇気を出して一歩を踏み出す。
「ダンジョンの中に洞窟とか意味わからんな」
「この階層自体がダンジョン感ゼロだし、違和感は感じないけどね」
洞窟に入り、しばらく進むと少しひらけた場所に出た。そこには待っていたようにモンスターがいた。巨大な鬼のモンスターで確かオーガって名前だったかな。それが五匹もいる。
「グリーンオーガはレベル43の格下モンスターです、それほど恐れる必要はないかも」
「よし、なら俺に任せろ、パワーアップした攻撃力を試したい」
そう言うと朝陽は単騎でオーガに突っ込んでいった。その速さが尋常じゃなかった。かき消えるようにダッシュすると、一瞬でオーガの一匹が蒸発するように消滅した。メッセージには脅威の12万ダメージが表示される。
「わっ、なんだこのスピードと攻撃力は!!」
やった本人が一番驚いていた。新装備が思いのほか強力のようで、攻撃力とスピードが異常にパワーアップされているようだ。
さらに朝陽は見えないような高速で移動しながらオーガを倒していく。あっという間に五匹のオーガは全滅した。
「よし、俺は強ええ!!」
しかし、サクッと倒したのはいいけど、格下だけあって経験値は少ないのか、レベルは上がらず、さらに僕らのPT初のドロップ無しの結果となった。
「ちっ、しけてんな」
「もしかしたら、ドロップ率には、敵モンスターとのレベル差も関係してるのかもしれないわね」
「あっ、そっか、今までって全部、俺たちより高レベルのモンスターばっか相手にしてたからな、そういうことなら納得できるか」
めげずに僕たちは先に進む、するとまた広い空間にでた。そこにはモンスターはいなかったけど、大きな岩戸が道を塞いでいた。
「なんだよ、いけねえじゃねえか」
「ここに何かはめるようなくぼみがあるけど、クエストアイテムが必要なんじゃないの」
「そんなゲームみたいな展開あるのかよ」
そう朝陽が言った瞬間、恵麻が大声で叫んだ。
「あっ!!!」
「どうした恵麻、腹痛いのか!?」
「違います! 思い出しました。これってメルティライナーのベータテスト時にあった有名なバグクエストですよ!」
「バグクエスト? なんだよそれ」
「メトソマ集落のクエストで、進行不可能になるバグがあったクエストです。確かその岩戸を現状では開けられず、おばあさんの孫さんを助けることはできないで終わってしまうクリア不可能のクエストだったかと」
「助けられねえでどうなるんだ?」
「時間進行でクエスト自体は進むんですけど、お孫さんは無残にも魔物の餌食になって、さらにそれを助けにいったお孫さんの両親、おばあさんの娘夫婦も魔物に殺される超バッドエンドでの終わりを迎えます。
「はぁ? なんだよそれ、ゲームで修正とか入らなかったのか」
「修正すると他の多数のクエストにも影響が出るということと、残念ながら大事なクエストでもなかったので、製品版では修正ではなく、クエスト自体受注できなくなる処置がされました」
「おばあちゃん……かわいそう……」
ぼそっとヒマリがつぶやく。確かにおばあちゃんの心情を考えたら悲惨の一言しか浮かばない。
「よし、まあ、そういう事なら話は早い、こんなクエスト無視して先に進むぞ」
「えっ! このままだとおばあちゃんのお孫さん殺されるのよ?」
「いや、だってゲームのNPCなんだろ? いいじゃねえか、どうなろうと。それにクリアできないんならどうしようもねえだろ」
朝陽はあのおばあちゃんをNPCと決めつけているけど、僕にはそう思うことはできなかった。
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