第6話…童貞パパ

小夏:……よーし


れな:ママ?お外でスマホ見てたら危ないよ!め!貸して!


小夏:あー。ごめん。貸すから落とさないでね?


れな:お外でスマホ見てたら車に轢かれちゃうよ?


小夏:ごめんねーれな。じゃあ1回止まってもいい?


れな:どうしてー?


小夏:んー?パパにお手紙書いてるの


れな:なんでお手紙書いてるのー?


小夏:んーとねー。パパのこと大好きだから


れな:れなもパパ大好きー!


小夏:にゃはっ!パパはねー。ママが道路に飛び出した時に助けてくれたんだよ


れな:すごーい!


小夏:他にもー。前のパパにいじめられたーって言ったらまた助けてくれたの


れな:プイキュアみたいだね!


小夏:そうだね!だかられなが助けてーって言ったら、きっと助けてくれるよ


れな:やったーー!!


れな:……あれ?ママ、ボール


小夏:え?…………ちょっ!!


0:子供の目の前でトラックが大きなクラクションを鳴らす


0:小夏は道路に飛び出した子供を突き飛ばしそのまま……


れな:え?……ママ?


れな:………ねえ…ママ?


剛志:(M)小夏はトラックに轢かれた。小夏の細くて華奢な体はその衝撃に耐えられず即死だった


剛志:(M)嵐のような、それでも台風の目の中にいるような静かな日々は、一瞬でいとも簡単に崩れ去ってしまった


剛志:(M)俺は葬儀では泣かなかった。小夏と過ごした日々と夫婦になろうって誓ったばかりなのに死んでいきやがったから。またおちょくられてるようで腹が立っていた


剛志:(M)そして現在では


れな:パパー!お洋服お洗濯しないのー?


剛志:ああ、そこ置いといてくれ


れな:れなもお洗濯手伝うー!


剛志:触んな!また怪我するぞ?


れな:あれ、パパ、ラムネ入れないの?


剛志:ラムネ?


れな:これ


剛志:ああ、洗濯ビーズか。こんなん入ってたっけ?


剛志:(M)俺は洗濯ビーズを開ける


剛志:………


れな:パパ?


剛志:……これは入れない


れな:えー!入れないのー?


剛志:早く着替えろ、服はどこにあんだ?


れな:ここー!


剛志:(M)クローゼットを開ける


剛志:………全部たたまれて収納されてる…


剛志:……これでいいか?


れな:うん!


剛志:………あーあ!ペケモンしよ!


剛志:(M)俺はゲームの電源を付ける


剛志:……あいつ、自分のアカウントでやったままじゃねーか……


剛志:……なんで最初に選んだペケモンの名前がつよしなんだよ…れなも居るし……


剛志:………はあ


剛志:(M)洗面所、トイレ、風呂場、キッチン、テーブル、布団、テレビ


剛志:(M)たった2ヶ月あいつと暮らしてただけでこんなにも形に残ってしまうものなのか


剛志:(M)あいつが、確かにここに居た証だけが残っている。


剛志:(M)もう戻らないとわかっている。けど何故か実感がない。3日前までは確かにここに居たからだ


れな:ねえパパ


剛志:………なんだよ


れな:ママからお手紙もらったの?


剛志:………お手紙?


れな:ママがスマホに書いてたお手紙


剛志:………スマホに?


剛志:(M)俺は小夏のスマホを手に取る。


剛志:(M)事故が起きた日はれながこのスマホを持っていたらしいから綺麗なままで残っている


剛志:………パスワードわかんねー。誕生日じゃねーのかよ…


剛志:………まさか、ペケモンがヒントじゃねーよな?


剛志:(M)俺は24407を入力する


剛志:………開いた


剛志:(M)ホーム画面は小夏とれなの写真だった。あいつは自分の娘をそれはもう呆れるくらいに愛しすぎてる。いい母親だ


剛志:俺の手紙……


剛志:(M)俺はラインを開く。そして俺のトーク画面に行くと


剛志:(M)打ち掛けの長い文章がつらつらと書かれていた


小夏:愛しのダーリンへ。なんちゃってー!気が早すぎか!まとまらなくなりそうだからラインで送るね。あ、ちなみに今のところおちょくってるよー。ってふざけてたら読まれないで既読無視とかされそうだからちゃんと書くね。


小夏:あたしね。実はずるい女なの知ってる?多分うざい女だって思われてるだろうけど、剛志があたしの言うことを何でも聞いてくれる取っておきの言い方を見つけたんだー!それを教えるね


小夏:んー例えば童貞の剛志くん、私とエッチする?っていうと剛志はふざけんなって嫌がるんだけど、夫婦になるために愛を確かめたいから剛志とエッチしたいって言うと剛志はエッチしてくれるんじゃないかなー?


小夏:どう?図星だった?そうなんだよ。理由とこうしたいって言い方をすると剛志は言うこと聞いてくれるんだよ。自分じゃ気付かなかったでしょ?


小夏:だからね、本当に叶えて欲しいことは言わないことにしたの。剛志には子供の時から今までで色んなものを沢山貰ったから、高望みなんてしちゃいけないと思って


小夏:でも、あたしが望んでることを剛志から言ってくれた時は本当に嬉しかったなー。夫婦にならないか?だなんて。あたしはこんなに幸せものでいいのかな?えぇー?どうなの?剛志ー


小夏:まあ、あたしだけが幸せなのもちょっとずるいかなーって思ってるんだ。二人だけが幸せなんてずるいよね。あたし達はれなも一緒に3人ででーーっかい!!幸せを作る事が大事なんだよ


小夏:だからさ、高望みでもいいし、ずるい女って言われてもいい。この願いは剛志にしか叶えられないんだから


小夏:でーーっかい!!幸せを作りたいから童貞パパの剛志とあたしとれな、3人で幸せな家族になりたい。


小夏:泣くことを忘れたれなが幸せすぎて泣いちゃうような、そんな家族になりたい


剛志:…………小夏


剛志:う……うぅぅーー!!


剛志:こんな願い掲げといて…なんで死ぬんだよ!!


剛志:お前のこと…もっと知りたかったよ…お前と…もっと思い出を作りたかったよ……まだこれからだっただろ……


剛志:れなだって居るんだぞ……れなだってきっと寂しがる……


れな:パパ…?


剛志:………れな


れな:どうしたの?お腹すいたの?


剛志:………ちげーよ


れな:眠くなっちゃったの?


剛志:ちげー


れな:おもちゃ無くなっちゃったの?


剛志:ちげーって言ってんだろ!!


れな:………え?


剛志:そんな事で俺が泣くわけねぇだろ!お前はそれで泣くのかよ!!


れな:……れなは、ママに泣いちゃダメって言われたから


剛志:ふざけんな!自分の母親が死んで悲しくねー子供でどうすんだよ!


れな:………


剛志:お前の母親はな!お前が泣かなくなったことに泣いてたんだぞ!悲しくて悔しくて泣いてたんだ!お前の母親は!お前のために泣いてたんだよ!だからお前も母親のために泣いてみろよ!!


れな:………でも、ママが……


剛志:悲しい時は思い切り泣け!楽しい時は思い切り笑え!お前の母親はそうだったじゃねーか!いつだって感情で動くやつだったよ!!


剛志:俺だって悲しいんだよ!お前よりも俺の方があいつと一緒にいた時間は長かったんだよ!だから俺だって泣いてんだよ!!


れな:………パパ…うっ……


剛志:だから…お前も泣けよ!子供らしくママが居ないと生きていけないって泣いてみろよぉぉ!!


れな:……うっ…ううぅ…うえ〜〜〜ん!!ママ〜〜!


0:剛志はれなを抱きしめる


剛志:今は思い切り泣いてもいい。笑うだけが本当の強さじゃねーんだ。泣いた後にそれを乗り越えてお前の母親は……ママは、笑って幸せって言ってくれたんだ


れな:うえ〜〜〜ん!!ママに会いたいよ〜〜!!


剛志:だから……俺もれなも…ママが居ない日々を乗り越えるんだよ。ママにはもう会えねー…俺も……小夏に会いてーよ……


剛志:………小夏…!!


剛志:(M)何をしてもれなは泣かなかった。けど、れなは小夏に会いたくて泣いた


剛志:(M)そんなれなの姿を見たら小夏はなんて言うだろうか?なんて思うのはとんでもなく野暮な事だ


剛志:(M)とにかく今は俺もれなも乗り越えるしかないんだ。辛い日を乗り越えてきた小夏のように


れな:……パパ


剛志:ん?


れな:お布団行きたい


剛志:ああ、泣くと眠くなってくるだろ?


れな:……うん


0:剛志はれなを布団に運ぶ


れな:ねえパパ


剛志:なんだ?


れな:ママがね、パパに会う前にパパはパパって言ってたよ


剛志:はあ?どういう意味だ?


れな:ママと約束したの。ママとれなを幸せにしてくれる人はパパしかいないって。だからパパと一緒に居ようねって


剛志:………当たり前だろ。ママだって言ってたよ。3人ででーっっかい!幸せを作るって。俺とれなでママの分の幸せを作ってやろう


れな:………うん!


0:れなは眠りにつく


剛志:………俺、このままだったら一生童貞だな


剛志:でもまあ、それも悪くはねーかな。なんならなってやるよ


剛志:童貞パパに


0:2ヶ月前、小夏とれなが剛志の家に訪れる前の事


小夏:ねえれな。これから会う人のことはおじさんって呼ぶんだよ


れな:わかったー!おじさんってどんな人なのー?


小夏:んー?どんな人だったっけなー。ママもちょっと会うの怖いんだよね


れな:怖い人なの!?


小夏:ううん。怖くないよ。前のパパみたいな人じゃない。ママが昔好きだった人だしね


れな:そうなんだ!今もママは好きなの?


小夏:うん。好きだよ。きっとね、その人は優しいからママとれなのことも幸せにしてくれるよ。ママとれなを幸せにしてくれるのはその人しか居ない


れな:えー!じゃあさ!ママが幸せそうに笑ったらおじさんの事パパって呼ぶようにするー!


小夏:パパ!?……ああーパパかー。パパねー


れな:パパって呼んだら怒られる?


小夏:いいよ。じゃあママが幸せそうに笑ったらママはその人と結婚してパパになってもらうから、れなはパパって呼んでいいよ


れな:やったー!約束ねー!


小夏:うん。約束だよ。あ、でも今はおじさんって呼ぶんだよ?


れな:わかったー!


小夏:れなはいい子だねーさすがママの子


れな:楽しみ楽しみー!


小夏:楽しみだね。……いつもツンツンしてるし、怒りっぽいし自分勝手な剛志はなってくれるかなー?……きっとなってくれるよね?


小夏:剛志にしかなれない。童貞パパに

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【声劇台本】童貞パパ【男1女2】 ゆる男 @yuruo

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