<予告>リュグド=エルバロフ 編

 これからどうしようか、と考えた時、どこからか教会の鐘の鳴る音が聞こえてきた。


(そう言えば……町外れにある教会の噂を聞いた事があったわ。

 確か、そこで祈りを捧げれば、願いが叶うって……)


 ――街はずれの教会で、私は、一人の青い髪の青年と出会う。

 ――その青年は、とても悲しい目をしていて、何故だか私は、彼を放っておくことができなかった。


「……とにかく、あなたには関係のない事です。

 お気持ちだけ頂いておきますよ」


 優しい笑顔、穏やかな口調。

 それなのに、彼の言葉は私を静かに拒絶する。


(確かに、今会ったばかりの私には、関係のない事だけど……。

 でも……)


「それじゃあ、そろそろ本当に僕は行かなきゃ。

 君も気をつけて帰……」


「いいえ。私、帰りません。

 ……今更、帰れないわ」


「え……?」


 この人が消えてしまうような気がしたのは、きっと間違いじゃない。

 ここで私達が出会ったことも、きっと偶然じゃない。


「危険なのは、あたなも同じでしょう。

 お願い、私も連れて行って。迷惑はかけないから」


 ――青年は、名を【リュグド=エルバロフ】と言った。

 ――――誘拐された人を捜していいるという彼を手伝うため、私は彼について行った。


「お母さんが病気で…………そう。

 それは、大変だったね。

 良かったら、僕を、そのお母さんの所へ案内してくれないかな」


「えっ?」


「……りゅ、リュグド?」


「これでも、多少の医学の知識ならあるつもりなんだ。

 もしかしたら、何か役に立てるかもしれない」


「本当?!」


「ちょっと待ってよ、リュグド。

 人捜しは良いの?

 気持ちは解らなくはないけど……」


「……うん、ごめん。

 でも、目の前に助かる命があるかもしれないんだ。

 それに、困っている人を放ってはおけないよ」


 ――困っている人、弱い人を放っておけない優しいリュグド。

 ――でも、そんな彼が悲しい目をする理由は、ある大切な人の死が原因だった。


「彼女は、死んだ。

 ……ボクが殺したんだ」


「……え?」


 私は初め、彼が何を言っているのか解らなかった。

 リュグドは、いつもと何ら変わらない優しい笑みを浮かべている。

 風が強かったから、聞き間違えたのだと思った。


 だから、もう一度、聞き返そうとした時、

 彼が改めて言い直した言葉に、私は言葉を失った。

 今度は、ヤケにはっきりと聞こえた。


「僕はね、この手で人を殺しているんだよ」


「っ!?」



 ⇒To Be Continued...

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