第39話 謎の集落

集落にいくには森の中を進むしかなかった。そこはかなり丈の高い原生林で、陽があまり届かず薄暗い。もちろんダンジョン内なのでモンスターも出るだろうということで警戒しながらゆっくり進んだ。


「その辺にキノコでも生えてねえか」

「ちょっと、なに変なこと言ってんのよ」


朝陽に対する理央のツッコミに、碧が冷静なトーンでこう返す。

「いや、そうでもないぞ、食料も乏しくなってきたし、食べれるものがあれば採取しておいた方がいいかもしれない」

「あのね、素人に毒キノコと食用のキノコの区別なんてできるわけないでしょ」


理央の指摘に、恵麻が何か思いついたようにこう発言する。

「あっ、それ私わかるかも」

「そうか、採取してイベントリに入れちまえば恵麻の鑑識眼でわかるのか」

「そう、たぶん詳細が見れるから区別できると思う」

「よし、歩きながらキノコとか探してインベントリに入れちまおう」


帰れるめどが無い今、食料問題は重要な課題でもあった。僕らは何か食べれそうなものはないかと探しながら歩いた。


「あったぞ! キノコだ!」

「うわ……そんなカラフルなの食べれるわけないじゃない」

「いや、わからないぞ、とにかくインベントリに入れておこう」


キノコだけではなく、食べれそうな木の実や果物など、あらゆるものを恵麻のインベントリに入れていく。しかし、これだけ量が多くなると、仕分け作業が大変だろうなと思ってしまった。


食料探しに集中しながらの移動だったので、気が付けば集落のすぐそばまでやってきていた。朝陽がみんなに注意を促す。


「注意しろよ、集落の連中が友好的とはかぎらないからな」

「ちょっと隠れて様子をみない?」

「そうだな、明らかに危険そうな連中だったらやべーもんな」


僕たちは隠れて集落の様子を探ることにした。


しかし、待てど暮らせど集落に人気は現れなかった。場所が悪いのかと集落の周りを何か所か移動してみるけど、だれ一人見ることはない。


「無人じゃねえのか」

「その可能性もあるわね、そもそもダンジョン内に人が住んでるって方がおかしい話だし」

「思い切って集落に入ってみようか」

「そうだな、このままコソコソしていても始まらねえし」


とにかく、集落に入って中の様子を探ることになった。もちろん最大限警戒しながらではある。


集落には原始的な建物がいくつか建っていた。家というより小屋と言う方がしっくるくる作りで、廃れたり、朽ちたりはしておらず、まさに現在、人が住んでますといった状態ではあった。今にもひょっこりと人がでてきそうな雰囲気はあるけど、いくら探しても家主の姿を見つけることはできなかった。


「誰もいないね」

「たく、なんなんだここは」

「まあ、安全ではありそうだし、ここを拠点に、この階層を探索してはどうかな」

「確かにモンスターの気配ねえけど、なんか不気味なんだよな」


しかし、他にあてもないので、ここを拠点にする案が採用された。いくつかある家屋の中でも、広くて綺麗なひとつを選んで、勝手に拠点にして一休みする。この建物には囲炉裏があるし、六人が寝ても十分な広さがあり、なかなか快適そうな場所であった。


「俺と朝陽はも少し集落を探索してくるから、みんなはここで休んでいてくれ」

「あっ、じゃあ、私その間に、上の階層のボス報酬の鑑定してるよ」

「じゃあ、僕は恵麻に付き合うかな」

「私もここで見張りでもしてるわ、何があるかわからないんだから気をつけなさいよあんた達」

「ヒマリは朝陽たちについてく!」

「いらん、邪魔だからここにいろ」

「えええっ~ヒマリ、役に立つよ! ライトニングボウガンもあるし」

「集落内ではモンスターの心配はなさそうだし大丈夫だよ、ちょっと見回るだけだから、それは俺と朝陽に任せろ。ヒマリは次の戦闘に備えて休んでいろよ」


たぶんだけど、考えながら見回るのに、ヒマリはちょっと邪魔になると判断したのだろう。ちょっとふくれているけど、ヒマリもここで休むことを受け入れたようだ。

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