第3話…2ヶ月前のこと

剛志:(M)次の日から、小夏の姿を見ることはなかった


剛志:(M)小夏が住んでいた家の人から聞くと突然いなくなってしまったらしい。小夏の言う通り、小夏のいとこは心配している様子もなかった


剛志:(M)俺は小夏の言葉が頭から離れず、上の空になってしまった。だからすぐに彼女とも別れてしまったのだ


剛志:(M)そして今現在


れな:パパ〜。ジュースこぼしちゃった


剛志:もう何してんだよ。服脱げ


れな:にゃはは!びしょびしょー!


剛志:その笑い方も母親譲りだな


れな:お洋服脱げないー


剛志:はいはい


れな:うんしょ


剛志:………


れな:脱げたー!


剛志:………酷い傷だな


れな:んー?なにがー?


剛志:いや、なんでもない


れな:うん!


剛志:お前、その傷痛くないのか?


れな:これー?痛くないよ。


剛志:何をしたらこんな傷になるんだよ


れな:にゃはは。わかんないけどママが言ってたよ。痛いの痛いの飛んでけーって。だから痛くなくなったんだー


剛志:それで痛みが無くなったら苦労しねえよ。まあいいや、早く着替えろ


れな:うん!


剛志:(M)れながこの家に来たのは2ヶ月前のことだ


剛志:(M)そして、あいつが急に俺の家に押しかけてきたのも2ヶ月前だ


剛志:(M)嵐のような。それでも台風の目の中に居るような静かな日々だった


剛志:(M)2ヶ月前のこと


剛志:よーし!ペケモン全種類捕まえたー!色違いも全部コンプリート!


剛志:はー疲れたー。ん?もう11時か。夜から初めてこの時間ならいい方だろう


剛志:とりあえず仮眠してまたやるかー


剛志:……昔も、こうやってペケモン捕まえてあいつと交換したりしてたっけなー


剛志:あいつが居なくなってからもう7年は経つか。生きてんのかな?


剛志:よくわかんねーけど、もう会うこともなさそうだ


剛志:………もう、会えねぇのかな


0:剛志の家のインターホンが鳴る


剛志:ん?なんだ?こんな時間から


0:剛志は玄関に向かい


剛志:はーい


剛志:……っ!


小夏:にゃは!こんにちわ!


れな:わ!


剛志:……あ、あの、どちら様で?


小夏:久しぶりー!


れな:ぶりー!


剛志:だ、だから!どちら様ですか!?


小夏:えー?髪型も髪色も変わってグラサンかけてるけど声でわからない?


剛志:……え?


小夏:にゃはは!わかってないんかい!


剛志:この…笑い方は……


剛志:小夏!?


小夏:にゃっははははー!!正解ー!


剛志:な、なんでお前がいるんだ!?てかどこに行ってたんだ!?なんだこの子供!?お前なんだその格好!?


小夏:んもう!質問は一つずつお願いします!とりあえず入るね?


剛志:ちょっ!勝手に入んな!


れな:おじゃしまーす!


剛志:誰だよこの子供!


小夏:え?あたしの子供


剛志:は!?


小夏:うーわ、きったなー!なんでカップ麺のゴミが布団の上にあるの!?信じられない!


剛志:いきなり押しかけてきて文句言うな!


れな:きちゃなーい!


剛志:んだよこのガキ!


剛志:おい小夏!とりあえず事の経緯を教えてくれよ。なんで帰ってきたんだ?


小夏:なんで帰ってきたって約束したじゃん?


剛志:や、約束?


小夏:忘れたの!?サイテー!


剛志:そんな昔のことなんて覚えて……あっ!


小夏:思い出した?あたし言ったよね?


小夏:辛くて、どうしても逃げたい時は剛志の所に帰りたいって。だから…


小夏:ただいま。剛志


剛志:………えーー!!!


0:しばらく時間が経つ


小夏:ふぅー!やっと綺麗になったから座れるー


剛志:ほんと失礼なやつだな


小夏:一人暮らしでこんなに散らかってるってことはー。さては剛志、彼女いないなー?


剛志:ほっとけ!


剛志:お前はどうなんだ?急にどっか行って子供作って帰ってきやがって。今までどこに行ってたんだよ


小夏:ロス


剛志:は?どこだよそこ


小夏:えぇ…?知らないの?ロスアンゼルスだよ


剛志:な、なんでそんなとこに!?


小夏:自分探しのためにねー


剛志:こ、高校は?大学は!?


小夏:高卒の資格は持ってるけど大学とかは行ってない


剛志:ま、まあロスの大学とか未知数だからな…


剛志:………てか!その子供は!?


小夏:あーそうそう、挨拶してー?


れな:れなでーす!


小夏:わー!挨拶出来てえらいねー!


れな:れなえらーい!


剛志:本当にお前の子供なのか?


小夏:そうだよ。あたしに似て可愛いんだから


れな:おじさんの家くさーい


剛志:可愛げが無いのも似てるみたいだな


剛志:そ、その…誰との子なんだよ?


小夏:何想像してんの?


剛志:なんも想像してねーよ!早く答えろ!


小夏:んもーわかったよ。れなはね、ロスで会った男と出来た子だよ


剛志:………そうか


小夏:うん。もう別れたけどね


剛志:そ、そうなのか


小夏:……ほんと、ろくでもない男だったよ


剛志:なんでそんな男と……け、結婚したんだよ!


小夏:決まってんじゃん。あたしの見る目がなかっただけだよー


剛志:そんな軽いノリで言うな!


小夏:なんでよ。過ぎたことなんだから考えてもしょうがないでしょ?


小夏:剛志はまだ童貞なの?


剛志:……っ!!う、うるせー!


小夏:へぇー!やっぱ童貞だったんだー


れな:ママー童貞って何ー?


小夏:んー童貞っていうのはー


剛志:やめろ!子供にまで変なこと教えんな!


小夏:ムキになってるー。相変わらずウケるね


剛志:面白くねーわ!ったく!気分わりー!俺は寝るぞ!


れな:おじさーん、遊ぼーよー!


剛志:うるせー!帰れ!


小夏:帰る場所なんてありませーん!


剛志:じゃあどっか行けー!


小夏:もう、釣れない男だなー。れな、ママとお出かけしよっか


れな:うん!


小夏:日本の街を探索しよー!


れな:おー!


0:小夏とれなは外に出る


剛志:ふぅー。これでゆっくり出来る…


剛志:………てか、普通に帰ってきたけどまじで何があったんだ?


剛志:あいつの事だからまたなんかあったんだろうな。全く、面倒なことにならなきゃいいけど


剛志:まあいい。ひとまず寝るとしよう


0:剛志はしばらく眠る


剛志:………っ


れな:わー!おじさんが起きたー!


剛志:へ!?今何時?……なんかいい匂いがする


れな:ママー!おじさんが起きたよー!


小夏:おはよー


剛志:い、今何時!?


小夏:んー?今は夕方の6時だよ?


剛志:ガーーーン!!


小夏:何のガーンなの?


剛志:貴重な休みを徹夜と昼寝で終わらせてしまった……


小夏:いつも休みの日どうしてるのー?どうせ起きたらコンビニとかでご飯買うんでしょ?


剛志:そうだよ。悪いか?こうしちゃいられねぇ。コンビニ行かないと!


小夏:ご飯作っといたよ


剛志:……え?


小夏:カレー作っといたよ。れな用だから甘口だけど


剛志:お、俺の分もか!?


小夏:当たり前じゃん。ただで家に押しかけてるわけじゃないんだし。どうする?食べる?


剛志:う、うん!


小夏:じゃあ待っててねー


れな:ママー!れなもお腹すいたー!


小夏:はいはーい。いい子に待っててねー。おじさんと遊んでて


れな:おじさーん!遊ぼー!!


剛志:な、なんで俺がガキの相手なんかしなきゃいけねーんだよ!


れな:一緒にユーチューブ見よー!


剛志:なんだってんだよ…


0:しばらくすると


小夏:はーい、お待たせー


れな:ご飯だご飯だー!


小夏:れな、ちゃんとおてて拭いてからね?


れな:はーい!


剛志:………


小夏:食べないの?


剛志:い、いただきます!


小夏:うん


剛志:パクっ。………


小夏:………ん?


剛志:う、うめー!


小夏:っ!……にゃは!


剛志:うめーよ!人が作った料理がこんな美味く感じるの久しぶりだ!


小夏:にゃはーん!


剛志:おかわりくれー!


小夏:にゃはは!


剛志:さっきから何笑ってんだよ


小夏:ん?なんかねーにゃはは!


剛志:ん?


小夏:自分で作った料理がおいしいって言われるのって嬉しいことなんだなーって思ったの


剛志:……ま、まあ!昔からお前は料理好きだったもんな


小夏:うん。でもおじさんとおばさんは食べてくれなかったけどね


剛志:……そ、そっか。こんなに美味いのにもったいないな


小夏:……ありがと


剛志:(M)いつも無茶苦茶な小夏だが、何故かその笑顔にはズキンと打たれるように胸が激しく動いた


剛志:(M)そして次の日


小夏:いってらっしゃーい。これ、お弁当ね


剛志:お、おう。ここまでしなくてもいいのに


小夏:なんで?これくらいロスに居た時も普通にやってたよ?


剛志:ち、ちげーよ!そ、その……ふ、夫婦みたいじゃないか!


小夏:えー。じゃあ夫婦になる?


剛志:な、ならねーよ!ふざけんな!


小夏:にゃははーん!いってらっしゃーい


れな:おじさんいってらっしゃーい!


剛志:うるせー!


0:剛志は外に出る


れな:おじさん面白いね


小夏:でしょ?


0:そして夜になる


剛志:ふぅー。今日もあいつらが居るのか……


0:剛志は玄関を開ける


小夏:おかえりー!


れな:おじさんおかえりー!


剛志:た、ただいま


剛志:(M)迷惑だとはいえ、家に帰った時におかえりと言われるのは少しだけ嬉しい気もした


小夏:………れなー?


れな:すぅー。すぅー。


小夏:やーっと寝た


剛志:毎日そうやって寝かせてるのか?


小夏:うん。れなの寝顔可愛いでしょ?


剛志:俺の子じゃないから知らねーよ


小夏:なんでそんな言い方しか出来ないの?これだから童貞は


剛志:うるせー!……あっ


小夏:大丈夫。れなは1回寝るとなかなか起きないからね


剛志:そ、そうなのか


小夏:ねぇ、ゲームしてもいい?


剛志:図々しさは変わらねーなー


小夏:いいじゃん。ロスにいた頃はこんなこと出来なかったし。


小夏:…えぇー!ペケモンアメジストのリメイク版持ってるの!?懐かしいー!


剛志:ああ。絵もなかなか綺麗になってて面白いぞ


小夏:データ消して最初からやっていい?


剛志:ふざけんな!ペケモン全種類集めたデータだぞ!?別アカウント作れば出来るからそれでやれ!


小夏:へぇー!そんなこと出来るんだ〜!


剛志:おう。それでやってもいいぞ


小夏:わあー!すごーい!


0:しばらくゲームで遊ぶ


小夏:はあー面白かったー


剛志:俺よりはまだ下手だな


小夏:そりゃそうだよ剛志みたいに休みの前の日に徹夜でゲームなんてする暇ないもん


剛志:それ言われたら何も文句言えねーわ


小夏:ママ歴4年目だからねー


剛志:前の…旦那とは何があったんだ?


小夏:なんで?


剛志:だって、辛くなったら俺のとこに戻ってくるって言う割には7年も経ってるし。何かあったから戻ってきたんだろ?


小夏:うーん。そうだね。こんなこと言ったら怒るかもしれないけど


小夏:……また死にたくなっちゃった


剛志:は、はあ!?おいおい、子供もいるのにそんな簡単に言うなよ


小夏:そんな簡単って?


剛志:………


小夏:そりゃあれなが起きてるうちは元気で可愛いママで居たいよ。子供は親の姿を見て育つもん


剛志:……ああ。そうだな


小夏:でも、れなが寝た時の夜は一人の人間だからね。色々考えちゃうの


剛志:………何があったんだ?


小夏:………気になる?


剛志:……気になるだろ


小夏:じゃあ、あたしとエッチする?


剛志:………ふ、ふざけんな!!


小夏:あ、ちょっと、そこまで大声出したられなが起きちゃうよ


剛志:お前は俺をおちょくるために帰ってきたのか?


小夏:そ、そんなわけないでしょ。ごめんって


剛志:……はあ


小夏:本気で怒ってる?


剛志:怒るに決まってるだろ。俺はずっとお前を心配してたんだぞ


小夏:………そうだよね。ごめん


剛志:もういい。心配して損した。お前いつまでここにいるつもりだ?


小夏:あ、そこは安心して。ちゃんとあたしも働くし、れなだって保育園に預ける予定だから。


剛志:だから!いつまでいるんだ!?


小夏:え?んーーー。ずっと?


剛志:ふざ!!……ふざけんな。なんでずっといる予定なんだよ!


小夏:ダメなの?


剛志:ダメだろ!倫理的に!


小夏:じゃあ合理的に?


剛志:わけわかんねーこと言うな!


剛志:お前な、これ以上ふざけたこと言うなよ?何も話せないなら俺の所に帰ってくるな


小夏:………そだね。じゃああたしは寝るね


剛志:………


剛志:(M)小夏はそのままれなと同じ布団で眠る


剛志:(M)普段から本気なのか冗談なのかわからない言動に童貞の俺はどこまでも振り回されていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る