第3話 そんな秘宝……なんでボクのために?

 オジサンがふところから取り出したのは、小さい頃に絵本で見たような、金色こんじきの丸い玉。


「ソラ、これは進化の秘宝だ。エジプトのピラミッドで発見してきたどうせ食うなら、うんこじゃなくてこいつにしてみないか?」


 トリュフチョコレートサイズの金色に輝くそれは、まさしく絵本で見た進化の秘宝だった。


 千年に一度どこかの国に出現し、その秘宝を食した者は死ぬか、もしくは成長速度百万倍の恩恵を得る事ができると伝説にある。


 だがボクはそれを信じられなかった。


 伝説を信じられなかったのではない。オジサンがそんな秘宝を持ってることが信じられなかったのだ。


 だって持ってたら普通自分で食べるでしょ?


 ボクはその疑問をオジサンに尋ねた。

「おじさん、冗談はやめてよ。 どうせうんこを魔力で輝かせてるだけなんでしょ?」


 ボクの性格はババ色だった。


 小さい頃から虐げられ、奪われて来たボクは、他人の善意をいうものを簡単に信用しなくなっていた。


「なにが狙いなの? 借金でも作ってこの畑でも欲しくなった? 申し訳ないけどこの畑が無くなったら流石にボクも生活できないよ……いくらオジサンの頼みとはいえ」


「ソラ、俺がこれをお前に託そうと思ったのはな、お前が本当は死にたいと思ってるんじゃないかと考えたからなんだ。」


「え?」


 なにを……言ってるんだ? まぁボクはこんな人生もう死にたいけどさ。


「確かにエジプトのピラミッドの中で見つかったとはいえ、本物かどうかは俺も分からん。それにな、俺にはもうすぐ子供が産まれるんだ。進化の秘宝は食せば死ぬか、強くなるかのどちらかだ。俺は今死ぬわけにはいかないのさ」


 なるほど……そういう理由か。オジサンはやっぱり良い人だな。進化の秘宝かどうか分からないって正直に教えてくれてる。


 ボクはそれを聞いて、オジサンの誠実さに心を撃たれ、金色の進化の秘宝? を食べることにした。


「ありがとうオジサン、頂くよ」


 その時だった。


 ボクとオジサンが縁側で畑を目の前に話をしていると、畑が爆発した。


「チッ、もう追手が来たか、ソラ、早く食え!」


「ええ!? うん、わ、わかった!」


 いきなり人の畑を爆撃するテロ行為を目の前にして、ボクはどうせ死ぬならとその金色の秘宝を口にした。


 平和な辺境の地だから忘れていた。今この土地は松前藩と戦争をしているのだった。


 ここからボクの、成り上がりが始まる。

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