謎の戦士現る
私は目を疑った。
私は今、ここにいる。しかも、この星の人類の姿で、だ。
だというのに、
「いけー! スーパーグレイトマン!」
「がんばれー!」
目の前には、スーパーグレイトマンが出現していた。しかも、大怪獣と戦っている。
スーパーグレイト星から、新しいスーパーグレイトマンを派遣するという話は全く聞いていない。もしも、新しいスーパーグレイトマンを派遣するのならば絶対に連絡はあるはずだ。
それに、スーパーグレイトマンの任期は一年と決まっている。例外としてあるのは、先輩スーパーグレイトマンが助っ人という演出で現れる時くらいだ。
だというのに今、私ではないスーパーグレイトマンが大怪獣と戦っている。しかも、どうやら細部が違うところはあるが私に似た姿だ。
これはどういうことなのかと思案していると、
「あっ! スーパーグレイトマンが!」
「負けないで-!」
正体不明のスーパーグレイトマンが大怪獣に押されて劣勢になっている。これは不味い。
私は物陰に向かって走ると、急いで変身した。
私が現れても、戦っていたスーパーグレイトマンは声すら発さなかった。何者なのだろう。
しかし、今は目の前の大怪獣だ。
私が大怪獣に向かうと、彼は援護してくれるように動いた。私の後ろから光線が放たれる。彼が放ったもののようだ。
これで、今回は終わりだ。と、思った。
しかし、怪獣は爆散せず今のところ押され気味になっているだけだ。
出力が弱い。
じりじりと押してはいっている。負けてはいない。このまま時間を掛ければ勝てるかもしれない。しかし、私も自らの役割を果たすためスーパーグレイト光線の構えをとる。
そして、放つ。
怪獣が爆散する。
それを見届けてから、私は宇宙へと飛び立った。もちろん、それはフリであってすぐに地上に戻ってこの星の人類に擬態した姿に戻る。
そうして、地上に降り立った私の目に映ったのは、戦いを終えたはずなのに未だ地上に立ち続ける正体不明のスーパーグレイトマンの姿だった。
「おお! 今回もお疲れ様!」
「いつもすごい活躍だな!」
いつものように私を迎えてくれる防衛隊の仲間たちの様子が、今日はいつもと違っていた。
毎回、どこに行っていたのか咎めもしない、お人好しの仲間たち。だが、何か違和感がある。
「隊長から聞いたんだ。お前がスーパーグレイトマンエンデだったんだな」
「……!?」
急に真実を突かれて言葉を失う。いつから正体がバレていたのだ。
「もう隠さなくていいんだぜ」
「今まで一人で戦ってくれてありがとうな」
「これからは、一緒に戦えるぜ!」
「来週からは俺たちにも頼ってくれよな!」
「?」
何を言っているのか理解が追いつかない。
「アレだよ! アレ! 実は俺が遠隔操作してたんだぜ! 自立思考モードもあるらしいけど、まだそれは研究中みたいだからな」
一人の隊員が正体不明のスーパーグレイトマンを示す。
「お前のことをこっそり解析して研究してたらしいんだ。それで、秘密裏に開発して出来たのがアレ、人造スーパーグレイトマンってわけさ! 俺、最初聞かされたときお前がスーパーグレイトマンエンデなわけないって疑ってたんだけど、悪かったよ。隊長からはお前には内緒にしとけって言われて黙ってたんだけどな。ようやく完成したんだ! もう隠す必要も無いだろ」
「これでもう、あなたにだけ辛い思いはさせないわ」
例の女性隊員が顔一杯の笑顔を浮かべている。
「あ、ああ」
私はそう答えるしかなかった。
◇ ◇ ◇
「という訳で、この星の人類は自らスーパーグレイトマンの開発に成功したようです」
その夜、私は母星への通信でそう報告していた。
「防衛隊の仲間は、スーパーグレイトマンと共闘して地球を守るという目的で製造していると発言していました」
『……なるほど』
モニターの向こうで、エルンストが難しそうに顔をしかめる。
「何か?」
『うむ』
顔を上げて何かを決めたようなエルンストの顔に、私は嫌な予感がした。
「ですが、まだまだ開発段階といった様子で、見た目は似せてあるもののパワーは劣っているようで我々の科学技術に追いついている様子はありません」
言い訳がましく私は言った。
しかし、
『本当に君はそんなことの為に、その星の人類がスーパーグレイトマンを製造したとでも思っているのか』
「……はい、現段階、では」
『それは、一個人の考えだろう。防衛隊、ひいてはその上層部が何を考えているのかは知っているのか?』
「いえ、そこまでは」
『君は人造スーパーグレイトマンが開発段階だと言ったな。だとしたら、それ以上進んでしまえばどうなる。我々よりも進んだ科学力を持ってしまったらどうなる。その力が宇宙侵略に使われることになったらどうなると思う。その星に住んでいるのは好戦的な性質を持つ種族なのだぞ。まず、我々にこれまで気取らせずに人造スーパーグレイトマンを製造すること自体が狡猾だと言わざるを得ない。それ自体が脅威だ。本当に平和的な利用を考えているのなら、何故完成まで我々に秘密にする必要があったのだ』
「……それは」
『災いの芽は早いうちに摘んでおかねばならない。我々が止めることが出来る間にな。取り返しが付かなくなってからでは遅い。それがこの宇宙を守る我々の役目だ。その星の人類は、越えてはならない一線を超えた。現時点をもって、地球人類を管理対象から殲滅対象へと移行する』
その声に揺るぎは無い。
そして、告げた。
『では、新しい指令だ。地球人類を殲滅せよ』
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