第34話 本番はこれから

ヒマリはライトニングボウガンを撃ち続け、数多くいる敵を撃ち減らしていく。朝陽は大型の厄介な敵を引き付け、碧は前衛となり敵の猛攻から僕らを守ってくれた。理央は集団から孤立した敵を狙い撃ち、確実に仕留めていく。そんな中、僕と恵麻は温存する為にみんなにただ守られる存在になっていた。しかし、そんな温存タイムも終わりを告げる。


「恵麻、健太、来たぞ! アダマンサウルスだ!」


味方のはずのモンスターをも跳ね除けながら、一体のアダマンサウルスが突撃してくる。僕と恵麻は身構えて攻撃態勢に入った。


「健太、ここは私に任せて!」


恵麻はスリープタクトを振ってすぐにスキルを発動した。


「眠れ!」


アダマンサウルスにスリープタクトが通用するのは実施済みである。アダマンサウルスは一瞬で意識を失い眠りにつく。さらに猛毒状態となり、大ダメージが入り始める。


「健太、気をつけろ! もう一匹行くぞ!」


朝陽は多数のモンスターを引き付けながら、縦横無尽に動いている。そんな状態にいながらも、厄介なアダマンサウルスの動きを把握して、こちらに知らせてくれた。


「恵麻、僕の後ろに!」

「何言ってるの、フォローする」


即効で相手を無力化するスリープタクトと違い、僕のケンタワンドは発動までの時間が少し間があるうえに、普通のダメージスキルなので敵の行動を阻害する性能はない。その為に少しでもタイミングがずれると倒す前に大打撃を受ける可能性があった。それで恵麻はフォローしてくれると言ったのだろう。


アダマンサウルスは想像以上の速さで向かってきた。焦ってスキルの発動に戸惑う。ヤバい間ができてしまったが、その間を恵麻が埋めてくれる。


恵麻はアダマンサウルスに向けて金剛炸裂玉を投げつけた。もはやボス級のアダマンサウルスにダメージとしては微々たるものだけど、牽制するには十分であった。その恵麻が作ってくれた一瞬の間に、ケンタワンドのスキルの準備が整う。


「鉄槌を!」


強烈で重い一撃がアダマンサウルスに降り注ぐ。上からの途轍もない圧に、アダマンサウルスはその場で縮小される。ボス級を一撃で倒せるとはさすがに思っていなかった。しかし、その予想は良い意味で裏切られる。その一撃のダメージが表示されると、僕も恵麻も素直に驚いた。


「155万ダメージ!!」


かなり威力が向上しているのに理由がわからなかったけど、PT共有効果のディバイン・レリックじゃないかと思い出した。


凶悪なダメージに、アダマンサウルスは倒され消滅する。それと同時に、恵麻に眠らされ、猛毒でダメージを受け続けていたもう一体のアダマンサウルスも倒れる。


「よし、ボスを倒した」


周りのモブモンスターも、碧、理央、ヒマリの火力でほぼ倒しきっていた。完全勝利だと思ったその瞬間、部屋の全体が揺れ始める。それを見て、碧が嫌なことを言う。


「やっぱりボス戦はこれからか」

「嘘だろ、なんか出るのかよ」


部屋全体に赤色のエフェクトが広がる。そして部屋の中央に巨大なモンスターが出現した。


「恵麻、あれはなんだ?」

「ダメ、見たことないボスだ」


中央に出現してきたのは巨大な甲殻類のようなモンスターで、カニのように足が何本もあった。カニと違うのは前にも普通に移動してくる。しかも足のすべてがしっかりとした爪となっていて、攻撃力は高そうであった。


「朝陽! 頼む!」

「任せろ!」


朝陽がそんなボスガニに向かっていく。平然と未知のボスに向かって突撃できるのは勇気があるのかただ単に無謀なのか……。


ボスガニは近づく朝陽に向かって、いくつもの足で攻撃を仕掛けてくる。それはひょいひょいと避けて翻弄しているのはさすが回避タンクだと感心する。


そんなボスガニの動きから隙を見つけて、碧も接近する。そして炎の剣で足の一本を斬りつけた。


斬撃ダメージは1232を表示する。かなり防御力は高いようで、思ったよりダメージは入らない。しかも火耐性が高いのか、延焼ダメージも数百ダメージしかはいらず、さらに延焼耐性でもあるのかすぐに鎮火した。


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