第13話テレビ収録と懐かしい顔

「多田亮平。世界を代表する画家へ!

幸運にもチケット当選した記者が明かした海外美術館での個展の全貌!

海外でも特別な待遇を受けている多田亮平の秘密に迫る!」



「関係者が明かす。多田亮平はあの多田家の一員!?

それを抜きにしても納得の個展内容に海外現地人も騒然!?」



そんな記事をスマホで目にしながら僕は現在テレビ局の控室で待ち時間を過ごしていた。

唐突に控室のドアがノックされて僕は応答する。

ドアの前に立っていたのは懐かしい顔だった。


「お久しぶりです。私を覚えていますか?」


そこに立っていたのは多田家お抱えの記者である不破雪菜だった。


「本当にお久しぶりですね。お元気でしたか?」


「はい。亮平様のご活躍は拝見させて頂いておりました」


「そうですか。そんなにかしこまらないでください」


「いえいえ。多田家の一員になられたのですから…」


「それでも…」


「それでも…なのですよ」


「そうですか。それで今日は?」


「はい。テレビ収録に呼ばれたということなので…

私をマネージャーのように扱ってください」


「それも多田の指示ですか?」


「もちろんです。それに亮平様に失礼があった場合は私が止めますからご安心を」


「わかりました。ありがとうございます」


「いえいえ。何なりと申し付けください」


「とりあえず緊張しているからほぐしてもらっても良いですか…」


僕は苦笑とともにその様なジョークを口にすると不破雪菜はそこから本当に僕の緊張を解すようなトークを繰り広げてくれるのであった。



「それでは多田亮平様。お時間ですのでスタンバイよろしくお願いします」


テレビ局のスタッフに呼ぶ出だされる形で僕らはスタジオへと入っていく。


「多田亮平です。よろしくお願いします」


スタジオの面々に挨拶をすると僕はゲスト席でスタンバイをしていた。



「それでは今夜も始まりました…」


司会進行の芸能人ががなっており僕は少しの緊張を感じていた。


「本日のゲストは世界的画家の多田亮平さんです!」


そうして僕にスポットライトが当たり…

そこから収録は始まるのであった。



散々質問をされて僕はそれを一つずつ丁寧に答えていった。

僕が真名に話したことのあるような内容だったため割愛するのだが…


どの様な経緯で画家を目指すようになったのか?

芸大には通っているのか?

仲の良い画家はいるのか?


その様な内容の質問に僕は丁寧に応えるだけの仕事だった。

本日の収録が終了すると僕は不破雪菜の運転で多田家へと連れて行かれる。

多田家のお祖父様とお父様に本日の収録内容を口にしていた不破雪菜の報告を二人はウンウンと頷いて聞いていた。


「報告ご苦労。では亮平だけ残ってもらう。雪菜は退室して良いぞ」


「はっ。また何かあれば申し付けください」


そうして不破雪菜は深く頭を下げると部屋から出ていく。


「それでだな。真名の様子はどうだ?」


お父様は心配そうな表情で尋ねてくるので僕は苦笑するように…

しかし安心してもらうように応えた。


「はい。しっかりと栄養を取って休める時に休んでもらっています。

普段は僕が家事をやるようにしていますし…

今のところは激しい負担はないかと…」


「そうか。心配する気持ちも分かってくれるだろ?

一人娘なんだ…

それに将来多田を継ぐものだからな…

分かってくれるな?」


「はい。それは十分に理解しているつもりです」


「そうか。それならば良いのだ。

安心したら…疲れがどっと訪れてきたな…」


「心配で眠れていなかったんですか?」


「そう見えるか?」


「はい…」


「そうだな。それに仕事の方も忙しくてな…

少し疲れたので本日はもう休む。

亮平も帰って真名を助けてやってくれ」


「了解しました。それでは失礼します」


深く頭を下げると僕は多田家を後にする。

家の外では不破雪菜が待っており僕に車に乗るように言った。

僕を乗せた車はアトリエまで無事に送り届けてくれる。


「今日はありがとうございました」


「いえ。また何かあれば」


「はい。では」


そんな簡単な挨拶をすると僕は自宅に入っていく。

真名はリビングのソファで横になっており少しだけ体調が悪そうだった。


「ただいま。大丈夫?」


「おかえり。うん。大丈夫だけど…水飲みたいかも」


「わかった。すぐに持ってくるよ」


「ありがとう」


僕は冷蔵庫から水の入ったペットボトルを持って真名の下まで向かう。


「どうぞ。それと夕食は何が食べたい?」


「ありがとう…なんだろう?ハンバーガー?」


「ハンバーガー?ハンバーグじゃなくて?」


「うん…ジャンクなもの食べたい…」


「そっか…じゃあデリバリーで注文しようか?」


「うん。それでお願い」


「わかった。じゃあゆっくりしてて」


そして僕はスマホでハンバーガーをデリバリーすると真名と共に少しだけ遅い夕食を二人揃って取るのであった。



真名の体調に気を配りながら僕は自らの作業を一度中断して家事などに専念する生活が続いていく。

僕と真名の子供が彼女のお腹の中で順調に育っていく事を願いながら…

僕らの日々は続いていくのであった。

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