第2話 天下統一? 最弱のボクがですか!?

 ボクは落ちた湯のみを拾い直して言った。

「天下統一? 最弱のボクがですか!?」


 カズミおじさんは冗談ではないといった顔つきだ。

「いいかソラ、お前は誰よりも優しい。これから戦乱の世はますます過激さを増し、やがて天下統一、もしくはそれに近い偉業を成し遂げる人物も出てくるだろう」


 でもな……。とオジサンは続けた。


「優しさ無き統治は……ただの支配だ……。弱者は虐げられ、強者のみが得をする。オレはそんな世の中になって欲しくないんだよ……」


「オジサン……」


 そんなこと言ったって、力がないと何もできないじゃないか……。

 現に僕なんかもう成人の儀式を迎える15歳なのに、12歳も違う3歳児にさっきうんこ食わされそうになってたんだぞ⁉


 畑をやるしか能がないんだよ、ボクは……。


 ふと、目から涙がこぼれ落ちた。

「あれ、なんだろこれ……おかしいな……」


 指や服の裾でぬぐっても拭ってもこぼれてくるその熱い雫に、ボクは少し混乱した。

「変だな、なんで止まらないんだろ……、止まれ……止まれよ!」


 人類最弱。


 鑑定を受けてからというもの、ステータスはひたすら1。


 ケンカで負けてボロボロにされて惨めな自分の映像ばかりが蘇る。


 いつからだろう、子供相手にもビクビクするようになったのは……。

 いつからだろう、チワワを見ても全力で逃げるようになったのは……。


「ボクだって変わりたいんだよ! オジサンは何も知らないだろ!」


 気づけばやり場のない怒りを、恩人であるはずの大きなオジサンにぶつけていた。


「ソラ、強くなる気はあるか?」

 

 その問いには僕自身何度も自問自答した。


 強くなれるのならなりたい。

 北海道にもその名を轟かせる第六天魔王ぐらい強くなってみたい。

 憧れて行動に移したことはある、でも無理だった。


「無理だよ……ボクはチワワにもトイプードルにも勝てない最弱で……」


「そんな最弱のお前が、強くなれるとしたらどうする?」


「え?」


 物語の歯車は、動きだそうとしていた。


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