第24話

 オレフィスとレイブン、ユーフェリスとイーリスがそれぞれ火花を散らしあっている中、カタリナもその例にもれずその感情をイライラで満たしていた。

 ある日の事、彼女は勇気を出して自身が恋するカサル教皇に、二人でともに出かける誘いをしたのだった。しかし教皇からは好意的な返事をもらうことができず、二人のデートが実現するのはまだ先の事となった。

 それだけならよかったものの、カサルが自分の誘いを断った裏には、すでにエレーナにかかわる別の約束があったからだとカタリナは後から知った。それを知った彼女は…。


「(本当にあり得ない…。カサル様、どうしてあんな女と一緒にいることを望まれるの…。絶対に私の方がエレーナなんかよりも上じゃない…。どうせエレーナがカサル様の事を誘惑でもしたんでしょうけど、ほんと気に入らない…)」


 エレーナに対する怒りの感情を湧き上がらせ、その思いを使用人にぶつけるのだった。


――――


 そして当のカサル教皇の方はというと…。


「わ、わかりましたよエディン様!!!エレーナ様に宿る女神の力の正体が!!」


 カサルは大慌てでエディンのもとを訪れた。自身の愛するエレーナの事となると、普段冷静な彼もこのように感情をあらわにする様子。


「お、落ち着いてくださいカサル様、そんなに慌てずとも…」

「エ、エディン様には一番にお伝えしなければと思いましたので…!」

「私に?エレーナではなく?」

「いきなりご本人に伝えても、かえってよくないのではないかと考えまして…」

「た、確かに…。(今のエレーナに力の存在を明かしたら、また暴走してしまうかもしれないし…)」

「力の正体が判明したのは突然の事でした…。我が協会のシスターたちが古い聖伝書を読んでいたところ、その力に関する記述が見つかったとのことで…」


 …説明しておくと、シスターたちは決してエレーナに味方をするためにやったわけではなかった。カタリナがカサルに近づく目論見を立てているという噂を聞きつけた彼女たちが、カタリナの思惑を打ち砕くためのヒントとして見つけ出してきたものだった。エレーナが女神の生まれ変わりであることはカサルの宣言から明らかであるため、その力の正体がわかり利用することができたなら、自分たちが慕うカサルをカタリナから守れるのではないかと考えたのだった。


「そ、それでエレーナの力というのは…?」

「ずばり、【愛の女神】の力で間違いないかと!」

「あ、【愛の女神】…??」

「文字通り、彼女が心から味方した存在が敗北しなくなるという力のようです。まだまだ分からないこともありますが、これは確かかと…!!」

「う、うそだろ…」


 …かつて自分たちが冗談で言っていたことがまさか事実であったことに、エディンは驚きを隠せない…。


「(ま、まさかルークとふざけて言い合っていた話が現実に…)」

「現在、第二王宮が不安定な状況にあるという話…。おそらくエレーナがいなくなったことで、愛情関係が崩れていったのだと思われます。これまで全く相手にしていなかったイーリスを突然婚約者にした当たり、相当愛情に飢えているのでしょう」

「なるほど…。エレーナが王宮に戻れば元通りの状態に戻りそうですけれど、オレフィス様がそんなことをするとま思えませんねぇ」

「もうかなり深刻な状態になっているらしいですし、後の祭りになるかも…」

「…これ以上は、王宮にはかかわらないほうがよさそうですねぇ…。どうせ

崩壊していくだけなら、触らぬ神に祟りなし…」

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