第4話
「(今までは私がお兄様にねだればなんでも手に入った…。それなのにどうして…)」
カタリナは自室でそう自問自答していた。エレーナとの婚約破棄だけならまだしも、こうも突然にオレフィスが新しい婚約相手を見つけてきたことが、どうにもうけいれられなかった。
「(これじゃまるで当てつけじゃない…。私の事をなによりも優先してくれていたお兄様が、まさかこんなことを…)」
勝ち誇ったようなイーリスの表情が、日が経ったいまだに脳裏によみがえる。カタリナはこれまでにない危機感を抱かずにはいられなかった。
「(…第二王子の権力をあんな女に渡してなるものですか…。お兄様に最も愛される存在は、私でないといけないのだから…!)」
――――
一方でオレフィスとイーリスは、第二王宮の王室にてその距離を縮めていた。
「まさか君のような美しい女性と婚約を果たせるとは…!いやいや、エレーナとの婚約なんて切り捨てて大正解だったとも!」
「そう言われると、なんだか彼女に申し訳ないですわねぇ」
「君が気にすることじゃないさ!」
体を密着させ、お互いの体温を感じあう二人。はたから見れば仲睦まじい男女の姿であるものの、そう思っているのはオレフィスだけの様子…。
「(こんな簡単に第二王子の妃になれるだなんて♪それだけ幼馴染の属性は彼に刺さったのかしら?)」
イーリスはオレフィスとは幼馴染の関係にあたり、以前からその距離は近かった。彼女はこれまでに何度か、オレフィスの権力目当てに誘惑を図ったことがあったものの、どれもうまくはいかずに失敗していた。しかし今回は突然、それが成功してしまった形。
成功した喜びから、彼女はその理由を深くは考えなかったものの、そこには女神エレーナを追放したことが大きくかかわっているのだった…。
――――
「オレフィスのやつ、エレーナとの婚約を破棄したうえ、王宮から追放しただと!?」
大きな声がこだましたのは、オレフィス第二王子の兄であるレイブン第一王子のいる第一王宮だった。
「あいつ、自分から女神との婚約を結ぶと言っていたくせに、なにを自分勝手なことを…!」
エレーナとの婚約はもともと、レイブンが結ぶ予定であった。しかし女神の力に目を付けたオレフィスが二人に横やりを入れ、半ば脅迫めいた手段をとることで婚約関係を結ぶに至っていた。…しかしオレフィスはイーリスの誘惑に乗る形で婚約者を乗り換え、その果てにエレーナの事を追放までしてしまった。その事実を知ったレイブンが声を上げるのは、当然の事だった。
「い、急いでエレーナを探し出して呼び戻すのだ!彼女と王宮の関係が冷え切ってしまったら、それこそ大変なことに…!」
聡明であるがゆえに、女神の力をよく知るレイブンは弟の鼓動に焦らずにはいられなかった…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます