第6話多田家と野田家の会食。次回より第二章突入!

「〇〇高校。元野球部女子マネージャー。

元恋人に性交渉をするが断られる。

挙句の果てに部員を誘惑し性行為へ。

哀れな元恋人である男子生徒が硬い口を開いた彼女の果てしない性欲。

彼女さえいなければ野球部は存続した可能性」


「〇〇高校。夏の全国大会優勝剥奪。

準優勝校が繰り上げで優勝へ。

準優勝校野球部員が感じた〇〇高校野球部の違和感の正体に迫る」


「〇〇高校。野球部マネージャーの哀れな元恋人。

現在は精神科に通い療養中。

週刊誌にリークしたのは家族か友人か?強大な後ろ盾の存在に迫る」


「未来ある少年少女に今一度性知識の見直しを図る動きが加速している。根本的な交際関係の見直しも視野に入れて性教育の授業の見直しか?」


「若い頃に性行為などで快感を覚えた少年少女が成人しても何かしらの依存症傾向にある調査結果を徹底解明」


「新時代突入。親の言うことも教師の言うことも聞かない若者がネット上の言葉だけは信じられる理由三選」


ネット記事を含めて様々な媒体が今回の騒動を取り上げている。

むしろ波紋は広がっており世界中に拡散され社会問題へと変化していた。

連日ワイドショーでは様々な芸能リポーターが問題提起を口にしていき自分たちの過去と照らし合わせて話をしていた。

我が校の野球部並びにマネージャーなどの関係者は全員学校を去った。

これにて平穏が訪れると思っていたのも束の間だった。

僕は明らかに腫れ物を扱うような視線を送られていた。

そこには憐憫や同情の視線も含まれていたと思われる。

けれど総じて僕に関わろうとする生徒は明らかに減っていた。

それもそのはずで。

僕の関係者が週刊誌にリークしたことは記事を見ていれば明らかだったからだ。

もしもここから僕を責め立てようものならば自分も売られる。

そう思って話しかけに来る生徒は皆無だった。

けれど僕には多田真名との関係がある。

それだけあれば十二分に幸せだと感じることが出来る。

後は芸大合格に向けて日々絵の勉強に取り組むだけだった。

学校ですることといえば絵の勉強。

美術部顧問は僕を腫れ物扱いすることもなかった。

いつものように絵を教えてくれて僕は日々上達していると思える。



そして12月に入ったある日の休日のことだった。

約束された多田家と野田家の食事会の日がやってきていた。

僕と姉と母親の三人で多田家まで向かうと歓迎される。

いつものように使用人である好々爺が恭しく頭を下げて僕らを迎え入れる。

食事のできる大広間まで案内されて何処となく居心地の悪さを感じていると多田家の一同も遅れて大広間へやってきた。

野田家は座っていた椅子から立ち上がると深く頭を下げることになる。


「本日はお招き頂き誠に感謝します。加えて息子の事で尽力して下さった娘様にも感謝の言葉を言わせてください。誠にありがとうございました」


母親が先んじて口を開き僕らは倣うようにして頭を下げる。


「これはご丁寧に。

娘もしたくてやったことですから。

結果的に多田家にも利があったことです。

そこまでかしこまらないでください。

むしろ利用するような真似をしたことを謝らせてください。

傷心中だった息子様を利用してしまい申し訳ない」


多田家の父親も野田家に深く頭を下げる。

それに倣うようにして真名も深く頭を下げていた。


「ワシの高校もこれで夏の全国大会優勝が見えてきたところだ。

むしろ感謝したい。

今回の騒動のような悪行を教えてくれて。

利用されて二重に傷付いているだろうが…どうだ?真名とくっつく気は無いか?

お前さんの絵を見せてもらった。

この先は芸大に進むのだろう?その先は画家か?伝手は既に存在しているか?

多田家の人間になるのであれば…

いくらでも伝手やコネを使わせよう。

今すぐに答えを出す必要はない。

お前さんはまだ未成年だしな。成人してから答えを出してくれ」


祖父と思しき人物に急展開に思われる言葉を口にされて野田家は明らかに狼狽していた。


「気が早いですよ。真名ちゃんが一言でも言ったのですか?このお方と一緒になりたいと」


祖母と思しき人物が口を開いて真名は何故か気恥ずかしそうな表情を浮かべている。


「お義父様。お義母様。今日の所はただの食事会です。深い話は後日で良いじゃないですか。ね?真名?」


真名は母親の言葉に深く頷くと多田家は椅子に腰掛けた。

遅れて野田家も椅子に腰掛けるとテーブルに豪華な食事が運ばれてくる。

僕らは付け焼き刃のテーブルマナーで居心地の悪い食事会を過ごしていく。

きっと美味しい料理だったのだろう。

けれど僕らは精一杯背伸びをしていたため味の情報など脳にも舌にも感じ取れないでいた。

世間話や騒動の件についていくらか話をしながら食事を済ませること二時間ほどの時間が経過していた。


「では。本日はこの辺でお暇します。豪勢な食事の数々ごちそうさまでした。何とお礼を申し上げたら…」


母親が申し訳無さそうに口を開くと多田家の父親が何でも無いように口を開いた。


「いえ。お互い様ですから。

亮平くんと咲さんには今後とも真名と仲良くして頂けたらと願います。

それこそ亮平くんは成人したら…

なんて気が早いですが…私共の総意だと思って頂けると助かります」


「でも…どうしてうちの息子をそこまで評価してくださるのでしょうか…」


「それは絵の才能に触れたからですよ。

もちろん多田家に利があると思ってのことです。

容姿も申し分ないと思います。

それこそ気が早いですが…真名との間に出来た子はさぞ美しいと思われます。

亮平くんは多田家にとって利がある存在なのです。

何よりも真名がその気だと思いますし。

男性に対して固く閉ざしていた真名の口から再び男性の名前や話が出てくるとは思ってもいませんでした。

このまま真名は生涯独身を貫くつもりなのだろうと少しの不安を覚えていたのです。そこに亮平くんが現れた。

絵の才能もピカイチで容姿も申し分ない。

加えて姉は友人だと聞く。

そんな相手ならくっついて欲しいと思うのは普通でしょう。

ですので二人には今後とも仲を深めてもらいたい。

ですがもちろん。未成年の間は交際を認めません。

高校を卒業し成人して初めてその権利を得たと思って頂けると幸いです。

分かって頂けましたか?」


多田家の父親が僕らに言って聞かせるのでそれにウンウンと頷いて応える。

母親も最終的に了承したようで、


「将来についてしっかりと考えさせます。本日は誠にありがとうございました」


そうして多田家と野田家の食事会は終了する。

僕らは帰路に就いており姉の咲が僕に嬉しそうに口を開いた。


「やったじゃん。

事実上の婚約者が出来たようなものでしょ?

しかも将来の道まで提示してくれているんだよ?

アーティストなどの職業は伝手が無いときつそうだし。

よっぽどの実力がないと売れないものでしょ?

でも伝手やコネを使わせてもらえるんだよ?

それに売れない間でも多田家に養って貰える。良かったじゃない」


姉の呑気に思われる言葉に母親は注意のような言葉を口にする。


「それは全て亮平が決めることだわ。

確かに最善策だと思われるけど。

多田家を利用しようと思うのは間違いよ。

自ら動く人間には与えてくれると思うけど。

ぐうたらしていたら簡単に嫌われて捨てられるわよ。

いつまでも相手のために自分を磨ける存在じゃないと多田家に釣り合わない。

だからちゃんとこれからも精進しなさい。

自分の将来のために。どの様な道を選択するにしても」


母親の有り難い言葉を頂きながら僕らは帰宅するのであった。



「〇〇高校。元野球部。

放課後の校舎で淫行。

部室をホテル代わりに淫行。

掘ればいくらでも出てくる彼らと彼女の淫らな関係が明らかに。

親は許してくれても世間が許してくれない。

家から一歩も出られなくなった彼ら彼女を世間はどう見るか。

ほとぼりが冷めるまで缶詰状態を維持か?

反省している様子もなくオンラインゲームで元仲間たちとのやり取りを完全公開。

自分たちの罪を完全に理解していない若者たちに世間は牙を剥く。

社会問題へと発展した今回の騒動。第二章へ突入!」



紅くるみと元野球部メンバーは騒動が明らかになってから一度も外に出ていない。

両親にこっ酷く怒られた彼ら彼女だったが、傷心しているふりをして引きこもることを全員が選択していた。

彼ら彼女はこの先の人生を困難にも進まなくてはならないのに…。

引きこもった彼らが選んだ道はオンラインゲーム上で繋がり続けることだった。


「ってか。このままゲーム実況配信者とかになる?」


「Vも良いんじゃね?顔出ししないで済むし。騒動の件に触れなかったら俺達ってバ

レないだろ」


「私達全員でグループになって配信するのは?結構人気になるかもよ?」


「年齢が上の人達は若者の配信なんて興味ないだろうから。若者に向けて配信したら人気出そうだよな」


「ってか今回の件だって若者はなんとも思ってないだろ」


「自分たちだって家ではそういうことしているもんな」


「本当に俺達に石を投げて良いのは亮平だけだし」


「あいつは被害者だよ。まぁ悪いとは思ってないけど」


「恋人に迫られて断るとかありえなくない?私だって傷付いたし」


「くるみが帰った後。自分で慰めていたんだろ?悶々とした気持ちを」


「www。でも断ったおかげであいつは道を外さなかったな」


「別に高校中退なんて大したダメージじゃないだろ」


「好きなこと出来ると思ったら。別にいいよな」


「俺達は自由だ!」


「………。かもな」


オンラインゲームのチャット欄にはこの様なやり取りが行われている。

この中にスパイが存在していることを彼ら彼女は知りもしない。

そしてこのやり取りが週刊誌に流されて…。

彼ら彼女は再び世間から裁かれていくのであった。



第二章突入!

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