第42話 食事と休息
食材の鑑定は、ほとんどが食べれると結果がでた。ヤバそうなキノコも無毒なものが多く、毒のあるものは少なかった。しかし、見た目がアレなので、文句をつける人間もいる。
「いや、これ本当に食えるのか?」
カラフルなキノコを眺めながら、朝陽が訴える。しかし、理央がそのカラフルなキノコを取り上げて、鍋へと放り込んだ。
「わっわっ、理央、もうちょい検討した方がいいんじゃねえか」
「恵麻が食べれるって言ってるんだから食べれるでしょ、仲間を信用しないでどうするのよ」
「まあ、そうだが、あの色だぞ? みたか、なんか、どこぞの芸術家の渾身の作品みたいな色使いで、とても美味そうじゃねえだろ」
確かに恵麻は食べれるとは言ったが、美味いとは一言も言ってなかった。味の保証はされていないので、朝陽の懸念も当然ではある。
「味は食べればわかるでしょ? いいじゃない、少しくらいまずくても」
どうも理央は食に寛容なところがあるようで、味はあまり気にしていないようだった。それに比べて朝陽はまずいかったら心底嫌なのかずっと心配顔でオロオロしていた。
夕食のメニューはキノコと山菜の鍋で、朝陽の強い要望でご飯も事前に炊かれることになった。これで〆は雑炊で決まりだろう。みんな疲れや空腹もあり、できた鍋に我先にと箸を伸ばした。
「美味い! 嘘だろ、これがあのカラフルなキノコか!」
「確かに美味しいな、変なクセもないし、濃厚なシメジのような味わいで、俺は好きだな」
「ヒマリ、おかわり! いくらでも食べれるよ」
カラフルキノコは、火を通すと色も地味になり、かなり美味しかった。みんな夢中で食べて、気が付くとあっという間に鍋の具はなくなっていた。
「よし、〆だ。今回こそ雑炊にするぞ」
「まあ、反対はしないけどね」
すでにご飯も炊かれていることで今日の雑炊は誰も反対しなかった。さらに雑炊には卵だろと、四つしか残っていなかった貴重な卵のうち二つが投入される。
「美味しそう~」
「こりゃたまらんな」
「できればネギも欲しかったわね」
確かに、仕上げにネギを散らせば完璧だったと思う。だけど残念なことにネギは誰のインベントリにもストックは無かった。
〆の雑炊は奪いあうように平らげ、ようやくみんな落ち着いた。食後には僕と碧、それに恵麻はコーヒーを頂き、理央は紅茶を、ヒマリと朝陽は朝陽特製コーラーで一服となった。
「そういや、神託の宝玉だけどよ、三つしかねえんだろ、誰が使うか決めとくか?」
「ジョブアップグレードだから、戦闘ジョブの誰かでいいんじゃない」
「いや、逆に鑑定士の恵麻とか面白いと思うぞ」
「鑑定士の上位ジョブてなんだろう」
「大鑑定士とかじゃねえの」
「なによ大鑑定士って、発想が安易よ」
「じゃあ、理央はなんだと思うんだよ」
「……超鑑定士」
「大鑑定士と似たようなレベルじゃねえか!」
「僕は碧に使うのがいいと思うよ、チャンバラナイトの上位ジョブはたぶん、ナイトだと思うし」
「ナイトか、ナイトならCランクジョブだからありだな」
「無難ってことなら理央は決まりじゃない? マジックエンチャンターの上位ジョブはウィザードか、もしかしたらハイウィザードなんてこともありえるわよ」
「ハイウィザード! Bランクジョブじゃねえか! そりゃいいな」
ジョブのランクアップにみんな想像が膨らんでいるようだ。三つしかないので、取り合いになるかと思ったけど、誰もがPTのことを考えて選ぼうとしているのにはなんだか嬉しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます