第14話
パレシャとズバニールとの関係は深まっていった。
『『よるコン』ではケネシスが本命だったんだけどズバニールは私には優しいしぃ、お金持ちだしぃ。ズバニールでもいいかなぁ』
パレシャが呑気に考えていると二年Eクラスへズバニールと懇意にしているという噂の男爵令嬢を確認するためにアリサがやってきた。
『ズバニールと少し色は違うけど黄緑の髪に金色の瞳! 絶対にアリサ・オルクスだよ! 私の味方が来たぁぁ!!』
パレシャは挨拶もそこそこにアリサを教室の隅に連れていきお願い事をした。すでにズバニールとの関係を疑っているクラスメートはその図々しい姿にこれまた驚嘆している。
何度かアリサに突撃友人を仕掛けているが軽くあしらわれていたがめげないというより煙たがれていることに気がついていないパレシャはその日も廊下でアリサに突撃友人をした。さすがに疲れてきてしまったアリサははっきりと苦言を呈して遠ざけることにした。
親しい関係ではない旨を伝え名前呼びを拒否して、廊下を走ることは危険なことだと説明した。その言葉にハッとしたパレシャはアリサに顔を近づかせて呟いた。
「ごめんごめん。作戦開始だったのね。
了解! 任せておいて!」
パレシャが教室の隅にアリサを引っ張りつれてアリサに初対面で向けた言葉に関連している。
「みんなから可哀想って思ってもらいたいから私のことを虐めてちょうだい。親友だからやってくれるよね!」
その時にパレシャの言葉を何一つ理解できなかったアリサはパレシャの自分本位に呆れ、パレシャを理解することもパレシャを説得することも諦めたのだった。
アリサがパレシャのお願いを理解しておらず我慢の限界で注意したことをわかっていないパレシャの被害者演技が始まった。さらに意味のわからなくなったアリサは呆れて唖然としたが争う覚悟を持って言葉を発しようとしたその時、後ろから来たテッドがパレシャのパンツが見えることを防ぐためにパレシャに上着をかけたのだった。
結局アリサによって保健室へ連行されマナー教師にたっぷりと教示を受けることになるがテッドに会えた喜びが勝るパレシャはマナー教師をスルーして物思いにふけていた。
『アリサのお陰でテッドに会えた。あとはイベントなんだけど…、ズバニールともイベントが起きないんだよね。それでもぉ私の可愛さがあればイベントなんていらないけどぉ。テッドと友達になったんだから明日からは近寄ってもいいわよねぇ』
翌朝鍛錬場へ向かうとテッドご一行はいつものように鍛錬していた。
『ほぉらね。イベントならテッドは一人で鍛錬しているはずなのに何なのよこの人数はっ!
これだけ内容が変わっちゃうとイベントは起きないんだよ』
二十人はいるであろう生徒の中心にテッドはいた。
『男だけの世界しか知らないから純情男子のはずなんじゃないの??』
生徒の中には女子生徒も数人いてテッドは時折その手を取って指導したりしている。
そうこうしていると男子生徒三人がパレシャの元へ走って来た。
「ユノラド嬢。こちらに何かご用でしょうか?」
「あんたたちには用はないわ。テッドに話があるの」
男子生徒はギッとパレシャを睨む。
「テッドさんとは無関係なご令嬢だと聞いています。礼儀知らずなら連行せよとのご指示です」
「は? なんで?」
それから三人は一言も口を開かず二年Eクラスへ連行していく。
「テッドぉぉぉ! どうしてよぉぉぉ」
声を聞いて振り向いたテッドは眉を寄せた。
『なんだ? このようなところにまで来ていたのか? 破廉恥になるところを助けたのは失敗だったか? いやいや、騎士になる者としてあれは放っておけない。
それにしても彼らは気が利くな』
彼らに指示をしたのはテッドの親友でこの鍛錬仲間の副リーダー的な役割をしているベライス伯爵子息ノアルである。ノアルは呆れと感心の顔で彼らを見送るテッドの後ろで薄い茶色の瞳を細めて嘲りと喜びで怪しく笑うが濃い茶の髪をかき上げるフリをしてそれを隠した。
パレシャを護送した三人は二年Eクラスに着くとパレシャを教室内に押し込め自分たちは廊下に出てパレシャが脱走しないように監視をする徹底ぶりだった。
こうしてパレシャにはテッドから半径三十メートルに近づくと強制的に二年Eクラスにご帰還いただくシステムが構築されていくころにはテッドも仲間の協力に気が付きさらに絆を深めていった。
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