第16話第七章へと…
本日は少しだけ不穏なお話と先に銘打っておく。
いつだったか僕は脳が二つになったような錯覚を覚えて作業に集中していたことがあった。
それが今に繋がるとは思ってもいなかった。
家事に作業に…
全ての事を愛おしい真名とお腹の子を想って行っているのだが…。
最近は少し脳疲労が激しい気がしていた。
作業の時は画家としての脳を使い。
家事の時は夫として父親として一人の男としての脳を使い分けていた。
もしかしたら二つの脳を使い分けているのが悪かったのかもしれない。
とにかく身体は疲れていないのに疲労感を酷く感じていた。
何がどうしてこんなに疲れているのか自分ではわからない。
とにかく日中から眠い日々を過ごしていた。
だがしかし僕は自分に言い聞かせていた。
世間の大概の親だって仕事と家事と育児を全て同時並行して行っているのだ。
僕だけが特別なことをしているわけではない。
それなので今感じている脳疲労を言い訳に休むのは甘えのような気がしていたのだ。
でも休める時は休まないといけない。
そうでないと…
自らの身体や精神を壊すことになる。
それを心の奥底では理解していながら…
それでも僕は自らに鞭を打って何もかもを一人でやろうとしていたのであった。
自らの異変に気づいたのは…
記憶が断片的になった事に気付き出したのがキッカケだ。
どうしても思い出せない記憶が所々で存在していた。
記憶力が落ちたのかと思ったのだが…
どうやらそうではないらしい。
存在しない空白の記憶。
何があったのか?
僕は理解できずにいた。
それでも僕が出来ることを毎日行って…。
真名の出産予定日が近付いて。
僕らの緊張感は限界まで達していただろう。
真名は相変わらずナーバスになることもあったが僕はいつだって話に付き合っていた。
別にこの事に不満はないし疲労も感じない。
真名に生かされてきた僕は彼女に恩返しをしないといけないのだ。
そんな風に自らに言い聞かせて…
真名はついに産気付き…
僕と真名はタクシーで病院へと向かう。
真名は数時間の苦しい時間を過ごし…
元気な男の子を出産した。
「おめでとう。よく頑張ってくれたね」
僕は真名に笑顔を向けて彼女も嬉しそうに生まれたての子供を抱いていた。
「名前は考えた?」
真名は僕に問いかけてきて半紙に筆で書いた名前を見せた。
「
半紙の文字を見た真名は嬉しそうに微笑むと了承するように返事をくれる。
「いい名前だね」
「うん。心静かに暮らしてほしいって意味で…」
「そうだね。どんな事があっても穏やかな子でいてほしいね」
「うん」
そうして真名と静はそこから暫くの間、入院して退院となる。
僕は久しぶりに一人の家で過ごすことになる。
真名がいない日々を過ごしていき緊張や責任感の糸が切れたのか…
僕は意識を失い倒れることになる。
それを発見したのは慶秋と姉の咲だった。
連絡をしても返事がないことを気掛かりに思った真名が二人にお願いしたようだ。
僕は緊急搬送されて…
目が覚める。
そして…
自分が何者か思い出せないのであった…。
次回以降。
第七章へと…。
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