第4話 ツンピュアギャルは趣味を隠したい!

白川芽衣と運命的な出会いから1ヶ月が過ぎて現在。

2人でいる時間はとても多く、学校ではお昼休みや放課後の寄り道など、休日にはデートを重ねるくらいには2人の仲は進展したと言えよう。


だけど_________


……そんなある日の『橘 海斗』は1人寂しい休日を迎えていた。


休日と祝日が重なって4連休。

白川芽衣は家族と一緒に北海道にある祖母の家に行くらしい。

白川曰く、『とっても寂しいけどお土産楽しみにしててね?』だそうだ。

北海道のお土産ともなると御当地袋麺とかマルセイユバターサンド、白い恋人など美味しいものがあると考えると凄く楽しみである。


そんなこんなで今日は土曜日で学校は休みなわけだが。

特にやることもないが…どうしようか?


正直、白川がいないと寂しいと感じてしまうくらいに基本的にずっと一緒にいたのだ…

何をやるにしてもずっと白川がいた分、退屈なんて考える暇は無かったから俺は1人でいる状況に違和感を抱いていた。


そう感傷に浸っていても時間がだけが浪費されていく状況が勿体無いと思いながら布団の上でスマホを触ってゴロゴロとしていると、俺は気になったページに目が止まり起き上がる。


_____そこには、気になっていた漫画の発売日が書かれており、その日が今日だったのだ。


せっかくの休日に家でゴロゴロするのは魅力的だが、漫画を読みたかった俺は、家を出る準備をした。

それに、自炊も面倒だと思っていたところだ…


どうせなら外で昼食も済ませてしまおうと俺は家を出た。




しばらくして俺は商店街の本屋の前に到着して中へ入り、目的の漫画を探す。


他の漫画も気になるところだけど新刊コーナーへまっすぐに進み目的の漫画を見つけた俺は手を伸ばした。


すると、手に取る漫画が同じだったのか他の人の手に触れてしまう。


「あっ…すみません」


急いで手を引いた声の主は青色の上下ジャージに黒メガネを掛けたとても可愛い女の子だった。


「こちらこそ、申し訳ない……?」


顔をよく見てみると、何だか見たことがあるような気がする。

いや、間違いなく最近会っている筈なんだけど、誰とも外見が一致しない。


「あっ!…アンタっ!…芽衣の旦那っ!どうしてアンタが…」


ん?……何で白川の名前が?

って……コイツ良く見たら同じクラスの天部美琴じゃね?

それにしても学校での姿が違いすぎるな…


「あ〜っと…奇遇だなっ!天部…じゃ、俺は行くから!」


俺は漫画を手に取り会計を済ませて店を出た。


それにしても本当に偶然だった。

まさか、クラスカーストトップのギャルの休日の姿がジャージだったとは……

それに、あの"漫画"を読むとは…普通に仲良く慣れそうだ。


そう、物思いにふけって帰ろうとした俺の肩を天部が掴んで止めた。


「まっ…待ちなさいよっ……アンタっ…見たわよね?」


「えっと…何が?」


「だっ、だからっ!…アタシのジャージ姿よ……」


最後の言葉が小さかったが、概ね理解できた。

天部は多分この姿を他の人に知られたくないのだろう。

俺は特に広めるつもりは無いんだが…


「その事か、俺は別に気にしないぞ?…ジャージ楽だもんな」


「………っ」


「それに天部もあの漫画好きなのか?」


「…っ…すから…」


天部の言葉が聞き取れなかった俺は聞き返した。


「なんて?」


「言いふらしたら殺すからっ…」


そんな涙目で頬を赤く染めて言っても怖くないんだよな。

むしろめっちゃ可愛いんだが…


「言わねぇよっ! いちいちプライベート言いふらしたりするほどクズじゃねぇわっ!」


「…とか言って後で脅して…アタシに変なことする気なんでしょ!……あの同人誌みたいに…」


「はぃ?」


何を言ってるんだ?

というか何で息が荒いのこの娘…?

なんか怖くなってきたんだけど


「だからしねぇよ!! 俺はもう帰るから…」


「待ちなさいよ」


え?あの……帰りたいんだけど

何で指に力いれるの?

怖いんだけど……

白川っ…助けてくれ!

お前の友達、なんか変だぞ!!


「あのー……帰りたいんだけど?」


「…黙ってついてこいや」


「………はい」




そうして天部に連行された場所は近くのカラオケの個室だった。


いや…なんで??



「天部さん…? なにゆえカラオケに?」



「ここなら話聞かれないでしょ…」


「ま、そうだけど……何の心配してるか知らないけど、白川の友達に酷い事する訳ないだろ」


「ふぅーん?……芽衣とはエッチしたくせに?」


「してねぇよ!至って健全な付き合いしとるわ!」


「でも、よっ…夜に男女が2人っきりって芽衣が言ってたもん…」


えぇ……もしかしてあの時のやつか?

誤解なんだが…


「聞いてくれ天部………俺は童貞だっ!!」


「え…キモ……アタシに童貞アピールして卒業させてくださいって言いたい訳?」


「違いますけどぉぉぉおおぉぉおっ!? どんだけ頭がピンクなんだよっ!……このむっつりギャルめっ!」


「は、はぁっ!?…む、むむむ、むっつりじゃないけどぉ?」


いや、思いっきり動揺してんじゃん…

エッチなの好きじゃんこのむっつりギャル…


____というか俺が買った漫画も正直内容がエロいやつだし


漫画のタイトルは『トLOVEる』

色んな美少女が登場して、超能力みたいなラッキースケベで様々な女の子とエッチな体制になったりするラブコメだ。


「天部……ギャルが変態でも良いじゃないかっ!」


大丈夫だ、天部

お前は恥ずかしいだけなんだよな……?

俺は分かっているぞ!


「お、おぃ…その生暖かい目を向けながら分かってますって顔やめろっ!アタシを本当に変態にするなぁっ!!」


「天部…もう良いんだ…俺達は同じ漫画で繋がってる"むっつり"同士なんだから」


俺は天部に向けて親指を立てた。

それを見た天部が涙目になって俺のシャツの襟を掴んで前後に揺らす。


「ねぇっ!お願いだからぁっ〜!話を聞いてよぉ!!アタシは変態じゃなぁいっ!!」


「はははは……ワカッテル、ワカッテル」


「う……うわぁぁぁああぁぁぁぁぁっんんんんっ!!!!」


天部はガチ泣きをした。



ガチ泣きをした天部が泣き止むのに20分くらいした。

流石に弄りすぎたと思ったので俺は普通に謝った。


「すまん天部…少しやり過ぎた」


目元が赤く腫れて天部は

「っ…アタシは変態じゃないもん…むっつりじゃないもん…」


「そうだな…天部は変態でもむっつりでもないな…」


「……たまたま好きな漫画がエッチなだけだもん」


「……そうだよな〜漫画がエッチなだけだよな」


「…分かれば良いのよ…」


_________良いんだ……


「天部、マジで悪かったよ…でも信じてくれ!俺と白川は友達だ! エッチなことはしてない!」


「もう良いわよ…アンタが意地悪なのは分かったから…」


「すまん…でも、何でそんなに漫画好きを隠すんだよ?」


「……笑わない?」


少し俯いた天部が心配そうな声を出して自分の手を握りしめた。


「笑わねぇよ…」


これは本当だ。

俺は人の夢や趣味を笑わない。


「アタシは中学までは芋臭いオタ女だったのよ…ひっそりイラストとか描いたりね」


「そうなんだ…」


「キラキラした女の子とか、クラスの男の子たちが…陰口でアタシのことキモいとか…一人で変なことしてるって笑うから…」


「……そっか」


「だから、見返してやろうっ!って頑張ってメイクとかファッションの勉強を頑張ったの…でも、変わったのは外見だけ…アタシは中は変わらずに芋臭いオタクのまんまよ…」


伏し目がちの天部が悔しそうにそう呟いた。 


「天部、お前はすげぇ奴なんだな…だって俺が知ってる天部は外面だったかも知れないけどさ?…それでも、めっちゃ可愛いしっ!いつも堂々としててクラスの中心じゃん」


「それはっ!全部嘘で出来たアタシなのよっ!…本当のアタシを知ったらきっと幻滅する…アタシには何も無いのよ…」


「そうか?俺は別に天部のことを知った今でも、幻滅なんてしてないけどな?…むしろ天部はめっちゃ凄い奴だって分かったから」


俺の言葉を聞いた天部が顔を上げて戸惑った様に俺をみつめる。


「それに…俺は天部と友達になりたいぞ!」


「…変な奴……こんなアタシの何処が良いのよ…」


またウジウジと考え込みやがって…

何でそんなに自分のことを否定するのか俺には分からない。

だって、天部は可愛くなるために努力して今があるのに。

俺は天部の努力を否定してほしくなかった。


だからこそ…熱くなった俺はこの時何を言ってしまったのかよく考えていなかった。

この発言が後に修羅場をもたらすとも知らずに…



「俺は今の天部も学校での天部もめっちゃ可愛いって思うし、(友達として)好きだぞ?」


「へっ?…ばっ、ばっかじゃないの!!……そんなっ……す、好きとか…」


天部はゆでダコのように赤くなり、また下を向いてしまった。

なんか変な空気になってる気がする…


ここは何か別の話題を……

そうだ、ここはカラオケじゃないか…!

俺はデンモクを操作して、アニメ化している今日買った漫画のオープニングソングを選んで送信した。


すると…すぐに曲が流れ出す


「え?……これって……」


「なぁ天部っ!せっかくカラオケに来たんだから一緒に歌おうぜ!」


「あははっ…マジで変な奴じゃん…」


天部に笑顔が戻ってホッとする。

俺はもう一つのマイクを天部に渡す。


「どうせなら楽しまなきゃ損だろ?」


「…そうよねっ!」


マイクを受け取った天部が歌い出した。

それはとても綺麗な歌声で、俺の心臓を揺らすほどにとても衝撃的だった。 


本当に何が何も無いだよ……

______めっちゃ歌上手いじゃん

俺はキラキラした顔で楽しそうに歌う天部に見惚れていた。


そして曲の1番が終わって天部に肩を叩かれて俺が天部に見惚れてぼーっとしていたことに気づいた。


「次っアンタねっ!」


「お、おうっ!」


そこから色んな曲を時間がくるまで天部と歌った。

正直めっちゃ楽しかった。

お互い好きな歌のジャンルだったり、漫画の趣味が似てたり、

歌ってない時でも俺は天部との会話の時間を楽しんだ。


電話のコールが鳴り、部屋の提出時間の10分前の時間になった。


「はぁぁあぁぁ……歌ったわねぇ~…」


「どうする?もう一曲くらい歌えそうだけど」


椅子に座りながら天部が右手をヒラヒラさせながらドリンクを飲む。


もう歌わないってことね…了解。

言葉にしなくても伝わるくらいには、俺と天部の仲は良くなったと思う。

俺達はそのまま部屋を出て会計を済ませた。


「まだ夕方には時間あるわね…ねぇ、まだ暇?」


隣を歩く天部が何かを訴える目を俺に向ける。

いちいち理由を聞くのも野暮だろう。

それに暇なのは本当だしな?


「昼はカラオケで済ませたし、ゲーセンでもよらないか?」


「良いわねっ!何しようかしらっ」

ウキウキと楽しそうにスキップをしながら前を歩く天部を俺は追いかけた。


カラオケとゲーセンは近くにあり、すぐに到着した。


俺達はゲーセンに着いてすぐにシューティングゲームをやった。


慣れていないのか全然敵に弾が当たらないのだが、お互いにあーだこーだ言いながらも俺達はずっと笑顔だった。


「ちょ、天部っ! 何で俺の頭狙うんだよ!」


「あはははっ!アンタが前でうろちょろしてるからでしょ!」


「あっ、やめ…死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!!」


「大丈夫…アンタの死は無駄にしないわ…」


「死んでねぇよっ!!……まだ残機は………あっ」

天部の方ばっかり見てた俺のキャラが目の前で丁度ゾンビに食われていた。


________レーシングゲームでは


「ねぇっ!何でアタシに甲羅ぶつけるのよ!?」


「おいおい…これは真剣勝負だぜ?」


「うっざぁっ!! アンタも喰らいなさいっ!」


「えぇ??今なにかぁ?しまちゅたかぁ?? 僕分かんないでちゅううう!!」


甲羅を後に残していたから無事だった。


「きもぉぉおおおっ!!!なんで甲羅持ってるのよぉっ!」


________コインゲームでは


「えぇ…なにそれ…?」


お互いに10分で誰が多くのコインを集めることができるか勝負していた訳だけど。

10分たって集合場所に現れた天部は物凄い大量のコインをバケツに入れて現れた。

ちなみに俺は全て食われて1枚も残っていない…


「なんか10枚くらい入れたらたまたまJACKPOT?ってのに当たって中のコインが全部出てきたの…」


「マジかよ…てかそのコインどうすんの?」


「え?……持って帰るんじゃないの?」


「え?」


「え?」


俺達の会話をたまたま聞いた店員さんによって天部のコインは機械に預けられた。



他にもたくさんのゲームを堪能した俺達は少し休憩するために自販機で飲み物を買った。


「ほいっ…ミルクティで良かったか?」


俺はペットボトルを天部に投げ渡す。


「とと…投げないでよ~……はぁウマー」


「ふぅ…めっちゃ遊んだなーそろそろ良い時間だしお開きにするか?」


「そ、そうね……ねぇ、アンタ本当に芽衣とは付き合ってないの?」


白川の友達なのだから気になるのだろう。

ならここは、本当の事を話そう。

過去の思い出は白川に言わないで欲しいと言われているからそこを省いて天部に話した。


「そうだったんだ……だから芽衣はアンタに…昔の両思い同士での再開って…そんなの運命じゃん…」


「何か言ったか?」


途中声が小さくて聞き取れなかった。


「何でもないわよ…それより芽衣を泣かせたら許さないから」


「分かってる…ちゃんと考えるよ…ありがとうな天部」


「それ、やめなさいよ…」


「何がだ?」


天部美琴は目を背けながら自分の髪をクルクルと弄りながら、橘海斗を見つめる。

その瞳は微かに熱を帯びている事を橘海斗は知らない。


____そして、小さく芽生えた恋の蕾の存在を天部美琴は実感していた。


「だから…その天部ってのをやめなさいよ……美琴で良いわよ?……アンタの事は海斗って呼ぶしっ」


「何でだ?」


素直に疑問だった俺はそう聞き返した。

天部は恥ずかしそうにしながらも俺を上目遣いで見つめてきた。


「だって……アタシと海斗はっ……と、友達なんでしょ!別にいいじゃん!」


確かに友達なら下の名前で呼び合うのは理解できる。


だけど"前世"を含めても女の子の友達など出来たことが無かったため、少し俺は気恥ずかしいと感じた。


俺が黙り込んでしまったのを否定と受け取った、天部が少し涙ぐんでいた。


「ぇっ……いやっ…なの?」


俺は慌てて誤解を解きに行く。

違う、俺は悲しませたいわけではない。

なら、気恥ずかしいから呼ばないはとても失礼だと感じる。

だから俺は天部の両肩を掴み真っ直ぐ目を見る。


「違うっ!……ちょっと気恥ずかしかっただけだ…よろしくな美琴っ…」


「…っ…そっか…よろしくっ!海斗っ!」


その後、俺達は恥ずかしかったのか、お互い黙り込んでゲームセンターから出た。


「これから暗くなるし、送ってくぞ?」



「…ありがとう…っ…海斗…でも家はここから近いし大丈夫っ!……えと、じゃあね…?」


「お、おう…また学校でな」


美琴は軽く手を上げてうしろを振り向いた。

そして俺達は別方向に歩き出す。


仲良くなれたと思ったけど、まだ少しぎこちなく感じる。

少しばかり寂しいと感じたが、仕方がないだろう…

そう、考えていた時に後ろから美琴が俺に呼びかける。


「海斗っ!!…今日は!ありがとう!また遊ぼうね!」


そう言った美琴の笑顔は今まで見たどんな美琴の顔よりも魅力的に見えて、俺は心が高鳴った音が聞こえた気がした。


坂道の上で俺を見下ろす天部美琴は、温かなオレンジ色の夕日に照らされてとても眩しく綺麗に見えた。

その姿はまるで地上に舞い降りた天使のようなそんな美しさだった。



________________________

天部美琴side


胸がまだバクバクいってる…

アタシ、どうしちゃったんだろう?


海斗の笑顔を見ると胸がギュッってなって、芽衣との仲を聞くと凄く胸がチクチクとして痛い。


だって…こんなアタシを見て幻滅しないって言ってくれた。

むしろ……すっ……アタシの事好きって…


アイツと離れてまだそんなに時間が経ってないのに物凄く寂しいと感じてしまう。


きっと初めての男友達と遊んで疲れたんだ…


だから…お願いだから…この胸のドキドキ止まってよっ!


じゃないと……


_________芽衣を裏切りたくないのに…


ふと一緒に遊んだ時の海斗の笑顔が頭によぎる。


それだけで胸は暖かくなり、頭の中はアイツでいっぱいになる。


ごめん……ごめん芽衣


アタシは海斗に恋をしてしまったかも知れない


諦めないといけないのはわかる…


今ならまだ間に合うって_______



_____そう、思っていたのに……



どんどん、海斗が好きって気持ちが溢れて止まらないっ


だからっ………


だから駄目だって分かってるのに…


海斗の近くにいたい!


海斗の隣で一緒に遊びたい!


海斗の……モノになりたいっ!


最低だって分かってる…


芽衣が海斗の事を…好きだって分かってるっ……


でもっ! こんなアタシを…好きだって言ってくれた海斗を諦めたくないっ!




アタシをこんな気持ちにさせたんだ


_______責任、取ってもらうからね?


…海斗



_____________________________________________________________


僕の作品を読んでくれてありがとうございます!


読んでくれてる皆様のお陰様で、小説を書き始めて2週間で初の1000pvとフォロワーが100件を越えました!


本当に、ありがとうございます!

これからも頑張って楽しく小説を書いていきますのでどうぞよろしくお願いします!

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