第28話 再シフト
上への道は、いくら探しても見つからなかった。やはりゴールの逆側にスタートがあるという考えは単純すぎたのかもしれなかった。
「この辺にはないのかもな。探索する範囲を広げるか、エリアを移動してまったく違う場所を探索するか」
「戦力がもう少しあれば二手に分かれて探索するって手もあるけど、今、それをやるのは危険ね」
「そうだな、それはやめておこう」
結局、探索範囲を広げて、上へのルートを探すことになった。これだけ探しても上へのルートが見つからないことで、ちょっとした焦りが僕たちに生まれてくる。その為、レベル上げより、脱出ルートの探索を優先することになり、戦闘は必要最低限、避けられない場合のみとして、できる限り広い範囲の探索をおこなうことになった。
しかし、そんな風に探索に力を入れて半日探索したけど、やはり手がかりすら見つけることはできなかった。
「本当に上へいくルートなんてあるのかよ」
「ちょっと思ったんだけど、もしかして、上へ行くルートは、階段とか通常のものじゃないんじゃないかな?」
「あっ、それは私も思った。そもそも私たちって変なアイテムで転送してこの階層に来たわけでしょ? 何かしらの条件とかで転送されたりしないかしら」
確かにそれはありえる、そもそも今いる階層は、一般的には知られていない、あきる野ダンジョンの22階層というわけのわからない場所だ。わかわからない場所から帰るにはわけのわからない方法だとしてもおかしくはない。
「もしかしてボスか!?」
「ありえるわね。ボスの討伐が帰還の条件ってのなら、私は納得するわ」
「こりゃ、ボスを倒す流れになりそうだな」
「ちょっと待って、ボス攻略するんなら、やっぱりもう少し準備する方がいいよ」
「健太の意見に賛成、せめて全員レベル50オーバーまでレベルを上げて、装備も整えた方がいいと思う」
「だな、それがいいと俺も思う。じゃあ、レベル上げに戻るか」
ということですぐに探索優先からレベル上げ優先へと再シフトすることになった。
「その前に、ランチにしない?」
「賛成! ヒマリ、お腹すいた!」
「そうだな、一度、拠点に戻るか」
このPT、みんな食を大事にするようで、その提案に誰も反対しなかった。もちろん僕も賛成で、レベル上げ前に拠点に戻りランチをとることになった。
ランチメニューは話し合いの結果、パスタと決まった。丁度、レトルトのパスタソースが人数分あったのでパスタを茹で、パスタソースを温める。手軽な用意なので、パパッと碧が率先して準備をしてくれた。
「美味いなこれ」
「でしょ、私のお気に入りなんだ」
パスタソースはボリュームのあるミートソースで、肉のうま味たっぷりのパンチのあるソースだった。恵麻はもっとあっさりしたものを好みそうに思っていたけど、意外な好みに小さく驚いた。
「ちょっと、朝陽! ヒマリの皿のとらないでよ!」
「からだ小さいんだから少しくくらいいいだろ」
「ダメ! ヒマリは育ち盛りなんだから、いっぱい食べないとダメなの!」
「はぁ? お前16だろ? 何が育ち盛りだよ、育っても横にしか増えねえぞ」
「きっ~~!! 朝陽には絶対あげない!」
「ふんっ、いいよ、健太に貰うから」
「いや、僕もあげないから」
「なっ! くっ……なら理央、お前のを……」
「あげるわけないでしょ、我慢しなさいよ、いい大人なんだから」
「くそ……おかわり欲しいな」
朝陽が空になった皿を見ながら誰に言うでもなく呟く。
「俺もお代わり欲しいくらい美味かったけど、パスタソースがもうないから無理だぞ」
「くっ、次の冒険時には、インベントリにパスタソース大量に入れてきてやる!」
「そうだな、腐らないし、俺も次の機会には食料は大量に入れるようにするよ」
みんな考えることは同じかもしれない。僕も同じように次は大量の食糧をインベントリに入れていこうと考えていた。
ランチも終わり、いよいよレベル上げに行くことになった。狙うは単体で行動している大型モンスター、それを僕のケンタワンドと、恵麻のスリープタクトのローテーションで狩ることになった。
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