第26話 怒られる
「馬鹿野郎! 何考えてんだ! 一歩間違ってたら二人とも死んでたんだぞ!」
「ごめんなさい……」
「すみません……」
碧、朝陽、理央にとんでもなく怒られる。ヒマリは怒られる僕らを心配そうに見ていた。
「いいか、絶対に単独では戦おうとするなよ。何かあったら些細なことでも知らせろ。それが見張りの役割だ」
「そうだ、今回は運がよかったかもしれないけど、二人で戦って、二人とも死んでいたら、すぐに帰還もできない状況じゃ蘇生できる可能性は低かったんだぞ。それが残されたPTメンバーにとってどれだけ悲しい結果になるか考えてくれよ」
「本当に馬鹿なんだから、恵麻と健太は仲間に気を使いすぎなのよ。PTメンバーなんて、命を共有する運命共同体、家族と同じくらいに近しい仲間よ、遠慮なんてしないで、たたき起こすくらいで丁度いいんだから」
本当におっしゃるとおりだ。僕と恵麻は反省してただ俯くだけだった。
「ごめん、私が悪かったよね」
「いや、恵麻だけの責任じゃないよ。僕も戦うことに同意したわけだし、抜け駆けして手柄を立てたいって気持ちも少なくともあったから」
「私は完全に慢心していた……スリープタクトがあればどんな敵だって一体なら勝てるって思っちゃってた。ダメだな、冒険者として絶対にしちゃいけない判断だったよ」
「それで学べたんならいいんじゃないかな、失敗を糧にできるかどうかが重要だってどこかの偉い人も言ってた」
「でも、判断は失敗でも、成果は失敗じゃなかったから厄介だよね」
「ハハッ……確かに」
あの戦いで、【SR】ルーンストーンと【素材】キラードリルというアイテムをドロップしていた。レベルも上がったし、成果があったのは間違いない。
怒られた僕らは罰として朝食作りの当番となる。メニューは無難にホットドッグにした。
切り目を入れたパンを直火で炙り、ソーセージも同時に焼く。
「そろそろいいんじゃない。焦げちゃうよ」
「そうだね、そろそ──あつ!」
「ほら、気を付けないと」
火傷した手に恵麻がポーションをかけてくれた。大事なポーションだけど、PT内で普段使い用に用意しているもので、ちょっとした生活の怪我に使う為のものだったので、遠慮なく治療してもらった。
焼けたパンに、レタスとソーセージを挟み、ケチャップと粒マスタードを付ける。単純なレシピだけど、これだけでかなり美味しい一品だ。それと恵麻が卵スープを作ってくれたのでそれも一緒に出す。
「わ~ 美味しそう」
「いいわね、パンも良い焼き加減よ」
「ちょっと待て、俺は二個くらい食べれそうなんだけど、一人一個か?」
「食料は無限じゃない。そこは我慢しろよ」
量はともかく、味についてはみんなの評価はまずまずで、美味しいと言ってくれた。恵麻の卵スープもかなり美味しく、意外に料理が上手いんじゃないかと感心した。
朝食が終わると、軽くミーティングをする。そこで昨晩のことをあらためて怒られ、見張り時の取り決めが正式に決まった。
「見張り時の異変があった時は、どんな些細なことでも、全員を起こして対処すること、絶対に単独で対処しようと思うな。これは恵麻と健太だけに言ってんじゃねえからな」
「そう言ってる、お前も気をつけろよ、朝陽、無謀なことする可能性はお前が一番高いんだから」
「俺は計算して行動してんだよ、無茶なんて一度もしたことねえ」
「どうだか」
朝陽の行動が計算済みなことなのかどうかはわからないけど、僕よりは考えて行動しているのは間違いないと思う。
ミーティングでは今日の予定も話し合われた。とりあえず、レベル上げなんだけど、未開拓の場所を探索しながら、脱出ルートを探りながらレベルを上げることで決まった。確かに食料事情など考えればそれほど時間的余裕はないので、レベルを上げることだけ考えていても効率は悪いかもしれない。
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