第36話 疲労からの

「健太! ケンタワンドのクールタイムは後どれくらいだ?」

「二十五分!」


「ながっ! くそっ、恵麻のスリープタクトも碧の延焼ダメージもダメ、ケンタワンドまでは遥かに長い、さてどうする……」

「やはり理央の火力でジワジワ削るしかないな」

「それしかねえか」


ここで恵麻と僕、そしてヒマリがコガニの処理に周り、朝陽、碧、理央の三人がボスガニを相手にすることになった。


僕たちコガニ組は、ヒマリを中心火力とし、僕と恵麻でヒマリを守るように戦う形になった。ヒマリはがむしゃらにライトニングボウガンで攻撃し、僕と恵麻はワンドとタクトで殴ってコガニをヒマリに近づけないようにする。


朝陽たちは、朝陽と碧でボスガニを抑えながら、後方から理央が魔法で攻撃するという王道のRPGスタイルで、ボスガニの体力を削り切る作戦だ。なんとかうまく立ち回っているけど、一つ懸念点があった。ボスガニを倒しきるまでに理央のMPが持つかどうかである。MPの回復手段を持っていない現状で、途中で理央のMPが切れたら終わりだ。


そしてその懸念点は現実となる。10分ほどで理央のMPが尽きて、魔法が使用できなくなった。その間に朝陽、碧も攻撃を加えていたけど、ボスガニはまだまだ元気で、弱っているようにも見えなかった。


「作戦変更! ヒマリと理央、交代だ! ヒマリのライトニングボウガンの火力で残りを削り切るぞ!」


それしかないと僕も思ったけど、そうなるとコガニの処理を、MPの切れた理央、クールタイム中の僕、そして恵麻と、攻撃方法が棒切れで殴るスタイルしか残されていない面々で処理しなければいけなくなった。


しかし、意外に僕たち、殴り組三人でもどうにかなるもんで、コガニの処理はなんとかなっていた。だけど、ボスガニの方はやはりと言うかかなり苦戦していた。


「はぁはぁはぁ……ちょっとしんどくなってきたな」

「ふぅ── 朝陽、ちょっと後ろで休め、その間は俺がなんとかする」

「お前だってヘロヘロじゃねえか……はぁはぁ」


ボスガニの猛攻を抑えている二人のスタミナが限界がきているようだ。このままではボスガニを倒す前に二人が倒れてしまう。


「恵麻、理央、ちょっとコガニを頼む」

「健太、どうするつもり!」


僕が少しでも時間を稼ぐ、二人を休める為になんとかしようと動いていた。


「健太!」


僕はボスガニに落雷石を投げつけた。落雷がボスガニを襲う。位置的に目立つ方向から投げた落雷石の攻撃は、ボスガニのヘイトを刺激するには十分だった。ボスガニは僕に向かって突進してきた。


ボスの攻撃を防いだり、避けたりするのは僕には無理だ。だけど、逃げ回るだけならなんとかなる。落雷石にはショック効果がある。一時的に敵を動きを止める効果で、これを利用すればなんとか逃げ切れると計算した。


ボスガニが近づいてきたら落雷石で動きを止める。さらに逃げて時間を稼いだ。しかし、それでも時間を稼げるのはほんの数分だろう。その間に朝陽と碧が少しでも回復することを願う。


だけど、危機はすぐに訪れた。逃げる時に足を滑らせて転倒してしまう。ボスガニの爪が目の前に迫った。


「危ない!」


警告とともにヒマリがライトニングボウガンで攻撃してくれた。この隙にボスガニの攻撃範囲から離脱して、さらに落雷石を投げつけて動きを止める。そして同じように逃げながらボスガニを引き付けた。


「健太、もういい、後は任せろ!」


スタミナが回復した朝陽と碧がこちらに合図を送ってくる。僕も限界を感じ、二人のもとへと逃げた。


「ごくろうさん」

「ありがと、健太、だいぶ回復した」


二人にボスガニをなすりつけて、僕は後方に逃げた。二人は僕から引き継いでボスガニを受け止めてくれた。

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