第24話 キャンプ
鑑定が残っていた【UR】マジックアイテムだけど、こちらも凄いアイテムだった。
「蘇生ポーションだと!!」
「ちょっと待って、それって凄い貴重アイテムじゃなかったけ?」
「相場1000万の貴重品だな」
「凄い……売りたくなるね」
「いや、これはいざという時の為にとっておこう。一回なら誰か死んでも大丈夫ってことだろ、保険だ保険」
「いや、それがね、残念な統計データがあるんだけど、PTの死亡事故時の平均人数なんだけど、3.5人と、誰か死んだ時は大抵、一人じゃ済まないってことらしいよ」
「一本じゃ足らないってことだな」
「できれば五本は用意しておきたいね」
「そうだな、一人でも生き残ればみんな回復できるって状況はいいかもしれん」
そんな蘇生ポーションは万能ではないけど、死後一時間以内の蘇生率は100%に近い。探索中に死亡した場合、ダンジョン外にある蘇生所まで運ぶには時間がかかることがほとんどで、蘇生ポーションがあるないでは蘇生率が桁違いに変わる。高レベル高ランクのPTでは人数分の蘇生ポーションは必須ともいえる必需品ではあった。
「さて、明日も早くから探索だ。そろそろ寝るとしよう」
「え、もうそんな時間? ダンジョン内では時間の感覚がわからなくて不便ね」
「見張りはどうしますか? さすがに必要かと」
「二人ずつ、交代で見張りをしよう。組み合わせは、くじ引きがいいかな」
そう言いながら碧はちゃっちゃと紙をちぎってクジを作った。それを袋に入れて、みんな一枚ずつ引いていく。
「書いている番号順な、一番が最初の見張り役で」
僕は二番を引いて、同じ二番を引いたのは恵麻だった。三時間で交代ということなので、テントに入って眠ることにする。テントは男女用で二つ、僕は男用へと入る。
一番を引いた朝陽は最初の見張りなので、僕と碧がテントで眠ることになる。碧は手前で寝ようとしたのだけど、次の見張りが僕で、碧は最後の見張りだということもあり、碧には奥で寝た方がいいと提案した。
「気が利くな、健太、悪いがそうさせてもらうよ」
彼が奥で横になると、すぐにスースーと寝息が聞こえてきた。凄い寝つきの良さに感心しながら、僕も目をつぶる。
しかし、今日は初ダンジョンとは思えないような濃密な探索になったな。あきる野ダンジョンの一階層をちょっと探索するだけの予定が、今や泊りでダンジョン脱出に苦労している状況とは……。
そんな一日を振り返っていたら、いつの間にか眠りについていた。
「健太、交代の時間だ」
そう言いながら脇腹の辺りを軽く蹴られて起こされる。
「うん、わかった。何か問題はあった?」
「いや、静かなもんだ。どうやら本当にここはアンチのようだな」
安全な場所でも、見張りをしないわけにはいかない。僕は朝陽と交代で外へと出た。
すでに恵麻は外の焚火の前でくつろいでいた。コーヒーを飲みながら焚火をじっと見ている。
「健太もコーヒー飲む?」
「うん、貰おうかな」
恵麻は、すでに焚火でお湯を沸かしていたようで、インスタントコーヒーを入れたカップに注いでくれた。
「ミルクと砂糖はどうする?」
「あっ、無しでいいよ、ありがとう」
コーヒーを一口飲んで一息つくと、恵麻がこう話しかけてきた。
「健太はどうしてダンジョンシーカーになろうと思ったの?」
「単純な理由だよ、どうしてもお金が必要だったんだ」
「お金か……私はお金より、やりがいかな。こんな東京になる前には、冒険するなんて夢にも思わなかったし、できるってなったやらずにはいられなかった」
「そっか、だから恵麻は都政府の鑑定士にはならなかったんだ」
「危険もないし、安定を考えたらあっちの方がいいだろうけど、やっぱり私は冒険したい」
「僕が鑑定士の才能があったらぜったいに都政府に努めてたかも」
「どうしてそんなにお金が必要なの?」
「……妹が病気なんだ。難しい病で、お金が凄くかかるんだよ。父親は早くに亡くしてるから、母親と僕が頑張るしかなくて」
「そっか……ごめん、変なこと聞いて」
「いや、いいんだ。PTの仲間にはそのうち話す機会があると思ってたし、別に自分が不幸だなんて思ってないからね」
そう僕が言うと、恵麻は不安な表情から少しのほほ笑みに変わった。
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