第11話
「お兄様!カサル様を教皇の座から降ろされるというのは本当なのですか!?」
誰の目にも明らかに分かるほどの怒りの感情を宿しながら、カタリナはオレフィスに詰め寄った。
「あぁ、そうだけれど…。それがどうかした?」
カサルの存在を処分することになんの感情も抱いていないオレフィスは、静かにそう言葉を返した。それが一層、カタリナには腹立たしかった様子…。
「(なんでよなんでよ!!私はずーーーっとカサル様の事が好きだったのに、なんで追い出しちゃうのよ!!!)」
…そう、カタリナは以前からカサル教皇の事を好いていた。そして彼との関係を実現するために、第二王子である兄に必要以上にすり寄って権力を手にしようとしていたのだった。
「(ま、まさかこのまま処刑されちゃったりしないわよね……?もしもそんなことになったなら……)」
カタリナはすでにその脳裏に、この一件の犯人の姿をとらえていた。間違いなくこの一件は、義姉のイーリスによって引き起こされたのだろうと…。
「…お兄様、どうしてもお兄様にしか頼めないお願いがありますの…。叶えてはいただけませんか…?」
カタリナは愛らしい口調でそう言葉を発しながら、オレフィスのもとにすり寄り体を寄せる。それまではあまり乗り気には見えなかったオレフィスも、近づく彼女の姿を見てやや嬉しそうな表情を浮かべた。
「な、なんだい急に…。あ、あまりくっつかれると恥ずかしいな…」
「お兄様、カサル教皇様の事をお許しいただきたいのです…。彼がいったいどんな罪を犯したのかは知りませんけれど、それでも私にとって彼は特別なお方なのです…。お兄様、お願いいたします…」
最近はあまりカタリナに愛情を向けてはいなかったオレフィスだったものの、上目遣いにそう言葉をこぼす彼女の姿は、彼の心に突き刺さった様子…。
「わ、分かったとも!カタリナにそこまで頼まれたら、断るわけにはいかない!僕の一存で彼は許してやることにしようじゃないか!」
…イーリスとの約束などすっかり忘れてしまったかのように、オレフィスは流されるままにカタリナの言葉を受け入れてしまう。それを聞いたカタリナは心底嬉しそうな表情を浮かべ、さらに強くオレフィスの腕に抱き着いてみせた。
「ありがとうございますお兄様!!やっぱり私の気持ちを一番理解してくださるのは、お兄様をおいて他にはいません!!大好きですわ!!」
「へっへっへ♪それほどでも~」
すっかり上機嫌になったオレフィスは、この判断が後にもたらす事になる大きな悲劇など、この時は知る由もないのだった…。
「(ピンチをこの私が助けたという事になったら、間違いなくカサル様の心は私のもとに向けられるはず!!しかもこれでイーリスの思惑は消し去ることができた上に、お兄様の心も私のもとに取り戻すことができた!なんて順調なのかしら!)」
カタリナからすれば、イーリスに仕返しをしたうえでカサルとの関係を深いものにし、さらに第二王子の心をつかむことができる。まさにこの上なく心地のよい状態だった。
「(イーリス……。あなたがお兄様から愛想を尽かされて追い出されることになるのは、そう遠くはありませんわ。エレーナの時と同じように、徹底的にいじめ抜いて差し上げましょう♪)」
…エレーナの去った後の第二王宮は、ますます混とんとしていくのだった…。
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