第9話 ソラ、一条の帝の末裔に出会う
組み敷かれていた腕を振り払ってほどいて、反対の手で地面を押し、いとも簡単に立ち上がった。
「ぎゃふん」
高貴なるお方が発してはいけない台詞を発しながら地面に尻もちをついた。
「な、なにするんですか?」
ボクは当たり前の反応をした。しかし高貴なるお方は目を丸くして立ち上がったボクを見つめている。
「キサマ……何処の国の御庭番だ?」
おにわばん? そういえばオジサンがなんかそんなようなことを言っていた気も……。
「ボクはソラっていいます。あっちの田舎で畑やってました」
「田舎だと!? アイヌの民族は田舎の農家ですらこの強さなのか? 見たところオレと同い年ぐらいの出で立ちではないか!」
あ、これボクが強くなったってことは言わない方がいいかな?
変に村の人達が強いって思われたら村が征服されかねないしな……。
「いや、違うんですよ、ボクは村の中でその……最強なんで……奉公先を見つけに旅にでることにしたっていうわけです」
自分で最強とか言っちゃうの凄い恥ずかしいな。できれば今後は言いたくない。
「ほう、奉公先というのは松前藩か?」
「あ、そこにも行って見ようと思ってます」
高貴なるお方は髭の生えてない顎に手をあててすりすりしながら、
「そうか、ソラ、ならばオレに仕えてみる気はないか?」
「え?」
「我はあの一条の帝の末裔、
いきなり征夷大将軍にスカウトされた。こんな田舎で!
あとあの一条の帝の末裔とか言ってるけど、まったく心当たりがない。一条の帝って誰?
でも征夷大将軍か……王様ってことだよな。そしてこの人は神様になろうとしてる。
「じゃ、じゃあボクが王様になったら、弱い者いじめしない国を作ってもいいの?」
「なにを言う、お前バカか?」
雰囲気が一瞬で変わった。
え? ボク変なこと言った?
「今のこの乱世を把握していないのか? 弱者は虐げられ強者に奴隷の様に扱われる状況なんだぞ? それはどこかの国が天下統一しても変わらんだろ、目には目を、歯には歯を、武力には武力を、そんな世の中が今の世だ。わかったか?」
「分かりたくも無いよ、そんな常識って言う一般論なんか」
「なに?」
「理想を掲げて何が悪いのさ!? 君は知らないんだ! 弱者の気持ちなんかこれっぽっちも!」
「お前もだろ……お前は強者だ!」
「違う! 弱者の気持ちが分かる強者になるつもりだボクは!」
「詭弁だな、どうして強者が弱者の気持ちを理解してやれる?」
「ボクが……最弱だったから……」
「……どういうことだ?」
ボクはこれまでのいきさつを話した。
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