第25話 幸運の一撃
コーヒーも飲み終わり、恵麻とたわいもない話をしている時、ちょっとした物音に恵麻が気づいた。
「健太、静かに……何か聞こえない?」
「えっ、なんだろう」
「なにかを引きずるような音が聞こえる」
「朝陽のいびきじゃないのか?」
「方向が違うわよ、それに反響して聞こえるからたぶんダンジョンの通路の方から聞こえるんだと思う」
「ちょっと見てこようか」
「うん、それがいいかも、もし危険なものが近づいてるんならみんなを起こさないと」
僕と恵麻は、音がするという通路の方へと警戒しながら移動した。近づくと、その音が僕にも聞こえてくる。ギギギっと重い物を引きずるような音、確かに何かがいるのは間違いなかった。
「僕がちょっと見てくるよ」
「なら私も一緒にいく」
「恵麻は危ないかもしれないからここで待機していてよ」
「危ないならなおさら私もいくべきでしょ?」
確かにそうだ、僕一人では危険に対処できない。頼りない自分に少し嫌悪するが、ここは現実を考え、二人で様子を見に行くことに同意した。
結果、やはりというか、その音の正体は徘徊するモンスターだった。両腕がドリルのような武器になっている人型のモンスターで、背中からのびるチューブのような物を引きずりながら歩いていた。
「アンバクルね、レベルは100くらいだったと思う」
「どうしよう、みんなを起こす?」
「いえ、相手は一体、こちらにはスリープタクトがあるから二人でいけるかも」
「倒すつもり!?」
「放っておくわけにもいかないでしょ?」
「そうだけど……勝手に危険なことしたら碧とか朝陽が怒りそうだよね」
「まあ、その時はその時、二人で怒られよう」
「いや、怒られたくないんだけど……」
「いいからほら、いくわよ」
僕らはできるかぎり気づかれないように近づき、不意をつくように準備をした。しかし、足が小さな石に当たり、僅かな物音をたててしまう。
アンバクルはこちらに気づき、赤い不気味な目を光らせ、こちらに突進してきた。僕は咄嗟に前に出て、恵麻を守ろうとする。彼女はその行動に少し驚いたけど、すぐに最善の行動に移る。
「眠れ!」
だが、いつもとエフェクトが違った。ぽわわんとした光がすぐに格消されて消え失せる。もちろん、アンバクルは眠る気配するなかった。
「やばっ! こいつ睡眠無効耐性持ちかも!」
「えっ! 嘘!」
アンバクルは見た目通りで、腕のドリルを使って攻撃してくる。僕は金剛炸裂玉を投げつけて牽制した。しかし、そんな攻撃などお構いなしにドリルを突き出してきた。
咄嗟に恵麻を突き飛ばしてかばう。僕はその押した反動で後ろ飛んだ。
アンバクルは倒れた恵麻を執拗に狙った。回転するドリルで風穴を開けようと向かっていく。危ない、このままでは恵麻がやられる。そう感じた僕は、まだ使ってない未知の武器を振るっていた。
「鉄槌を!」
ヒマリにケンタワンドと付けられた僕の新武器、そのスキル【幸運の鉄槌】を発動する。必死で正解かわからない発動動作だったけど、どうやら正解のようだった。アンバクルは、上から強烈な圧力がかかったようにペシャンコになって潰される。そしてメッセージにはとてつもないダメージが表示された。
「ダメージ70万!!」
一撃だった。レベル100もある敵を一撃で倒したのに驚く。恵麻もそのとんでもないダメージに素直に驚いていた。
「ダメージ70万って……超級魔法クラスのダメージじゃない」
「ははは……なんか凄かったね」
「凄いってもんじゃないわよ! 無属性で70万ダメージなんてどれだけ無茶苦茶か」
ダメージが凄かったのはいいとして、この勝利によりレベルが1上がった。そしてアイテムもドロップした。なんと他の仲間たちになんと話せばいいのかそっちの方が気になっていた。
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