第4話…失敗
0:1週間が経ったある日
小夏:じゃあ病院行ってくるからお留守番よろしくー
剛志:………
れな:ママー!頑張ってねー!
小夏:うん!いい子にしててねー!
0:小夏は外に出る
剛志:…………全然帰る気ねえだろ…
れな:おじさん!
剛志:な、なんだよ
れな:プイキュアごっこしよー!
剛志:プイキュア?そんなん見たことねえよ
れな:やろー!こうやってやるんだよ!
剛志:お、おい、ソファの上に乗るなよ。危ねーだろ
れな:いくよー?見ててー?もぎたてフレッシュー!ってやるんだよ
剛志:知らねーよ。降りろ、怪我するぞ?
れな:もぎたてフレー!……っ!
剛志:おい!
0:れなはソファから落ちておでこをテーブルにぶつける
剛志:だ、大丈夫か?
れな:………
剛志:や、やべぇちょっと血出てるし腫れてる…
れな:にゃはは〜落ちちゃった〜!
剛志:笑ってる場合か!泣かないだけマシだけど
剛志:とりあえずタオルの上に氷当てて冷やせ
れな:つめたーい!
剛志:これで泣かないのもすごいよな
0:しばらくすると小夏が帰ってくる
小夏:ただいまー
れな:ママー!おかえりー!
小夏:ん?どうした?この傷
剛志:あ、ああ。ごめん。俺が見てたんだけどソファから落ちてテーブルに頭ぶつけちゃったんだ
小夏:れなー?悪さしたの?
れな:にゃはは!!お怪我したんだー!
小夏:にゃははじゃないの
れな:ごめんなさーい!
小夏:ダメだよー?迷惑かけちゃ
剛志:ご、ごめんな。俺が見てたのに
小夏:大丈夫大丈夫。悪さした代償だよ。
剛志:そういや病院で何しに行ったんだ?
小夏:薬もらってきた
剛志:薬?
小夏:ロスに居た時から寝付きが悪くてさ。薬飲まないと寝れないの
剛志:だ、大丈夫か?
小夏:大丈夫じゃなかったら何かしてくれる?
剛志:いや、何もしないけど
小夏:にゃはっ
0:そしてその日の夜
小夏:ねえ剛志
剛志:ん?
小夏:れなも寝たし、晩酌しない?
0:小夏は袋に入ったビールを剛志に差し出す
剛志:おお…気が利くじゃねーか
小夏:じゃーん!もやしナムルも作りました!
剛志:す、すげーな!こんなのも作れるのか
小夏:意外と簡単だよ?
剛志:食っていいか?
小夏:うん。召し上がれ
剛志:う、うめぇ……
小夏:にゃはは!相変わらず美味しそうに食べてくれるね!じゃあビールも開けちゃうよ?
0:小夏は剛志の分のビールを開ける
剛志:あ、ありがとう
小夏:うん。じゃあカンパーイ
0:二人は大きな一口でビールを飲む
小夏:かぁー!たまらん!
剛志:オヤジみたいなことすんな
小夏:晩酌ってなんか憧れてたんだよね
剛志:なんで?
小夏:仲良いみたいじゃん?
剛志:……前の旦那とは晩酌したこと無かったのか?
小夏:したことないね
剛志:……そっか
小夏:……それ以上は何も聞いてくれないの?
剛志:…聞かねーよ。前だっておちょくられたし
小夏:それはごめんね。
剛志:許さん
小夏:あ、そうだ。あたし剛志に謝らないといけないことがあったんだ。二つくらい
剛志:なんだ?
小夏:高校生の頃、剛志に色々言われてさ。勢いでビンタしてごめんね
剛志:あ、ああ。そんなこともあったな
小夏:あれはね、カッとなってビンタしたわけじゃなくて、剛志の言葉が怖くなったの
剛志:……俺の…言葉?
小夏:あの頃は確かに落ちぶれてたし、色々悩んでたし、間違ったことばっかしてた。だから剛志に正論言われることが怖くて、これ以上傷つきたくなくてビンタしたの
剛志:まあ、それはいいよ。俺も言い過ぎたし
小夏:あともう一つはねー。急に居なくなったこと。
剛志:………
小夏:あたしはさ、いつも剛志をからかってたけどね、本当は剛志に彼女が出来たことが寂しかったんだ
剛志:……な、なんでだよ
小夏:にゃは!それ聞くー?
剛志:べ、別に話したくねーならいいよ!
小夏:じゃあ、こういう言い方にするよ。からかってる時はあたしは剛志よりも勝ってる気がしたの
剛志:勝ってるってなんだ?
小夏:なんかね、気持ち的に?
剛志:よくわかんねーよ
小夏:でもそういうことなの。いつも剛志には勝てるって思ってたのに剛志に彼女が出来てなんか負けてる気分になったんだ
小夏:だからあたしは悔しくて、見返したくなったからパパ活して自分の体を汚してまでお金持ちになったら剛志に勝てると思ってた
小夏:……でもさ、そういうことで勝った気になんてなれるわけないよね
剛志:………そりゃあそうだろ。だから落ちぶれたって言ったんだ
小夏:ほんと、その通りだよ。もう剛志に合わせる顔もないと思ってたしね
小夏:ちゃんと高校卒業したけどその後ノリでロス行ったら変な男に捕まって失敗したし。最悪だったよ
剛志:そうだ、なんでロスでそんな男と……
小夏:なんでだろうね?あたしにもわかんない。地位の高い男と結婚して幸せな家庭でも築けたらまた剛志に勝てるかも。なんて思ってたんだよ
剛志:……よくわかんねーよ
小夏:でも、全部失敗しちゃったの。ロスに行ったことも、ろくでもない男と結婚したのも。
剛志:じゃあ…その男と何があったんだ?
小夏:………見る?
剛志:な、何を?
小夏:ほら
剛志:………
剛志:(M)小夏の肩には切り傷のような跡があった
小夏:8針縫った跡だよ
剛志:…………
小夏:あと胸に根性焼きの跡もある
剛志:っ!
小夏:あ、さすがに見せないからね?
剛志:あ、当たり前だろ!
小夏:毎日アザが出来てたし、何回も打撲してた
小夏:なんでこうなったのかはわかんないけど、あたしが1番許せないのは……れなにまで手を出した事
剛志:………
小夏:あたしだけならまだ我慢できた。れなには父親として愛情があると思った。でも……れなにも手を上げて、一生残る傷を付けたの。あたしの大事なれなを傷付けたの
小夏:だからあたしはれなにも強く生きて欲しくてどんなに痛くても悲しいことがあっても泣いちゃダメって教えたんだけど、それも間違いだよね
剛志:………間違い?
小夏:だって、全部我慢させちゃうでしょ?今日怪我した時も泣かなかったんじゃないかな?
剛志:確かに…泣かなかった
小夏:泣きたい時に泣けない子になったら…どうしようって……
小夏:……これってさ。全部あたしのせいなんじゃないかなって思うんだよね
剛志:………なんで?
小夏:勝手に日本から離れて、海外に行って、見た目だけの男と結婚して、れなを生んで、傷付けた
小夏:あたしの人生、失敗だらけだよ……れなを生んだのも……失敗なのかなって……
剛志:それは違うだろ
小夏:………え?
剛志:お前は…娘の前では元気で、か、可愛いママで居たいって言ってたじゃねーか。子供のために笑って、子供のために泣ける母親ってだけで…れなは良い母親に恵まれてるんじゃないか?
小夏:………剛志
剛志:そ、それに!お、俺は!童貞だからよ!女の気持ちとかよくわかんねーし、なんて言ったらいいかわかんねーよ…けど、
剛志:辛かっただろうけど…お前が生きて俺の所に戻ってきてくれて……安心したよ
小夏:………うっ、うぅぅ〜〜!
剛志:な、なな!泣くなって!なんで泣いたんだ!?え!?な、なんで!?
小夏:童貞にはわかんないよ
剛志:っ!またおちょくりやがって
小夏:にゃっはははは!
剛志:ったくよ
小夏:剛志が昔とあんまり変わってなくてよかった
剛志:なんで?
小夏:ううん。なんでもないよ。剛志、あたしが仕事はじめて落ち着くまで、れなとここに居たい
剛志:………勝手にしろよ
剛志:(M)小夏はよく笑う。それは自分の娘の前では良い母親でいたいからだ。
剛志:(M)それでも、小夏は俺の前では泣いた。その意味がどういう事だったかはわからない。でも、あんなに辛い思いをしていた小夏が生きて俺の前に居る
剛志:(M)それだけで、俺は7年間のモヤモヤが解消されたようだった
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