第19話 不意に

嬉しいことに【RRR】軽装鎧には、物理防御アップや体力アップの普通に役にたつ効果も付いていた。運がよくなるだけとなると、自分的にはちょっと微妙だけど、少しだけど強くなれたのは嬉しかった。


「よし、疲れてきたし、次の狩で今日のレベル上げは最後にしようぜ」

「そうだな、疲れて本領を発揮できないで全滅とか避けないといけないから、無理はしないようにしよう」

「ヒマリ、おなかすいた!」

「あっ!」

「どうした、恵麻」

「終わったら、凄くお風呂入りたいって思ったけど、今日は無理だって現実に気が付いた」

「さすがに風呂は無理だな。まあ、地上に帰るまでは我慢しろ」


恵麻をはじめ、理央やヒマリの女性陣は全員、風呂に入れない現実に苦い顔をする。僕も風呂には入りたい派なので共感するけど、朝陽と碧はそれほど気にはしていないようだ。



本日最後の狩として、ターゲットを探し始めて10分くらいの探索で、ほどよい相手が見つかった。そこは広い空間の円形の部屋で二体のアーマーザウルスが徘徊している。


「あれにしよう、さっき倒してるから勝手はわかってるよな」

「俺と朝陽で敵の気を引き付ける。その間に、理央が魔法で一匹を集中的に攻撃して倒してくれ。もう一匹は恵麻のスリープタクトで眠らせて対処しよう。健太とヒマリは後方支援、不測の事態に備えてくれ」


全員が頷いて作戦に同意する。


すぐに作戦が実行に移された。いつものように碧と朝陽が飛び出して敵の気を引き付ける。二匹のアーマーザウルスは狙い通りに二人に向かって攻撃意思を示した。


そんな二人の後ろから、理央は魔法の詠唱に入っている。恵麻は理央のターゲットとは別の個体に向けてスリープタクトを振るう。


「眠れ!!」


睡眠耐性が無効以外の敵を確実に眠らせる、恵麻のスリープタクトが振るわれる。確定睡眠はアーマーザウルスをいとも簡単に眠らせた。さらに【UR】アクセサリーの眠りを付与した相手に猛毒も付与する効果は発揮される。眠ったアーマーザウルスは体の色が変わり、メッセージには毒ダメージが表示される。


5202、5399、4802……──


猛毒のダメージは凄まじかった。連続する経過ダメージ一つ一つが、金剛炸裂玉なんかより数値が大きい。そんな大きな連続ダメージは、高耐久のはずのアーマーザウルスをいとも簡単に倒してしまう。


まさかの理央の詠唱が終わるより先に倒してしまったのには全員が驚く。

「嘘だろ……猛毒強ええな……」

「あれが確定で入るなんてチートだろ」


ざわつく状況のなか、理央の詠唱が完了する。


「ライトニングボルト!」


アーマーザウルスに直撃して雷撃の大ダメージを与える。しかし、瀕死にはするが、一撃で倒すのはやはり無理である。理央は次の魔法の詠唱に入った。この詠唱が終われば戦闘は終わる、みんなそう思ったはずだ。しかし、そんな期待は裏切られる。


地面が急に大きく揺れ始めた。それは時間の経過とともにより大きくなり、立っているのもつらくなる。


「きゃっ!」

「なんだなんだ!」

「気をつけろ! 何か下にいるぞ!」


碧がそう叫んだ瞬間、地面の一部が割れた。そしてそこから巨大な何かが姿を現す。


「やべえ、フロアボスか!?」

各ダンジョンの階層にはおおむねその主となるボスが存在する。そのボスを倒すことで次の階層にいけるようになったりするんだけど、まさかここがボス部屋とは思ってもいなかった。しかし、そんなボス登場説を、恵麻は否定する。


「ボス部屋には報酬の宝箱が出現する特有の方陣があるはず、ここにそれがないから、フロアボスではないと思います」


「じゃああれはなんだ? あれがボスじゃないんだったらなんなんだ」


地面からでてきたのは巨大な恐竜型のモンスターだった。体は光沢のあるエメラルドグリーンの金属質の鱗で覆われている。ティラノサウルスのような肉食竜のような顔つきで、アーマーザウルスとは桁違いの威圧感を発していた。


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