「ゲド!」ふたつの声はひとつだった。(ゲド戦記 Ⅰ 影との戦い/ル=グウィン)
さて、引き続き回答していきますかね。
Q14:あなたが一番好きなゲームは何ですか?
A14:
これはもう、モンスターハンターですね。
私は中一のときに親からゲームを解禁されたのですが、モンハンに出会ったのは中学三年生の時でした。
友人が「飽きたからこれやるよ」みたいな軽いノリでモンハン3Gを(なんとタダで)くれまして。その当時わたくしが持っていたハードはNintendo 3DS、ソフトはマリオカート7とニュースーパーマリオブラザーズ2、あとはスーパーマリオ3Dとマリオシリーズばっかりでした。モンハンも体験版はやってたんですけど、なかなかうまくやれねえなあくらいでした。
で、いざ3Gをやり始めたら……もう、ずっぽしハマっちゃいましたよ。武器やスキル構成もそうですけど、戦術も自分なりにいろいろ工夫しましてね。今思えば天性の縛りプレイヤーでした。マリカー7時代も「わざと最後尾からスタートする」「特定のアイテムはすぐに捨てる」みたいな縛りを自分でやってましたから。
X、XXはやってないんですよね……。Xのティザーを見た当時の自分は「こんなファンタジーはモンハンじゃねえ!」って尖ってましたので。大学時代、コロナ禍で暇になってMHW:IBとPS4を購入してからは、また狩人に転職しました。
ちなみに愛用の武器種はチャアク、ヘビィ、スラアクです。わかりやすいロマン主義。
Q15:あなたが一番好きな芸術家は誰ですか?
A15:
芸術家……というと画家、彫刻家、建築家など大変なことになってしまいますので、画家で絞らせていただきます。が、それでもジャンルごとに何人か挙げさせてください。許してください。
<宗教画編>
・ミケランジェロ・メリージ
通称カラヴァッジョ。わたくしが大学時代に研究していた16世紀末~17世紀の画家です。彼の描法は当時では非常に画期的だったのですが、その粗暴な性格も相まってなかなか画家界隈では理解してもらえなかったんですね。
すごくざっくり言うと、それまでは理論とか伝統的な技術を重視していました。で、その中でもラファエロ・サンツィオの技法がすごくもてはやされていたんです。ルネサンスってやつです。で、カラヴァッジョが生きていた時代はラファエロの100年近く後でして、当時のラファエロポジにあったのがアンニーバレ・カラッチでした。彼が中心となって、古典主義絵画、ようは理論とかルールに則った絵画の潮流が生まれたんですね。
で、カラヴァッジョはその古典主義とは対照的に、眼に見えたもののみを、美醜を問わずカンヴァスに描き出すという方法をとっていました。しかも、暗室に一筋の光が差し込むような光の表現を描いておりましたので、非常にドラマチックな明暗対比が生まれ、まるで間近で舞台芸術を見ているような気分になるんですね。この技法はルミニスムとか、キアロスクーロなんて呼ばれてます。
これらは古典主義の伝統とか理論とかいうものをすべて無視して、眼に見える世界=自然の世界とドラマチックな光=装飾性(ここは語弊があるかもしれませんが)を統合したまったく新しい技法だったわけです。これが非常に心を打つんですね。本物を見た機会はまだまだ少ないので、若いうちにイタリアに行って彼の作品を巡礼したいものです。
で、その技術ですが、新しいものが敬遠されるのはどの時代も変わりません。中には新規性に好奇心を抱くパトロンもいたようですが。
彼について語るにあたり、その粗暴な人格がしばしば取りざたされますが、常軌を逸した性格と天才はある種セットのようなものですので、私は特に気にしておりません。むしろ、その天才性と異常性の坩堝で爆発的に生きた刹那の人間として、わたくしはカラヴァッジョをとらえております。
ここ最近、カラヴァッジョが再注目されているようで非常に嬉しい限りです。先日、福岡市美術館で開催されていた「永遠の都 ローマ」展に行ってきまして、カラヴァッジョの「洗礼者聖ヨハネ」を見てきました。あの質感はやはり素晴らしいですね。
代表作を時系列順にちょっと挙げておきましょうか。ウィキペディアで見れますよ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B1%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%B8%E3%82%AA )。
「バッカス」(1595年)
「聖マタイの召命」(1600年)
「ロレートの聖母」(1604年)
「キリストの鞭打ち」(1607年)
「洗礼者聖ヨハネの斬首」(1608年)
<風景画編>
・カミーユ・コロー
フランスの風景画家です。フランス絵画、なんていうと、多くの人が「印象派」とか「モネ」「ルノワール」なんて答えることでしょう。別にそれが悪いとは思いません。確かに印象派は非常に明快で分かりやすい絵が多いですし、淡い色使いの中に光が満ちているようで、見ていて非常に穏やかな気分になれます。
しかし、自然を描くのであれば、理想的な自然の姿だけでなく、人の営みとの中で、たまに牙をむく姿も描いているほうが、よっぽど自然と向き合っているように思います。
コローは印象派が活躍する直前の19世紀中ごろの画家です。人物画もよい作品が多いですが、やはり一番は風景画ですね。ありふれた風景と、その中に生きるふつうの人々の暮らし。こういった何気ない世界の中に、幸福は潜んでいる……そんな気持ちになります。その意味では、イギリスのジョン・コンスタブルも同じようなベクトルで好きな風景画家です。
いくつか代表作を挙げておきましょうかね。ロンドン・ナショナル・ギャラリーのHPで見れるものです(https://www.nationalgallery.org.uk/artists/jean-baptiste-camille-corot )。
「湿地の牛たち(Cows in a Marshy Landscape)」(1860~70年代)
「洪水(A Flood)」(1870~75年頃)
「パリュエルの思い出(Souvenir of Palluel)」(1871年)
<日本画編>
・渡辺省亭
日本画、というと、浮世絵ですとか、源氏物語絵巻のようなやまと絵、あるいは藤田嗣治のような洋画家を思い浮かべる人が多いでしょう。渡辺省亭は、日本が開国して近代国家の仲間入りをする激動の時代に生きた、まさに「埋もれた画家」と言って間違いはないと思います。
国策としての絵画、という潮流ができる前から絵をかいていたので、明治初期にはすでにベテランでした。書道の経験と肉筆浮世絵の技法が混ざり合った闊達で色彩豊かな絵は海外受けがよかったらしく、1877年のパリ万博に出品するほどだったようです。で、その時に印象派と交流があったようで(先ほど印象派をちょっと悪く言ってしまったのでこれは皮肉なものですが)、そこで西洋の写実的な絵画技法を自らに取り入れ、帰国後は当時の人の目と感性からすると新鮮でお洒落な作品を作り続けたようです。
渡辺省亭の作品といえば、やはり花鳥画でしょう。緩急豊かな筆さばきと、繊細な色彩が綾なす穏やかな生き物たちの世界は、見ていて非常にほっこりします。花鳥画というと、伊藤若冲の動植綵絵を思い浮かべる人もいるかもしれません。若冲は「いずれ死にゆく生命」を「自身の技術の研究」とともに迫力満点な極彩色で描くのに対し、省亭は「今を生きる生命の温かみ」を描いている、と言って間違いではないと思います。
さて、これも作品をいくつかご紹介しますかね。Wikimediaにいい画像集がありました(https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Watanabe_Sh%C5%8Dtei?uselang=ja )。省亭の作品は結構海外の美術館が持ってるので、そこからアーカイブができているようですね。余談ですが、日本はネット上の美術アーカイブが少ない……。あるのかもしれませんが、わたくしは有効なものを見つけられていません。
「花鳥画譜」:メトロポリタン美術館のHP(https://www.metmuseum.org/art/collection/search/78816)でたくさん見れます。
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Q16:あなたが一番好きな動物は何ですか?
A16:
お馬さん(この場合競走馬を指す)が好きです。あの山脈のようなバッキバキの肉体と、つぶらな瞳や表情豊かなお耳のギャップに挟まれて死んでしまいます。そういえば前々回くらいに好きな競馬のレースを挙げましたが、もうひとつくらい貼っておきますね。
2021年、菊花賞(https://youtu.be/mGakvpq9Khk?si=n8c-O-hRmH8fGBdb)。夏の終わりに亡くなった二冠馬の父・ドゥラメンテに捧げるタイトルホルダーの逃げのレースです。このレースの見どころは、競馬のブラッドスポーツという一面が強調されていること。もちろんドゥラメンテからタイトルホルダーへの血統のバトンもありますが、騎手が採った戦法にも血のドラマがありました。
このレースではタイトルホルダーと横山武史騎手がミドルペース―スローペース―ハイペースというリズミカルな逃げの手を打って、23年ぶりに見事に逃げ切り勝ちを果たしたのですが、この戦法は1998年の菊花賞にてセイウンスカイで勝利した父・横山典弘騎手が採用していたもの(ちなみにこのときは38年ぶりの逃げ切り勝ち)だったんですね。あ、ついでにこのレースもリンクを貼っておきましょう(https://youtu.be/c07-xfxt8OQ?si=jl-LlakuyCusn_UZ)。
Q17:あなたが一番好きな植物は何ですか?
A17:
むずかしい質問ですね、なかなか考えたことがないなあ……。
強いて一番を挙げるならば、梅でしょうか。それも白梅。桜より一足先に丸みを帯びた可愛らしい花を咲かせてくれますので、電車の車窓とか、散歩道で見かけると「おっ、春が近づいてきたな」という気持ちになります。紅梅もいいでんすがね、白梅の花の厚みのある白といいますか、小柄ながら存在感を放つ温かい白色がいいんですよ。
桜は春真っ盛りに一際美しく咲いてくれますが、梅はその桜に先んじて春の兆しを感じさせてくれるという点で非常に好きです。
Q18:あなたが一番好きな小説家は誰ですか?
A19:
サマセット・モームです。この場合翻訳が良質だったのも影響しているかもしれませんが。モームの良さは、人間の心を清澄に見つめて機微をやや含みを持って描き出す広がりのある読み味と、ウィットに富んだ登場人物たちの発言、そしてなにより抵抗感の少ない軽い雰囲気にあります。
最初に読んだのは大学時代、研究室の教授から勧められた『月と六ペンス』でした。この本はフランスの画家ゴーギャンをモデルにしているのですが、ただ画家の一生を追うだけでなく、人と芸術の深いかかわりを描き出しています。
ネタバレになるので詳細は避けますが、その画家がなぜ絵筆を執ったのか、なぜ絵じゃないとだめなのか、周りの人間がなぜ彼に引き付けられたのか、なぜかれは南の島へ渡ったのか……。芸術と魂の共鳴が生み出すヒューマンドラマは読んでいて非常にしみじみと染み渡るんですね。
とはいえモームを原書で味わったことはないので、いずれ原書で読んでみたいものです。
ちなみに原書で読んで一番好きだったのはバージェスの『時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)』でした。スラングまみれで非常に読むのに苦労しましたが、あの世界観の独特な雰囲気が見事に文面から醸成されていましたね。
わかってはいましたが、やはり長くなってしまいますね。
さて、わたくしが回答できるものも残り少ないですから、次回で完結としましょうか。
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