第3話 作戦会議
とりあえず、連絡先を交換して、その日は解散となった。すぐにでもダンジョンへと行きたい僕としては、予定だけでも決めたかったけど、それは後日、相談するということで話はまとまってしまった。
僕の家は、高円寺にある四畳一間の狭い風呂無しアパートで、家賃三万円と破格の安さに惹かれて借りたボロアパートである。卒業のタイミングで高校の寮を追い出されて引っ越してきたばかりで、部屋には最低限の生活品しか置かれていない。
家を借りた時にかなりの出費をしたので財布の中身は寂しく、今日の夕ご飯は定番のモヤシ炒めと一善のご飯だけであった。それをゆっくりと大事に食べながら、リサイクルショップで購入した激安パソコンでダンジョンについて調べていた。
「あっ、今日のパーティー編成がネットニュースに出てる」
ダンジョン関連のニュースは東京内外で関心のある話題の一つである。どこぞこのパーティーがボスモンスターを討伐したとこか、レイドボスの出現情報とか、レアアイテムのドロップ情報なども報道されている。その中でも新人の情報や新しく編成されたパーティー情報にはみんな興味があるようで、パーティーマッチングが行われる度に大きく報道されていた。
「凄いな、あの会場で戦闘ランクオールSの最強パーティーが誕生したんだ」
俺たち、余り者パーティーが結成された裏では、世間から期待される最強ランクのパーティーが結成されたようだ。
「ちょっと待って、嘘だよね」
さらに驚くことに、その最強PTのニュースに関連付けされて、僕たちのパーティーのニュースまで出ていた。最弱PTも誕生! 温かい目で見守りたい、某掲示板ではPT全滅の時期を予想するスレも立てられ逆に盛り上がりを見せていた。酷い内容だったけど、嘘は書かれていないので怒るに怒れない。
同じようにメンバーたちがニュースを見たのか、パーティー用に作成したチャットルームに書き込みが始まった。
碧:ダンジョンニュースで、俺たちの事が報道されてるぞ
Rio:みたみた、完全に馬鹿にされてるわね
メガネ娘:でも、事実だから言い返せないよね
Rio:確かにね、ほっときゃいいのよ、あんな記事
碧:そうだな、結果で見返せばいい
ヒマリ姫:でも、ヒマリたち弱いから見返せるかな
りあ9:そもそも結果も気にする必要ねえだろ、俺たちは俺たちのペースでやればいいじゃん
碧:確かにそうだけど、言われっぱなしじゃ悔しいだろ
りあ9:俺は悔しくないね、期待されてない方が気が楽ってもんだ
Rio:そうね、そう言う考えもできるわね
メガネ娘:それより、話変わるけど、初ダンジョンの話し合い、ちゃちゃっとしてしまわない? 早くダンジョンに行きたいんだよね
碧:そうだな、俺はいいけど、他のメンバーはどうだ
ヒマリ姫:問題ないよ~
Rio:私もいいわよ
りあ9:俺もいいぜ
僕にとっても願ってもない流れだ、急ぎ返事をする。
健太:僕も大丈夫
碧:よし、全員いいみたいだな、それじゃ、日時から決めるか、早い方がいいよな
りあ9:明日手続して、明後日に潜るでいいんじゃねえか
ヒマリ姫:賛成!
Rio:私もそれでいいわ
健太:僕も早い方がいいから
メガネ娘:私も賛成で
碧:それじゃ、日時はそれで決まりだな。後はダンジョンだけど、あきる野ダンジョンでいいよな
Rio:それしか選択肢ないでしょ
りあ9:だな、俺たちじゃ、下手するとあきる野ダンジョンでも危ないくらいだからな
ダンジョンは、ハクスラ爆発の中心地である秋葉原に近いほど強力なモンスターが出現して難易度が上っていく。手に入る素材やアイテムなどは難易度の高いダンジョンの方がより良い物が手に入るが、僕たちのような最低ランクで低レベルのシーカーでは死にに行くようなもので自殺行為だ。
あきる野ダンジョンは秋葉原から遠いこともあり、出現するモンスターは弱く、ギミックや罠の難易度も低い。レベル1から安全に探索できるダンジョンとして有名なので、確かに最適の場所ではあった。
メガネ娘:あきる野ダンジョンだったら遠いからキャンプになるよね
碧:そうだな、ホテルは高いからな、下手すると赤字だ。キャンプ場でテント泊が現実的だろうな。誰かテント持ってるか?
Rio:昔、貰ったものがいくつかあったはず、シュラフも人数分あるかも
りあ9:ナイスだRio!
電車は東京がこのような状況になっても動いていた。しかし、前ほどの電車の本数はなく、路線によっては全盛期の十分の一ほどに減っているので、区外にいくのは遠出のイメージが強くなっている。
メガネ娘:キャンプ用品はいいとして、武器や防具とかはどうするの?
碧:あきる野ダンジョンの近くに初心者用の露店があったはず、そこで各々最低限の装備を揃えればいいだろう
健太:あっ、初心者用の装備っていくらくらいで揃うかな
碧:ピンキリだろうけど、十万もあればいいんじゃないか?
健太:十万か……痛いな
りあ9:金がないんなら最初は武器だけでいいんじゃねえか?
Rio:そうね、まあ、戦闘は私に任せてもらえば魔法でバンバン倒しちゃうから大丈夫よ
せっかくシーカーになったので、いくら戦闘ランクが低くても仲間に全てを任せるのは嫌だった。やっぱり、ちょっと無理はしても、装備はちゃんと買った方がいいかなと考えていた。
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