第17話 装甲

新しく鑑定した【RRR】マジックアイテムはスリープタクトといアイテムだった。これは広範囲の敵に確率で眠りを付与するもので、使えるかどうかは確率次第だと思うけど、使用回数は無く無限に使えるのはいいかもしれない。


「恵麻、睡眠効果の確率はわからないの?」

「私の鑑識眼でもわからないから、もしかしたら変動するのかも」

「状況によって効きやすくなったりするってこと?」

「うん、そういう効果もあるから」


スリープタクトは恵麻が持つことになった。これでPTの戦術の幅が広がるだろう。


鑑定休憩もそこそこに、すぐに次のターゲットとなるモンスターを探してダンジョンを探索する。


「いたぞ」

先行して見回っていた朝陽が、静かな声でそう言う。それを聞いてヒマリは無防備に朝陽の下へと駆けて近づき、僕たちはゆっくりとそれにつづいた。


「ヒマリ、バタバタ走るな。気づかれるだろ」

「だって、早くモンスター見たいんだもん」

「別に早く見ても戦闘が有利になるわけじゃねえだろ。逆に先制の機会を失う危険すらあるんだぞ」

「ごめん……次は早歩きする」

落ち込んだように見えるけど、理央に頭をポンとされ、笑顔出たので大丈夫だろう。


「それで、あの敵はなんだ」

「アーマーザウルスね。固い鱗に守られていて、異常に物理防御の高いモンスターよ」

「弱点とかねえのか」

「確かメルティライナーでは雷撃に弱かったかな」

「じゃ、主力火力は理央だな、俺と碧で敵を引き付けて雷撃魔法で攻撃しよう。他のメンバーは理央を守りながら支援してくれ」


全員がその作戦に頷くと、さっそく朝陽が飛び出し、アーマーザウルスの気を引いた。それをフォローするように碧も前に出て盾を構える。


アーマーザウルスは全長10mほどの大きさで、恐竜のステゴサウルスのような見た目をしている。しかし、草食恐竜であるステゴサウルスとは違い、アーマーザウルスの眼光は狂暴なモンスターのそれで、僕たちを見つけると、ギャァアアアと高い声をあげて飛び掛かってきた。


巨体に似合わず、アーマーザウルスの動きは素早い。しかし、そんな素早い攻撃も、回避タンクの朝陽には通用しない。軽く見極めて、噛みつき攻撃をヒョイと避ける。アーマーザウルスは続けざまに尻尾を振って次の攻撃を繰り出すが、それは碧が盾で防いだ。


「ライトニングボルト!!」


アーマーザウルスの攻撃を朝陽と碧が防いでいる間に、理央の雷撃魔法の詠唱が終わった。一本の太い稲妻がアーマーザウルスに脳天から直撃する。稲光のエフェクトがアーマーザウルスを包み、動きを停止させる。そしてメッセージには紫文字で16992の表示、どうやら弱点は合っていたようだ。


「まだ倒せてない! 理央! 次の魔法を!」


すぐに理央は次の魔法の詠唱に入った。しかし、それを邪魔するように理央のすぐ近くに赤いエフェクトが発生する。戦闘中に別の敵が沸くのは最悪の展開の一つだ。全員が緊迫の表情で顔が引きつる。


「うわっ! 敵が沸くよ!」

「理央! 下がって!」


僕は理央と赤いエフェクトの間に割って入る。そして金剛炸裂玉を構えた。湧き出たのはアーマーザウルスだった。巨体が生み出されると、パニックが広がる。


「わわわっ~~」

「どどどっどうするのよ!」


そんな中、恵麻だけは比較的冷静だった。彼女は手に入れたばかりのスリープタクトをアーマーザウルスに向けて振るう。


「眠れ!」


ポワっとピンク色の煙上のエフェクトが発生し、出現したばかりのアーマーザウルスの動きが止まる。そしてその個体はゆっくりとひざを折りながら倒れて眠りについた。


「効いた!」

「おっ、ナイスだ恵麻!」


この隙に理央は最初のアーマーザウルスにとどめを刺す為に呪文の詠唱に入る。碧と朝陽が抑え込んでいる間に、その詠唱は終わり、呪文が発動する。


「ライトニングボルト!」


稲妻の一撃がアーマーザウルスに突き刺さる。二発の弱点属性の強力な攻撃を受けてはさすがの強敵もひとたまりもなかった。アーマーザウルスは天に向かって一声すると、ゆっくりとその場に倒れ消滅する。



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