第33話 ボス対戦

ボス部屋の前で、最小限の打ち合わせをする。


「とにかく、部屋に入ったら敵の分析だな、いきなり突っ込んだりするなよ」

「そんな時間あるかしら、向こうがこっちに突っ込んで切る可能性もあるんじゃない?」

「まあ、その時はその時だ、俺と碧でなんとか抑えるから、残りのメンバーで集中砲火を浴びせて倒しゃあいい」


兎にも角にも部屋に入って敵を見なければ戦術も考えられないということで、中に入ることになった。扉は巨大な割にはスムーズに開き、中の様子が見えてきた。


そこは広いだけで何もない部屋だった。あるのはボスを討伐した時に宝箱が出現する特有の方陣が部屋の中央にあるだけだった。


「ボスいないわね」

「恵麻、メルティライナーはボスってどういう出現の仕方するんだ?」

「普通はボス部屋に最初からいるものだけど、討伐後すぐとかはいないこともあるよ」

「ここは未知の階層だからな、ライバルPTが先にボスを倒したとかはねえだろうし、どういうことだ」


そんな話をしながら部屋を探索していた。そして朝陽が中央の方陣に近づいた時、それは起こった。警報みたいな音が鳴り響き、僕たちの周りにいくつもの光が現れた。それはモンスターの出現を現すもので、僕たちの危機的状況を表すものでもあった。


「やべっ! 敵が沸くぞ!」

「数が多い! みんな集まって備えるんだ!」


沸いて出たモンスターは数十体はいた。しかもアーマーザウルスやアンバクルなど、この階層で遭遇したモンスターたちが総出演、多種多様で恐怖する。


さらに状況は悪化する。遅れて新たに二つの脅威が姿を現す。それを見て絶句した。現れたのはボス級で苦戦したあの、アダマンサウルスだったからだ。しかも二体も登場して、みんな絶句して言葉を失う。


「に、逃げよう!」

「それしかないわね、みんな入り口に走るのよ」


反対する者はいなかった。全員が一目散にボス部屋の入口に逃げようとした。しかし、見るといつの間にかボス部屋の入口は固く閉ざされていた。


「うわっ、最悪」

「くそっ、やるしかねえぞ!」

「健太、恵麻、お前たちのスキルは二体のアダマンサウルスに温存しておけ」

「了解」

「わかった」


敵はゾロゾロと僕たちに殺到してくる。碧と朝陽が前に出て、敵を抑えようと構えた。

「ヒマリ! ボウガンを連射しろ!」

「任せて!」


ヒマリは朝陽の指示通り、ライトニングボウガンを敵に向かって撃ちまくった。ライトニングの矢が命中する度に、雷が発生し、周りの敵も巻き込んでまぶしいくらいの稲妻の鎖を発生させる。広範囲に雷は広がり、多くの敵を巻き込んでいく。


比較的小型のギドラスなどはこのヒマリの攻撃で一掃されていく。驚異の殲滅力を頼もしく思うけど、生き残ったモンスターもまだ多数いた。


二体の鉄巨人がライトニングボウガンの雷撃に耐えてこちらに突っ込んでくる。朝陽が飛び出して、その二体を引き付ける。朝陽は軽やかに鉄巨人の拳を避けながら、モンスターの群れに突っ込んでいった。いくら素早い彼でも危険な行動なのは間違いない。


「碧!」


理央が横から接近してきたアーマーザウルスに気が付いてそう叫ぶ。碧は無言でそれに応えて、そのアーマーザウルスの前に躍り出る。アーマーザウルスは尻尾を振って攻撃を繰り出してくる。碧は辛うじてその攻撃を盾で防いだ。しかし、アーマーザウルスの猛攻は終わらない。尻尾を執拗に碧にぶつけて倒そうとした。


僕は碧を守ろうと、ケンタワンドを振るおうとした。しかし、それを恵麻が止めた。僕のスキルは温存しておくという理由もあったけど、僕がスキルを使うまでもないという判断でもあった。その時、すでに理央が魔法の詠唱を終えていた。


「アイシクルランス!」


得意の氷結魔法がアーマーザウルスに突き刺さる。突き刺さった場所からアーマーザウルスを包み込むように冷気が広がり、大きな体を凍結させた。理央の成長した魔法の威力は凄まじかった。10万近いダメージが表示され、アーマーザウルスはその一撃で屠られる。


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