第12話真名の誕生日。クリスマス。結婚記念日。
海外美術館での個展が過ぎてどれぐらいの時間が経過しただろうか。
僕はこの国でも随一の画家へとなってきている。
「世界に轟く新進気鋭の画家!多田亮平に迫る!」
その様な大見出しの記事が至るところで見られるようになり僕は少しだけくすぐったい気持ちを抱いていた。
それはともかくとして…。
そろそろ結婚記念日であるクリスマスがやってきそうだった。
今年はあっという間に過ぎてしまった。
各個展の為に作品を作り続ける日々。
毎日深い集中に潜っていたお陰で日々はあっという間に過ぎていた。
あまりにも作業ばかりに集中しており真名とのデートは久しぶりに思えた。
少ない回数だったが何度か外でもデートをしたのだが…
やはり作品のことや個展の事を思うとどうにもデートに全力で集中できなかったのは否めない。
そうしてクリスマスイブからクリスマスに渡る二日を過ごすことになる。
同じベッドで目を覚ます僕らは本日が楽しみすぎたのか…
お互いが早朝の六時に目を覚ましてしまう。
「おはよう…ワクワクし過ぎて起きてしまったね」
真名は僕に美しく微笑むとベッドから起き上がった。
「ん…おはよう。確かにワクワクしてる…」
僕はまだベッドに寝転びながら目だけ開けて応えた。
真名は僕の額を撫でるようにして顔全体を覗き込んでいた。
愛おしくて大事なものを撫でる時と同じ様な手つきで僕の額を撫でる。
それがくすぐったくて軽く微笑んだ。
「なに?どうしたの?」
微笑みながらその様な言葉を口にすると真名は僕の頭をワシャワシャと撫でる。
「んん〜♡本当に可愛いねっ♡」
「やめてよ。もうそんな歳じゃないよ…」
「そんなこと無い。私にとってはいつまでも可愛い亮平くんなんだからっ♡」
僕はされるがままになっており真名の気が済むまでその場でじっとしている。
時計の針が目に入ってきて本日は長丁場になるなのだな。
などと嬉しい悲鳴の様な事を考えていた。
「そろそろ起きよう。お腹すいたよ」
「そうね。トーストでも焼こう。亮平くんはサラダとスープの用意をしてほしいな」
「うん。トーストには何を乗せるの?」
「亮平くんの好きなハムエッグにしようか」
「ホント!?それは嬉しいな!早く支度しよう!」
「そういうところも可愛いねっ♡」
真名は再び美しく微笑むと僕の手を引いて寝室を出てキッチンまで向かう。
僕は野菜室からレタスなどの野菜を手にしてサラダボウルに盛り付けていく。
スープは簡単に市販のものでお湯を沸かすだけ。
その間、真名はトーストを焼くのと同時並行でハムエッグを作っていた。
お湯が湧くと市販のスープの粉をマグカップに入れてお湯を注いでいく。
サラダボウルとスープをテーブルに運ぶと箸などの用意を済ませた。
トーストが焼き終わった音が聞こえてくる。
ハムエッグも出来上がったようで真名は上手にトーストの上に乗せていた。
お皿にそれを乗せるとそのままテーブルまで運んでくる。
「暖かい内に食べよう」
「はい。お腹空いて仕方ないので…頂きます!」
挨拶を済ませると僕はすぐにトーストに齧りついた。
トーストの香ばしい匂いが鼻を通って僕の食欲をそそる。
ハムエッグの塩味がまた食欲をそそってくる。
僕はあっと言う間にハムエッグを食べ終えてサラダを食していく。
時々コーンスープを飲んでは体中が暖かくなる感覚を覚えていた。
「ご馳走様でした。贅沢な朝食でした…」
「お粗末様でした。亮平くんも手伝ってくれてありがとうね」
「いえいえ。いつもは任せっきりなので…
たまにはお手伝いしようと思っているんですけど…」
「そんなこと気にしないで良いよ。家事は私がするって宣言したんだから」
「ですけど…たまには手伝いますね」
「分かった。気持ちだけ頂くわね」
「じゃあ今日の片付けは僕に任せてください」
「そう?じゃあ私はコーヒーでも淹れているね」
僕らはそこから各々の作業へと向かう。
僕は食器洗いへと。
真名は食後のコーヒーを淹れている。
まだ僕らの一日は始まったばかりなのであった。
コーヒーを頂きながら朝から非現実感を味わうために自宅のテレビで映画を観ながら過ごしていた。
途中で真名はお茶菓子などを用意してくれて僕らはそれをつまみながらゆったりとした時間を過ごしていた。
映画を二本も観た辺りで僕らは時計に目を向ける。
「外デートしませんか?」
真名は少しだけかしこまったような態度で僕に提案をしてくるので薄く微笑んで頷く。
そこから僕らは身支度を整えて家を出る。
真名の高級車に乗ると僕らは街の方へと向けて車を走らせていく。
ショッピングモールに到着した僕らは去年と同様に出来合いの食事をいくつも購入する。
もちろん今年はお酒を二人で飲むためワインやシャンパンなども購入して帰宅する。
昼過ぎから僕らはお酒を飲みながら過ごそうと思っていたのだが…。
「私はとりあえず…まだいいかも」
真名は珍しくお酒を拒否すると水などを飲んで過ごしていた。
僕だけお酒を嗜みながら再び映画鑑賞をしたり談笑をしたりしながら二人きりの時間を共に過ごしていた。
時々視線が交差して僕らはキスをしたりとイチャイチャして過ごしている。
しかしながら肝心な行為へとは発展しない。
僕はその気だが…
真名が少しだけ待ったを掛ける様な形で毎回ストップが掛かる。
その度に真名は何かを言いかけて…
口を噤んでいた。
それが何度も繰り返された時…
僕は疑問に思って尋ねてみた。
「どうかしたの?その気になれない?」
僕の質問に真名は少しだけハニカムような表情でこんな言葉を口にした。
「実は…あの日が来ないんだよね…」
「えっと…それは…どれぐらい?」
「もう二週間ほどかな」
「検査キッドとか使った?」
「いや…たまたま遅れている可能性があるから…」
「調べて損はないんじゃない?」
「それで…もしも子供が出来ていたら…嬉しい?」
「当然だよ。真名さんとの子供だからね」
「私との子供だから嬉しいの?」
「そうだね。他の人と子供を作る気は更々無いです」
「ホント?」
「なんです?ナーバスになっているんですか?」
「そうかも…」
「大丈夫ですよ。僕は真名さんだけのものです」
「そう言ってくれてありがとうね。明日にも検査してみる」
「わかりました。じゃあ今日は控えておきましょう」
「うん。でもイチャイチャするぐらいなら良いでしょ?」
「まぁ…僕が我慢できる程度にしてくださいね」
「うん…♡」
そんな言葉の後に僕らは早速イチャイチャしながら過ごしていく。
夕食はショッピングモールの出来合いのものを頂いた。
深夜になる辺りで僕は真名にプレゼントを送る。
クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントと結婚記念日として…
宝石が装飾された指輪をプレゼントする。
真名は非常に嬉しそうな表情を浮かべてはしゃいでいるようだった。
彼女は僕にお揃いの高級イヤリングを渡してくる。
「イヤリング?」
疑問に思ってその様な言葉を漏らすと彼女はくすぐったそうに微笑む。
「まぁ何ていうか…本当にお揃いの物を着けたくてね。
大事な場面で着けてほしいな」
「大事な場面?」
「うん。多田家で何かしらのパーティに参加するときとか…」
「分かった。嬉しいよ。ありがとう」
「こちらこそ」
そこから僕らの甘い二日間はあっという間に過ぎていく。
僕は真名成分をチャージすると翌日から早速作業へと取り掛かろうとして…
「やっぱり妊娠しているみたい…」
真名の一言により僕らは非常に喜ぶと作業どころでは無くなる。
多田家に報告に向かう事を決めると僕らは早速家を出る。
そして僕らは多田家の全員に祝福されて新たな生命に感謝するのであった。
此処から先…
僕らにはどれだけ子供が出来るだろうか…
そして僕らが甘い時間を過ごしている間に…
僕の評判は世界に轟いていたのであった…。
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