第37話 とどめの一撃
長いボスガニへの攻撃がようやく形となって現れる。ボスガニの色が赤に変わり、もうすぐ戦いが終わることを示していた。
だけど、ボスガニの色の変化は、終わりに近づいたと同時に地獄の始まりでもあった。赤のボスガニは攻撃パターンが激変する。
爪で攻撃してきていたメインの物理攻撃が、火の魔法による魔法攻撃に変化した。火の魔法は、体からなんの予兆もなく繰り出されるので、避けるのが難しい。みんなあたふたと逃げ惑う。
「みんな俺の後ろに集まるんだ」
碧が盾を構えてそう言う。防ぐ術がない僕らは素直にその指示に従った。
碧の盾は炎攻撃を受け付けない。完全にボスガニの攻撃を防ぐことができているけど、こちらも攻撃する手段がなく膠着してしまった。そこへわらわらとコガニが集まってくる。
「いやっ、こっちこないで!」
「くそっ、このままじゃカニの餌だな」
さらにボスガニは新しい攻撃パターンもみせてきた。さっきまでコガニを放出していた背中から、噴水のように氷の槍を噴き出す。それは数が多く、上から降ってくる無数の氷の槍に戦慄した。
「エクスプロージョン!」
理央が上空に向けて爆裂魔法を繰り出した。上空で激しい爆発が起こり、氷の槍も四散する。しかし、ボスガニはすぐに連続で氷の槍を再度噴出し始めた。
理央の表情がこわばる、それは次の詠唱は間に合わないという反応のように見えた。だけど、それを予想していたのか、咄嗟の判断なのか、ヒマリが氷の槍に向けてライトニングボウガンを撃った。その一撃は氷の槍の一つに命中すると、雷の連鎖を生み、氷の槍を次々撃ち落としていった。
だけど、さらなら氷の槍の噴出する気配を感じて、全員が絶望を感じる。そんな時、待ちに待っていた知らせが僕のメッセージボードに表示される。
「ケンタワンドのクールタイムが終わったよ!」
「まじか! よし、全力でフォローするから、ボスガニにぶっばなせ!」
朝陽は派手に動いてボスガニの注意をそらす。碧は盾を持ったまま前進して僕が近づきやすくしてくれる。ヒマリは上空の氷の槍を撃ち落とし、理央は魔法で援護してくれた。そして恵麻は僕と一緒にボスに向かって走る。
「先に私のスリープタクトで眠らす! すぐに目を覚ますけど、それまでは一瞬だけど完全に無防備になるわ、そこを狙って!」
「わかった!」
恵麻は一歩先に走りボスガニを射程に収めると、スリープタクトを振るった。
「眠れ!」
ボスガニは一瞬の眠りにつく。そこを狙ってケンタワンドのスキルを放った。
「鉄槌を!」
会心の一撃、そう感じた。ズバッとした感触と、強烈な轟音が耳に響き、今までの攻撃エフェクトを超える派手さでボスガニに上から凶悪な圧が襲い掛かる。ボスガニは完全にぺしゃんこに潰され、そのまま倒れて消滅した。
表示されたダメージは500万を超えていた。あまりの威力に意味がわからなかったけど、恵麻が補足してくれる。
「もしかしたら、スキル【幸運の鉄槌】って、状態異常の敵に対しては確定で会心ダメージが入るのかも。私の鑑識眼も万能じゃないから、そんな見えない隠し設定が存在してもおかしくはないわ」
そんな恵麻の説明に興味ないのか聞こえていなかっただけなのか、勝利の喜びを持って仲間たちが無邪気に近づいてくる。
「やった~! 倒したよ!」
「コガニも消えたし、勝利だな」
「見て、報酬の宝箱が出現してる」
「まあ、どっちにしろボスは倒せたし、よかったよ」
そう笑顔で恵麻に話すと、彼女も笑顔になり、そうね、とボスを倒した高ダメージの話を終えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます