第20話 ボス級

この敵がなんなのか恵麻がメルティライナーの知識から答えた。


「アダマンサウルス、レベル370以上の強敵モンスターかと……」

「370だと! おいおい、さすがにやばくないか」

「恵麻! スリープタクトで眠らそう! 無効耐性が無ければボス級にも効果はあるだろ!?」


「ダメ、スリープタクトのスキルはクールタイム中で、あと数分は使えないわ」


どんなスキルや技にもリキャストタイムが設定されている。強力なものほど連続使用できないものだけど、やはりというか確定スリープスキルのクールタイムは長かった。


「嘘だろ、こんなの相手じゃ数分も持つかどうかわからねえぞ」

「私が雷撃で攻撃するわ!」

「いや、理央、まずは残ったアーマーザウルスだ。そっちをかたずけてくれ! アダマンサウルスは俺が引き受ける! 碧は仲間を守って防御に専念してくれ!」


そう言うと朝陽はアダマンサウルスに向かって走り出した。


いくら高レベルでも、巨体でそれほどスピードは速くないと思われた。しかし、それは甘い考えだった。レベル370、それは僕らとのレベル差は膨大で、ちょっと装備が良いくらいで埋められる差ではなかったのだ。


アダマンサウルスの牙の一撃は避けようとする朝陽の肩をかすめる。想像を絶するその一撃は、かすっただけなのに朝陽を10mほどぶっどばす。血が飛び散り、リアルな惨状に血の気が引いていく。


「朝陽!!」


みんなが声を揃えて心配の声をあげる。そんな朝陽は倒れた状態で小さく手を上げて無事を僕たちに知らせた。


その間にも敵の脅威はこちらに向いている。アーマーザウルスが暴れまわりながら突撃してきた。それを碧が盾で受け止める。ずずずと押されながらもなんとか受け止める。


「ライトニングボルト!」


理央の魔法の詠唱が終わり発動する。その一撃でアーマーザウルスは息絶えて消滅した。


残るはアダマンサウルスだが、こちらはアーマーザウルスの百倍は厄介だった。倒れた朝陽に向かってアダマンサウルスは飛び掛かってきた。


僕はとっさに金剛炸裂玉を投げつけていた。レベル370の怪物にこの程度のアイテムが通用するわけないとは思っているが、何とかしたいという一心で行動していた。


金剛炸裂玉はアダマンサウルスの頭部に命中する。確かにダメージはあまり与えられなかったけど、注意をそらすことには成功した。


当然の如く、アダマンサウルスのターゲットは僕に向いた。ギロっと睨み付けられ、首を激しく振りながら、その牙で襲い掛かってきた。


恐怖で動けない僕を守るように碧が間に入ってくる。盾を構えて防御態勢で攻撃を待ち構えた。


ガッと鈍く大きな音が響き、碧が吹き飛ばされていた。そして続けざまに僕にも殺意をぶつけてくる。もう一度、金剛炸裂玉をぶつけようとするが間に合わない。しかし、首元にかぶりつかれる寸前でアダマンサウルスは大きくのけぞった。


見ると恵麻が背中に金剛炸裂玉をぶつけてくれていた。だけど、アダマンサウルスは背中の痛みに少し後退するが、すぐに攻撃意思を取り戻す。


アダマンサウルスは新たな攻撃パターンを見せた。鋭く眼光を光らせて、唸るような仕草で天を仰ぐと、一気に息を吐きだし、白い靄をばらまきはじめた。


その白い靄は凄まじい冷気であった。危険を感じた僕たちは固まって防御態勢に入る。碧が盾で守り、全員が防御していても冷気は僕らの体力を奪っていく。


ヤバい、このままでは全滅だと感じた時、なぜか冷気のブレスは止まった。見ると、朝陽がアダマンサウルスの頭によじ登って、短剣をザクザクと突き刺していた。


アダマンサウルスは頭を振って、朝陽を振り落とそうとする。かなり激しく振り回されて、今にも落ちそうだった。


「朝陽!」

そう僕が叫んだ瞬間、朝陽は頭から振り落とされた。アダマンサウルスはそんな朝陽を捕食しようと迫る。


絶体絶命、そう思った時、希望の声が響いた。


「眠れ!!」


スキルのクールタイムが終わり、スリープタクトを恵麻が振るう。幸いなことにアダマンサウルスには眠り無効耐性は無かった。派手な倒れかたをして地面にひれ伏した。

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