河村病院跡 第3話
何か重たいものが棚から落ちたような大きな音だった。その瞬間僕らは驚いてその音の方を一点に見ていたが、落ち着いた大和が話し出した。
「何かが落ちたようだな。どうする。確認しに行く?」
大和問いに優馬が答える。
「行くしかないよな」
僕はまだ心臓が落ち着いていなくて、手も震えたままだったが2人が行くのならと、頷いて答えた。
「左奥の方から聞こえたよな」
「そうだな」
「左奥って何があったっけ?」
「確か何も書いていなかったら、物置にでもなってたんじゃないの?」
「案内図に何も書いていないということは、普通なら僕たちが入ることはできない部屋ってことだね」
「危険かもしれないってことか」
「え? 何で?」
大和は大和だった。
「古い病院なんだから、もしかしたら危ない薬とかが置いてあるかもしれないってことだろ」
「あー、そう言うこと。でも、もう何10年も経っているから大丈夫なんじゃね。もうとっくに腐っているよ」
優馬は頭を抱えていた。僕は苦笑いをするのが精一杯だった。
「でも見に行くしかないんだよな。もし本当に危険な薬品が落ちたのだったら、今すぐにでも逃げないといけないから、何が落ちたのか確かめないとだな」
「よし行こうか!」
優馬は大和を盾にした。
さっきまでは先頭を歩いていたが、ここぞと言うタイミンングで大和に譲った。
僕らは大和を先頭に、紙や瓦礫の散乱している廊下スマホの明かりを頼りにを進んだ。瓦礫が散乱しているから、時々踏んで割れるガラスの音がが今のところ1番怖かった。
そんな廊下を進んで行くと、右の壁に開いたままの2つの扉と正面には閉められた扉があった。
「手前の部屋から見てみようか」
大和が言った。
「そうだな。音の大きさからして、閉まっている扉じゃなさそうだったから、空いている扉だけでいいと思うぞ」
優馬が冷静にそう答えて、僕らは手前の部屋から見ることになった。大和が1番に入り次に優馬、最後に僕が入った。部屋には、ベッドに椅子が散乱していて、大きな壁のような機械がど真ん中に置いてあった。その壁よような機械に隠れて奥にもう1つ部屋があった。その部屋には窓はなく、机と椅子が置いてあるだけだった。この部屋ももちろん紙は散乱している。
「何も転けてないってことはこの部屋じゃないのか」
「じゃあ、隣の部屋か。早く行こ」
今だけは強心臓の大和のような精神力が欲しい。
先頭が大和なのは変わらないまま、僕らは隣の部屋に移った。隣の部屋は物置きのようで、今までで1番荒らされていた。
「埃がやべーな。大和どっかに窓ないか?」
「こっちに1つあるけど、割れているからもうすでに開いている」
「外に風がないから、循環しないな」
河村病院に来るまではずっと上り坂だったから、結構な高さにいる筈なのに外は風が全くなく、怖いくらいに静かだった。
「マスクでも持ってくればよかったね」
「ないときついな」
優馬ともうこの部屋から出ようと話している時、突然大和が叫んだ。
「あった!」
慌てて大和方を見ると、大和は床を指差していた。
「ほら見て! あったよ!」
何があったのかと、大和指差す先を見てみると、そこには『上野一成』と書かれたカルテが落ちていた。
「おい、大和! 絶対にそいつに触るなよ!」
優馬は口を酸っぱくして大和に言っていた。まさか、ネットに書かれている通り、本当にカルテが落ちているとは思ってもいなかった。こう言うときの大和は心配だ。どれだけだ駄目と言っても、駄目なことをしてしまうのが大和の性格だ。本人曰く、我慢しているつもりなのに気がついたら、そんな行動に出てしまっているとか。呪われるのも所詮は噂か作り話だろうけど、持って帰らないに越したことはない。
大和行動に注意しながらこの倉庫を探索していると、大量の紙の入った段ボールがいくつも横たわっていた。そのほとんどは埃に覆われていたが、1つだけほとんど埃の付いていない段ボールがあった。その近くには、壊れた木の棚が置いてあった。
「多分こいつだね」
「みたいだな。幽霊じゃなくてよかったよ」
「幽霊の方が面白かったんじゃね」
「客観的に見ている側ならその方が面白いけど、今だけはそう言うお決まりはいらない」
優馬の意見に大賛成だ。このまま何も起きない方がの僕らにとってはありがたい。大した土産話はできないけど、それはそれで笑い話になると思う。それでいい。その方がいい。
この倉庫の探索が終わって、納得がいっていない大和は2階の捜索を言い出した。「もういいだろう」と僕も優馬も言ったが、大和は納得せずに仕方なく僕らは2階も探索することにした。
この病院は田舎の小さな病院だけど、この村唯一の病院だったから10数人程度なら入院できるように、2階は病室になっていた。2階に上がる階段を登ったら、目の前にはナースステーションがあった。取り敢えずそのナースステーションを覗くと、どことも変わりなく、中は紙やガラスが散乱していた。そんな時だった。優馬が病室が並んでいる廊下をじっと見つめていた。
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